芸人列伝

団しん也
これぞボードビル

ボードビル。歌あり、踊りあり、物真似あり、寸劇ありの芸。

団しん也は、今の日本のボードビリアンのなかで傑出しています。理由は、ディーン・マーチンをはじめ、ボブ・ホープやサッチモ、プレスリーなどのアメリカの芸人の物真似ができるからです。あのボブ・ホープが来日したときのパーティーで、幕の裏で団しん也がディーン・マーチンの声音を真似て歌ったところ、ボブ・ホープはてっきり本人が来ていると勘違いしたというほどの腕前の持ち主。

ショーは漫談で始まります。キャバレー回りで鍛えただけあって、どんな客でも笑わせます。下がかったネタが好みの客の前では下ネタでご機嫌を伺い、アメリカン・ジョークで止めを刺す。そして歌。この歌が絶品。なにせ師匠は古賀政男。団しん也にボードビリアンとしての師匠はいません。独学で技を身につけました。ふつうに歌えばどんな歌手でも霞んでしまうほどですが、そこを少しだけ力を抜いて歌うところなんざ、憎いほどです。そして、ジャズやポップスの名曲を、さまざまな歌手の声音で歌います。一曲を、ディーン・マーチンで始めたかと思うと、いつの間にかサッチモになり、橋幸夫になり、前川清になり、五木ひろしになり、森進一になり、藤山一郎になり、最後はボブ・ホープで締めくくる。どれもがあっと驚くほど似ていて、藤山一郎が

団しん也の味は〈泥臭さ〉と〈洗練〉が同居しているところにあります。場末のキャバレーの客から、大都会の客まで、誰をも喜ばせる。しかも年齢層を問いません。こういう芸人はほかにいません。

さあ、団しん也を聞きましょう。

(2000年10月)