夢百夜

こんな夢を見た。

廃墟のような映画館。地下にある。壁は剥きだしのコンクリートで、床も壁もなぜか濡れている。ところどころに大きな柱があり、これも濡れている。裸電球なのか、薄暗い照明がひとつ点っている。入口は、車がすれちがえるほどの幅の狭い舗装道で、地上からまっすぐ下るようにできており、地底面との境には背の高い鉄格子がしっかりと下ろされている。館内は外界から完全に遮断されている。

客席はボロボロで汚れており、ワンピース姿の女性など小綺麗な恰好をした男女で三分の一ほどが埋まっている。肝腎の映画が始まらない。みな不安げに辺りを見回す。ぴたり、ぴたりと、水が滴る音。

突然叫び声が聞こえる。何処から聞こえてくるのかは分からないが、女の悲鳴のようである。もうだれも腰を落ち着けてなどいられず、所在なくキョロキョロする。すぐそばにいた年輩の女性の首が、鎌かなにかでシュッと切り落とされる。古びた包帯や襤褸を頭から足の先までまとった、得体のしれない人間が、あちらこちらにふと姿を現すかと思うと、やはり鎌のようなもので観客の躰を切り刻んでいく。自分は心穏やかである。切られる奴には、それなりの理由があるのだ。