劇中劇。下剃り忘八の宗介がお由紀に惚れ所帯を持つ。『寝盗られ宗介』を披露しに歌舞伎役者の音吉が江戸に来る。宗介は音吉にお由紀を寝取らせ、綱吉に近づく。宗介は綱吉に捨てられた子であり、父を殺し、六代将軍を継ぐ。お由紀は分不相応として身を退け、鉄砲隊に撃ち殺される。この劇中劇を演じる北村宗介はレイ子を副座長や若い俳優にくっつけては自虐的快楽に耽る。十和田。戻ってきたレイ子との結婚披露宴興行。客席には今際の際の父親。レイ子は俳優と駆け落ちしていた。スポットライトを何度あてても現れなかったレイ子が、座員の計らいで、白無垢姿で現れる。
つまり〈蒲田行進曲〉である。
長い。
藤山直美が何でもできる役者であることがよく分かった。決して大きくはないのに良く通る声。客を掌の上で転がす台詞回し。抜群にうまい歌。モデルでこれが初舞台の小西真奈美はセンスがいい。「放っておいてもスターになる子だね」とつかも太鼓判を押す。西岡徳馬は二枚目を意識しすぎる。カーテンコールの松坂牛争奪じゃんけん大会はやりすぎ。歌詞カードを見ながらラストで藤山直美が歌った矢沢永吉の「Somebody's Night」も見事。十五分の休憩をはさんで十時終演。座席の狭苦しさに呆れる。ぼくでさえ圧迫感があるのだ。前の列なんか、ひとりおきごとに身を乗り出した姿勢で舞台を観るありさまだった。