こんな夢を見た。
なにかに胸が揺さぶられて、さめざめと泣いている。
映画に感動して泣く感じに似ている。
この涙は何時か何処かで流したはずである。
セルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』で、ロバート・デ・ニーロが、再会したデボラの躰を奪おうとして黒塗りの車の中で気まずくなり、車を降り、とぼとぼと遠景へ遠ざかってゆくと堤防からサッと海辺があらわれる構図になる。それを観て涙したのとおなじ感情だったと気づいた。
それでもまだ飽きもせず泣いている。泣いて何の得があるものか。場所は大きな家である。なぜか男と同居している。誰だかさっぱり分からない。二階の部屋から、アース・ウィンド&ファイヤーの歌が流れ、庭で野良仕事をしている男は、もっとボリュームを上げろと、身振り手振りをまじえて叫ぶ。男のことなど、なに構うことはない。自分は女と接吻している。長い金髪が耳元で揺れる。顔は細面である。女に会うのは久しぶりである。涙の理由は女ではない。