維新派『ヂャンヂャン★オペラ 王國』
1998年10月24日 19時30分 大阪南港ふれあい港館

入り口に当日券の長い列。前売りなのですぐおなじみの屋台へ。去年の広場とちがい、今年は道の両側だけ。その道には開場を待つ長蛇の列。腹ごしらえしたかったが、列に並ぶ。七時少し前開場。今年は整理券ではなく自由入場。まさか座れないとは思わなかった。二階の奥の立ち見席。

七時四十五分。十五分押しで開演。維新派『王國』。舞台の部分の屋根が今回はない。コンビニのゴミ置き場で拾われた捨て子タケルがオオサカの闇に生きる。建築途中のビルの鉄骨らしきものが林立。白塗りの少年少女がよじ登り、歌う。五拍子。七拍子。奥には超近代都市オオサカ。鉄屑をリヤカーで引く、コートと帽子の男たち。流民。赤ん坊の泣き声。男が拾い上げる。繁華街。タケルとちんぴらの抗争。幽閉されるタケル。ビルの屋上。遠くの街めがけて走り出す少年(この情景は美しい)。六人の少年=神との出会い。追うちんぴらから地下の水路に逃げ込むタケルたち。砂金を獲る流民。放水。海に流されるタケル。海。再会。夕陽。「赤い花がいっぱい咲いている」ゴミの島を見つけた、行こう、とタケルはキギスらを誘う。「もういいよ、いっぱい色んなことをしたから」。オオサカに砂金が、ゴミの島に色とりどりの紙ふぶきが舞う。「川をみつけて川をくだろよ」という歌が心に沁みる(おおたか静流)。

休憩なしの二時間。登場する人物も装置も例年より少ない。物語の起伏もあまりない。特筆すべきは、舞台の奥行きをたっぷりつかった演出。少年たちが、奥のきらびやかな町に向かって疾走するシーンは溜め息が出るほど美しい。主人公が流民で砂金取り、というところに、社会的マイノリティーへ視線を注ぎ続ける松本雄吉の意地を見る。あいにく立ち見席で、観る立場としては決して好条件とはいえなかった。それでも舞台に釘づけになる作品というものはあるが、今回はそうではなかった。

ラストは一面の赤い花だと思ったら、ちらほらと降るだけで、肩透かしを食らった。これに較べれば去年の『南風』の路地は見事だった。カーテンコールの途中で退散。九時五十七分。今年は例年になく暖かかった。