こんな夢を見た。
何処かの街に引っ越した。短い私道の突き当たりにベランダが面している家で、スクールゾーンなのか、目と鼻の先を学童たちが歩いてゆく。部屋は縦長の、狭いワンルームで、玄関側半分は普通の板敷きだがベランダ側半分の床は趣味の悪いオレンジ色のタイル張りで、隅に丸い排水溝があり、右側の狭い空間はカーペット敷きで、真ん中が焦げ後のように黒ずみ大きく擦り切れている。おかしな配置だが、どうやらかつてここにはバスタブがあったらしい。この物件には見覚えがある。夢なのに、以前近所の不動産屋で紹介してもらったことをちゃんと覚えている。引っ越し屋への金を払ってない気がして一瞬不安になったが、前払いしたことを思い出す。板敷きにベッドと机を向かい合わせに置き、一休みする。ベランダの隙間から、制帽をきちんと被った近所の中学生三人が図々しくも勝手に首を突っ込んで部屋の中を覗いている。毎日の習慣かのように、悪びれるところも見せないのが奇妙で、カーペットの擦り切れを凝視しているのをみて、かつての住人が自殺したなとピンとくる。だが、早合点してもつまらないから訊ねてみると、前に住んでいた女性が入院先の病院で変死を遂げたというだけで、別にこの家で死んだわけではなかった。