夢百夜

こんな夢を見た。

明治か大正に建てられたらしい洋風建築の巨大な病院。大学病院らしい。何故ここに来たのかは分からない。人気のない寂しい廊下沿いの細長く狭い控え室に案内される。コート掛けとテーブルと椅子数脚。簡易ベッドがあったような気もする。職員が大勢いる部屋を覗くとワイシャツ姿のタモリがヨッと挨拶してくれる。地下に通じるとおぼしき廊下で、壁を背にカップルが椅子に座って深刻な話をしている。少し離れた椅子に自分も座っている。女は男の膝に座り、ちょうどこっちを向く恰好になった。ときどき女の大きな瞳がこちらを見る。二人は気まずい雰囲気だ。自分は女を好いている。女もそのことを知っている。自分は、たまたまそこに居合わせただけだという態度を崩さず、曖昧に微笑みつづけ、控え室に戻る。部屋をひとつ間違える。隅の灰皿に煙草が、火先を外に向けて置いてある。こういうことに無頓着な人間がいることに憤り、火を消す。自分の部屋に戻る。昼食時間。職員たちがさんざめきながら廊下を行き交う。食事を共にしてくれる人がいない。外食するしかない。ついでにキオスクで『エル・パイス』を買おう―――ということは場所は西班牙なのか。職員の部屋に顔を出す。タモリはいない。知り合いは他にいないのだ。車椅子の老人が廊下の奥へ消えてゆく。金丸信である。誰かと話をしていて金丸信のことが話題に上がり、彼が映像として蘇ったのか、本当にその場にいたのか、定かではない。