夢百夜

こんな夢を見た。

異国にいる。何処かに用事があり、車で行かなくてはならない。西班牙のトレドの町並みのように細い迷路のような路地を奥へ奥へと進む。次第に風景がうら淋しくなり、やがて墓地に迷い込む。街へ踵を返す。

東洋人だか西洋人だか分からない不思議な少女と出会う。十代後半だろうか。見つめていると闇の中に吸い込まれてしまいそうな漆黒の大きな瞳をしている。気立てが良く、とても優しい。二人で躰をぴったり寄せてじゃれ合いながら町中をあてもなくぶらぶらと歩く。歩きながら「今夜あたり、この続きが見たいものだ」と思う。夢の中で夢だと分かっている。あの娘にまた会いたい。会えば天にも上る気持ちの良さで、このまま時の流れが止まればいいと願うほどである。

用事のことはすっかり失念している。娘にはそれきり会っていない。