残念ながらナマの高座を見たことがない。もっぱらテレビとラジオの演芸番組でネタを聴く。彼らのホームグラウンド、浅草東洋館でナマの舞台に接するのが夢である。
衣裳が今どき珍しく紺やグレーのスーツ。ネクタイも地味。見かけはふつうの会社員だ。まずこの点を評価したい。東京の漫才コンビでスーツを着る人は珍しくない。たとえば昭和のいる・こいる。しかし彼らのスーツはダブルである。大瀬ゆめじ・うたじ〔2003年6月コンビ解消〕は幅広の襟に蝶ネクタイ、おぼん・こぼんも蝶ネクタイで、いかにも芸人然とした姿だ。若手では宮田陽・昇やホンキートンクもスーツだが、凝ったデザインだったりカラフルだったり蝶ネクタイだったりで、やはり一目で芸人とわかる。その点、ナイツの外見には〈芸人〉を示す記号が一切ない。だから聴衆は話術だけに集中できる。彼らの立ち姿にいちばん似ているのは夢路いとし・喜味こいしだ。
(2012年6月16日〉