夢百夜

こんな夢を見た。

幅が広くなだらかな勾配の階段が入り口まで延々とつづく巨大なコンクリートの建物の一室に起居している。どうやら西班牙らしい。そこに母が尋ねてくる。

周りが急に慌ただしくなる。小火でもあったのか。外に飛び出て、階段をいっしょに駆け降りる。振り向くと、建物の背後にゆらめく炎が見える。

夜。ターミナル駅そばのバールのカウンターで、父と母が列車が出発するまでの時間を飲み物で潰している。母はいつになく険しい表情で飲み物に手をつけない。息子をひとり残すのが気がかりらしい。ひとり顔をしかめて立ち尽くす母の腕を、ほらもう出るぞ、と父がぐいと引っ張り、二人が乗車した途端列車はそそくさと発車してしまった。

夜の街をひとり彷徨う。マドリードのグランビアらしき大通りを上る。歩道橋がある。グランビアに歩道橋があるのはおかしい。渡ってみる。隣のビルの二階がマクドナルド。街灯の明かりが冷たく光る。自分はひとりきりになった。