こんな夢を見た。
男と女と自分の三人がマレーシアらしき国のとある街にいる。新聞記者である。取材のため、ある建物に潜入する。細い廊下が蜿々とつづき、壁には至る所に面妖な扉がある。目指す場所は二階である。狭苦しい階段を登る。
途中で人の気配がし、足がすくむ。命が狙われている、と瞬時に悟る。
意を決して二階へ上がる。人影に鳥肌が立つ。すかさず階下に逃げる。女は自分の女である。男の素性は知れぬ。女には容姿や名前がない。容姿も名前もないものが女であってたまるものか。だが不思議なことに、紛れもない女なのである。それも自分の女だ。男は総身の毛が立っている。男には構っていられぬ。女はというと、雲を霞に何処かへ失せてしまった。もはや逃げるほかない。走る。めくら滅法走る。だが走れど走れど、何処にも行き着かない。女は笑っていたようだ。