〈ぼういず物〉という色物の系統がある。色物とは、寄席の看板に、落語家の名前は黒、漫才、奇術、音曲物などの芸人を朱で書いたことに由来する、というのが定説だ。
〈ぼういず物〉の元祖は「あきれたぼういず」。分かりやすくいえば〈バンド系喜劇人〉。となると、フランキー堺とシティー・スリッカーズからクレージー・キャッツ、ドリフターズ、ドンキー・カルテット、玉川カルテット、バラクーダ、灘康次とモダンカンカンも〈ぼういず物〉の流れを汲んでいることになります。果てはSMAPもこの系統に位置づけられると喝破するのは大瀧詠一(「江戸前的? コミック・ソング・コレクション」高田文夫編『江戸前で笑いたい』筑摩書房所収)。
東京ボーイズの身上は、推しつけがましくない、サラッとした芸。大阪の横山ホット・ブラザーズの対極といっていいでしょう。立ち位置が中央のリーダー、旭五郎はアコーディオン、上手が頭脳担当の仲八郎(ウクレレ)、下手は、なにを考えているのか分からない、寡黙でチョビ髭の、菅六郎(三味線)。〈和製ハーポ・マルクス〉的存在だ。高座に上がると三人でテーマ曲。
■リーダーと入れ替わり中央に立つ頭脳担当の仲八郎の挨拶。「ええ、本日は、スピッツ、宇多田ヒカル、Whiteberry、GLAY……」と、そのときのJポップの最新チャートのヒット曲をやるぞと宣言。ポカンとするリーダー。年輩が多い客もどよめく。「聞いたことないよそんなの!」とリーダー。「仕方ありませんね。ではいつもの、あれ、やりますか。謎かけ小唄!」。そう、彼らのネタは「謎かけ小唄」がメインなのだ。歌うは頭脳担当の仲八郎。♪天気が良ければ晴れだろう~
天気が悪けりゃ雨だろう~
雨が降ろうと
風が吹こうと
(リーダーのソロ)東京ボーイズ!
ほ~がら~か~に~~!♪
八郎 サザン・オールスターズという歌手を!
五郎・六郎 謎かけ問答で説くならば!〔註:「問答」は「モンド」と短く発音〕
八郎 魚屋のなりたてと説きまする……カシ(歌詞=河岸)がゼンゼンわからない~
落語には〈三題噺〉というのがある。客から三つの言葉やフレーズをその場でもらい、即興で、落語に仕立て上げるのだ。東京ボーイズが凄いのは、これを「謎かけ問答」でやる。「千昌夫」「和田アキ子」から「trf」「パフィー」まで、なんでもやる。
そんな彼らの至芸を聞きたいあなた。いいCDがあります。『リズムは歌う ボーイズ・バラエティ』(テイチク、TECR-25211)。必聴。できればナマの舞台でどうぞ!東京の寄席ならどこかに出ているはずです。
(2000年10月16日)