ごあいさつ 2012年

良い年越しを

今年もサイトでたくさん遊んで下さってありがとう。皆さん良い新年をお迎え下さい。

2012年12月31日


ルドルフ

ルドルフ今年もプレゼントたくさん配ったね。
ご苦労さま。

2012年12月26日


White Christmas

ビング・クロスビーの唄で有名なクリスマスの定番曲「ホワイト・クリスマス」。作詞と作曲は「ゴッド・ブレス・アメリカ」の作者でもあるアーヴィング・バーリンですが、彼は著作権にものすごくうるさい人で、永らく「ホワイト・クリスマス」の歌詞の日本語訳を許可しませんでした。しかし十年ほど前、ついに日本語の訳詞をある人に許可しました。その人は山下達郎。現在日本で流通するCDの歌詞カードに掲載されている訳詞はすべて山下氏によるものです。というわけで図らずも二回続けて達郎の話題になってしまいました。メリー・クリスマス!

2012年12月24日


驚異と幸福

「まず第一に彼[=山下達郎]は、ヴォーカリストとして超天才だし、作詞・作曲、編曲家としても希有な才能の持ち主でしょ。ブラスやストリングスの譜面だって、正式な勉強を一切していないのに書ける上に、楽器も、ギターやベースだけでなく、ドラムもパーカッションも、キーボードもブルース・ハープに至るまで……アカデミックに習ったわけではないのに全部できてしまう。音楽家としてオールマイティなわけですよ。さらに凄いのがライヴ・パフォーマーとしての彼。一瞬にしてお客さんの心をつかんでしまう天才。そこまですべての才能が備わっている人だったら、ふつう人間として何かが欠落していたり、社会生活ができにくかったり、常識的な価値観を持っていなかったりしても仕方がないと思えますよね。そのような天才が、人間としても真っ当であるという事実こそが、実はいちばん凄いと思う。私にとっては、それが最大の驚異であると同時に、最大の幸福」

(竹内まりやインタビュー『ぴあ 特別編集版~山下達郎“超”大特集号~』2012年11月、p.107)

2012年12月19日


It's a Wonderful Life

新・意味なしBBSでクリスマスから年末に楽しむにふさわしい映画の話題が続きます。『ダイ・ハード』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『シザーハンズ』『素晴らしき哉、人生!』……。

あさって20日(木)午後一時からBSプレミアムで『素晴らしき哉、人生!』が放映されます。ジミーことジェームズ・スチュアート主演、フランク・キャプラ監督の、年の瀬にふさわしい名画。未見の方は是非録画してでもご覧下さい。

2012年12月18日


とりかえ続けて11年

本日めでたく、とりかえっ語が11周年を迎えました。12年目も張り切ってとりかえましょう。

2012年12月7日


悔しい

今朝起きてまったく思いがけず中村勘三郎さんの訃報に接し、体から力が抜けてしまいました。コクーン歌舞伎に平成中村座。新作を発表するたびに胸がざわざわする唯一の役者でした。女形の踊りも愛嬌たっぷりで実に結構でした。「でした」と過去形で語らざるをえないのが無念でしかたがない。いちばん無念なのは勘三郎さんご自身でしょう。いつかきっと復帰してくれると信じていました。ご本人ももちろん。神さま、あなたはむごすぎる。まだ五十七歳だよ。梨園きってのやんちゃ坊主、これからひと暴れもふた暴れもする予定だったのに。悔しい。本当に悔しい。力が抜けてしまった指でキーボードを叩きながら、勘三郎さんのご冥福を祈ります。

2012年12月5日


四字熟語4900件突破

当サイトの人気コーナー「四字熟語」の登録件数が4900を超えました。五千の大台も間近。常連さんも一見さんもふるってご参加下さいませ。

2012年12月3日


松たか子さん江

森光子さん亡き後『放浪記』を引き継げるのはあなたしかいない。あなた以外考えられない。是非!

2012年11月27日


語尾取り11周年

語尾を取り続けて今日でめでたく11周年を迎えました。さあ、あなたも語尾を取りましょう。語尾を取らずに何を取る!

2012年11月23日


「ひるのいこい」六十周年

NHKラジオ第一の長寿番組「ひるのいこい」が今週17日(土)に六十周年を迎えます。放送開始は1952(昭和27)年11月17日。この年の春GHQによるアメリカの日本占領が終わり、日本はようやく主権を回復したばかりでした。今週土曜は放送時間を拡大して午後0時15分から0時55分まで特別番組を放送します。

2012年11月13日


取り乱すジャーナリスト

ジョージ・ルーカス率いる映画制作会社ルーカスフィルムをディズニーが買収したというニュースが今朝から世界中を駆け巡っていますが、スペインの日刊紙ABCの記事を見て驚きました。

記事によると買収額がなんと405億ドル(40.500 millones de dólares)。約3兆2222万円です。小さな国の国家予算並み。もちろんこれは間違いで、ゼロが一個余計。正しい金額は40億5千万ドル(約3222億円)。

でもって、ダース・ベイダーの名前が Vaader とある。a が一個余計です。正しくは Vader。左手小指で A を打つとき、うっかり二度叩いたのでしょう。さらにルーカスフィルムの新社長に就任し今後の『スター・ウォーズ』シリーズの製作総指揮をつとめるキャスリーン・ケネディの名字が Lennedy。正しくは Kennedy。キーボード上では KL が隣同士なので打ち間違ったのでしょうね。綴りが不安なら Internet Movie Database で調べてコピペするだけで解決するのに。

それにしてもこの短い記事で三ヶ所も誤記があるとは恐れ入りました。文章を書いて日銭を稼ぐジャーナリストよ、フォースとともにあれ!

2012年10月31日


発明

助手
博士! ついにやりましたね。
博士
とうとう完成した。
助手
この機械があれば、どんなものでも、どこにでも、一瞬で送れるんですね。
博士
物質転送装置、テレポーテーション・マシーンだ。
助手
長い道のりでした。
博士
苦節二十年……。思い返せば失敗の連続だったが、諦めなくてよかった。
助手
お祝いしましょう! 年代物のワインがあります。この日のためにとっておいたんです。
博士
いや、その前にテストしよう。正しく動作するかどうかチェックするのだ。
助手
そうですね。では、博士の胸ポケットにあるボールペンで試してみましょう。装置に入れて、私の手のひらに移動させるんです。
博士
よし。では入れるぞ。
助手
あとはこの赤いボタンを押すだけです。
博士
セット完了。では、押すぞ。えい!
助手
あ! 私の手のひらにボールペンが!
博士
成功だ!
助手
この瞬間をどれほど待ちわびたことか……。
博士
君にもずいぶん苦労をかけたなあ……。
助手
いえいえ、博士のためならたとえ火の中水の中。ところで博士。
博士
ん? なんだね?
助手
発注元はフィンランドのナンデヤネン商事ですが、いつ納入します?
博士
すぐ送ろう。先方も首を長くして待っているにちがいない。
助手
そうですね。でも、どうやって送ります? 装置はこの研究所の建物からはみ出そうなくらい巨大です。
博士
どうやってって……。
助手
バラバラに分解して、小さくして発送しますか?
博士
馬鹿者! 組み立てるのに二十年かかったんだぞ。それをバラバラにして、もう一度組み立てたら、また二十年かかってしまう。
助手
では、分解しないで、このまま送りますか?
博士
馬鹿も休み休み言いたまえ! こんなに巨大な装置だぞ、ジャンボジェットを一機借り切ることになる。そんな金がどこにある?
助手
そうでした……。三度の飯を二度に、二度の飯を一度にして、研究に没頭しましたからね。
博士
食事は毎日おかゆ一杯。わしはもう、おかゆを見るのもいやだ。財布の中はスッカラカンだ。
助手
そうだ! ナンデヤネン商事にお金を送ってもらいましょう。
博士
無理だ。支払いは納入が済んでからだと契約書に書いてある。
助手
ああ、こんなときに一瞬でものを送れる装置があったらなあ。
博士
あ!
助手
あ!
二人
もう一台作っておけばよかった!

2012年10月30日


燃え上がる映画

今は亡きクリストファー・リーヴの演技を楽しみたくて、BSプレミアムで放映されたジェームズ・アイヴォリー監督の映画『日の名残り』を久しぶりに観ました。映画の出来映えは平凡で、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの演技がわざとらしいくらいにくどいのと、人物に当てる照明があまりにも下手くそなのとでげんなりしました。とりわけエマ・トンプソンに当てる照明は犯罪的といっていいほどお粗末。しかしそんな感想はどうでもよろしく、アンソニー・ホプキンス演じる執事が窓から外を眺めるショットを見て、わたくしは映画フィルムが燃えた日のことを思い出しました。

1994年8月ですからもう二十年近く前です。いわゆる二番館である飯田橋ギンレイホールでヴィム・ヴェンダース監督の『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース』を観ました。失敗作というほかない作品でしたが、上映に先立って『日の名残り』の予告編が上映されました。窓から外を眺めるアンソニー・ホプキンスの上半身を右からとらえるショットになった途端、カタカタとコマ送りが遅くなったかと思うと映像は完全に停止。映写機のトラブルだなと思ったのも束の間、制止した画面の中央に極彩色の泡のようなものが浮かび出し、見る見るうちに無数の泡がふつふつと湧き出して画面が焼けただれました。フィルムが燃えたのです。妙に美しいそれらの泡を見ながら、わたくしは『ニュー・シネマ・パラダイス』の火事のシーンを思い出しました。昔の映画館はよく火事になったのです。原因は可燃性フィルムです。

先月のニュースで富士フイルムが国産映画用フィルムの生産から撤退することを知りました。現在の映画制作はデジタルが主流で、撮影の75%がデジタル、映画館での映写も7割近くがデジタル化されており、映画用フィルムの需用は2007年以降激減の一途を辿っているそうです。もうフィルムが燃えることもなくなるわけですが、わたくしにとって『日の名残り』は燃えるフィルムの記憶とともにあります。

2012年10月24日


丸谷才一さん

先週13日午後9時過ぎ、時事通信の速報で丸谷才一さんの訃報に接し呆然としました。昨年の秋に長篇小説『持ち重りする薔薇の花』を上梓し、直後に文化勲章を受賞なさり、お年を召したとはいえこれからも小説家として、また文芸評論家、書評家として健筆をふるい続けて下さるものとばかり思っておりました。

わたくしは丸谷さんの小説のよき読者ではありません。真剣に読んだのは『樹影譚』ただ一冊です。しかしながら丸谷さんの文章には主に随筆と書評をとおして学生時代から慣れ親しんできました。どちらも名人芸。とりわけ文章の最初の一行を始めるやり方、その切り口の鮮やかさには舌を巻いたものでした。「書評は最初の三行が勝負」だと、どこかでおっしゃっていたと記憶します。そして全篇を貫くユーモアのセンス。内容には必ずしも常に共鳴したわけではありませんが、語り口のおもしろさはいつも堪能しました。

そんな丸谷さんが拙訳のカルデロン作『名誉の医師』を毎日新聞の書評でとりあげて下さったときには心底驚きました。2003年6月29日でした。『名誉の医師』はわたくしにとって最初の、そして唯一の翻訳書なのですが、翻訳の作業に八年の月日を費やしました。その八年間は思い返すのもつらい苦しみの日々でした。無事出版されたときは「これでやっと苦しみから解放される」と思ったものです。

読者の反応などはまったく期待しておりませんでした。ですから〈本読みのプロ〉でいらっしゃる丸谷さんが読んで下さり、しかも訳文の一部をわざわざ引用して紹介して下さったのをみて、本当に驚き、そしてありがたい気持ちで胸がいっぱいになりました。この書評にどれだけ励まされたことか、そして今もどれだけ勇気づけられているか、容易に言葉にすることはできません。

丸谷さんに書評のお礼状をさしあげたところ丁寧なお返事を葉書で頂戴しました。まさかお返事を頂けるとは思いもよらなかったので、律儀な方なのだなあと深く感じ入ったものでした。わたくしの宝物のひとつです。

丸谷才一さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

2012年10月15日


チャイナ・シンドローム

おととしの11月、ジャック・レモン晩年の演技を確認したくてDVDで久しぶりに『チャイナ・シンドローム』を観ました。その四ヶ月後に福島原発事故が発生。テレビに映し出される制御室を見てびっくり。『チャイナ・シンドローム』の舞台となる制御室そのものなんです。よく考えたらそれもそのはずで、福島第一原子力発電所が稼働を始めたのが1971年、『チャイナ・シンドローム』は1979年製作。七十年代の産物なのでした。

来たる16日(火)午後1時、BSプレミアムで『チャイナ・シンドローム』が放映されます。音楽を一切使わない演出。ジャック・レモン、ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラスの演技をご堪能下さい。

2012年10月14日


12周年

きょう気づいたのですが、おとといの10月6日に当サイトが開設12周年を迎えました。日頃のご愛顧まことにありがとうございます。記念すべき日を管理運営者本人がすっかり忘れてしまう。だてに粗忽天皇を名乗ってはおりません。ついでに申せば、きょうが体育の日であることに気づいたのは午後一時半でした。そんなわけで、ってどんなわけかわかりませんが、これからものほほんと運営して参ります。

2012年10月8日


書きたいことがないときもある

いまご覧のこのコーナーはわたくしが好き勝手なことを書くのが習慣です。人によっては「巻頭言」と称して下さり、わたくしは「ごあいさつ」と呼んでおりますが、いずれにせよ挨拶がわりにエッセイのようなものを書いたり、漫才台本みたいなものを披露したり、わたくしが「おもしろい!」と思ったサイトを紹介したり、気になるニュースをとりあげたり、とまあ、そのときどきの興にまかせて、筆の向くまま贅言を弄するわけですが、場合によっては書きたいことが何も思い浮かばないこともあります。ありていに申せば「ネタがない」ということです。

「ネタがない」理由は主にふたつあります。ひとつは心身が不調であること。もうひとつは贅言を弄する暇がないこと。前回の「ごあいさつ」は9月17日でした。以来三週間近くご無沙汰しておりましたが、沈黙を余儀なくされた原因はいま挙げた二つの理由が重なったからでした。

で、きょう久しぶりに何か書こうという気分になったのですが、ぶっちゃけた話、とくに語りたいことがない。これじゃしょうがないので、何かないかなあと各種報道を眺めると、どうやら尖閣諸島の領有権をめぐって日中双方が妙に神経を昂ぶらせているらしい。日中両国の「自称愛国者」が「尖閣諸島は俺たちのものだ」と言い合って譲らない。

そんな話をしてる場合か、というのが素直な感想です。昨年の福島原発事故によって日本は国土の一部を半永久的に失いました。住めるはずの土地が半永久的に住めなくなってしまった。外国に侵略されたわけでもないのに。日本人である我々自身が、これから生まれる未来の日本人の生活権を奪ってしまった。国土に関する議論でいまもっとも重要なのはこの問題であるはずですが、「自称愛国者」は無人の離れ小島の領有権について大声を張り上げるばかりで、東北の土地については何も語ろうとしない。

百歩譲って尖閣諸島の領有権をめぐる議論が大切だとしましょう。領有権の問題を解決に導くいちばん効果的な方法は「問題をうやむやにしておく」ことです。国際法からみても解釈は複数ありえるのですから、「うやむや」にしておくのがベストで、現にいままでずっと「うやむや」にしてきました。でも、世の中にはどうしても白黒つけなくては気が済まない人たちがいる。そんな「自称愛国者」は、自分の権利については声高に主張するけれど、お隣の国の愛国者の権利についてはこれを一切認めない。これはどう考えても不公平です。本当の「愛国者」なら、他国の愛国者の権利も当然認めるのが筋です。

ですから領有権問題に関して双方が納得できるような具体的な解決策は「痛み分け」しかありません。お互いにとって利益をもたらし、どちらのメンツも立つようにするには、共同で管理する以外にない。本当は「うやむや」にしておくのが得策ですが、どうしても決着をつけるなら共同管理しか道はない。「相手が何と言おうが絶対俺たちのものだ」と言いつのっていたずらに敵愾心を燃やすのと、「ま、いろいろ言いたいことはおありでしょうが、ここはひとつあいだをとりませんか」と歩み寄って共存共栄をはかるのと、どちらが国益を増すかは、ちょっと考えれば誰にでもわかるはず。

そんなわけで「自称愛国者」の人たちの言動にはげんなりさせられる昨今です。

2012年10月6日


【書評】『永遠を抱きしめて』 モーリス・ハメット著

ホメーロス『オデュッセイアー』と『ONE PIECE』と『通販生活』に共通点があるとすれば何か。いずれも書籍の形態をとっていること、そして読者が存在することである。書籍の形態をとらない電子書籍にも読者がいる。つまり世界に流通する本にはすべて読者が存在する。しかしここに一冊の稀書が誕生した。モーリス・ハメット著『永遠を抱きしめて』である。

この本の最大の特徴は「読者が存在しない」ことである。誰も読んだことがないのだ。もちろん書評子もまだ読んでいない。いや、「まだ」というのは正確ではない。永遠に読むことはないのだから。読まれることをひたすら拒む本、それが『永遠を抱きしめて』だ。

著者のモーリス・ハメットは国籍も年齢も不明。覆面作家ではないかとの噂もある。いずれにせよ、執筆者である以上は少なくとも著者本人は本書に目を通したはずだと誰もが思うだろう。ところがハメットは数々のインタビューで「私は一度も本書に目を通したことがない。どんな本なのか見当もつかない」と述べている。

ハードカバーでページ数は優に五百を超えようという大著である。しかし内容は謎だ。なにしろ読もうとしてもすべてのページが奇麗に糊づけされており、ページを捲ることができない。だから『永遠を抱きしめて』は小説なのかノンフィクションなのかエッセイなのか学術書なのか図鑑なのかコミックなのか、まったくわからない。そもそも文字が印刷されているかどうかさえ確かめようがないのだ。

原著がアメリカで刊行されたのは2010年。たちまちベスセラーになったのはご存じの通りである。このたび待望の日本語版が出たわけだが、訳者の田所順平氏もまた本書には一度も目を通さなかったという。ほかにもフランス語版、ドイツ語版、中国語版、ヒンディー語版など十八カ国の言語に翻訳されているが、どの翻訳者も一ページも読まずに翻訳を行った。

この本は超紐理論の11次元に存在すると想定される読者に向けて書かれたという見方がある。しかし、たとえ11次元であれ読者を想定してしまってはこの本の存在価値が失われてしまう。だから本書の内容についてまことしやかに語る人がいたら、まず嘘つきだと断じて間違いはない。「本」とは何か、「読者」とは何かを考えさせられる稀覯本である。

(酷書刊行会、2200円)

2012年9月17日


爆発

先週中国で椅子が爆発したらしい。椅子は事務用で、女性が坐ったとたんに爆発した。写真を見るとものすごいことになっている。

さらに驚いたことに中国では椅子のほかにもいろんなものがしょっちゅう爆発するらしいのだ。液晶テレビが爆発し冷蔵庫が爆発しバースデーケーキのロウソクが爆発し、なぜか道路も爆発するらしい。これらの爆発リストを集めたサイトを見つけた。どうやら中国の爆発はネット上では有名な事象らしく、誰が名づけたかチャイナボカンと呼ばれる。ネーミングの巧さに唸る。それにしても、やかんが爆発し風邪薬さえもが爆発するとあっては、もう中国には爆発しないものは存在しないのではないかと思わされる。

ある種の日本人は中国といえば何でもかんでも軽蔑するきらいがあり、チャイナボカンのリストを見て「だから中国はダメなんだ」と鬼の首をとったように勝ち誇ったり、「さすが中国」と皮肉をこめて逆に感心したりするのだが、わたくしは人のふり見て我がふり直せと言いたい。なぜなら日本だってしょっちゅう爆発があるからだ。しかも日本の場合、爆発するのは物体ではなく、たいていの場合は抽象的な観念である。

「人気爆発」

日本では人気が爆発する。列島津々浦々で爆発する。だが最も激しく爆発するのは別の観念だ。

「安さ爆発みんなのさくらや」

関東居住経験者なら誰でもご存じのコマーシャルだ。ヨドバシカメラ、ビックカメラと並ぶ家電量販店の大手さくらやである。ところが2010年にさくらやは倒産してしまった。

「安さ爆発の会社が爆死」

観念のレベルにとどまっていた爆発が会社の実体そのものを消滅させてしまう。これほどおそろしいことがあろうか。

2012年9月1日


喜びのクリック坊や

2012年8月31日


ポニョの謎

劇場で観たときに「むむ?」と首をかしげ、昨夜の日テレ系「金曜ロードSHOW!」でもう一度『崖の上のポニョ』を観てやはり「むむむ?」と思ったのが、宗介とポニョが出会うシーンです。

宗介は波打ち際でガラス瓶に頭を突っ込んだ赤い魚を見つけて拾い「金魚だ」と言います。この魚が金魚であるかどうかは重要ではありません。釈然としないのは、宗介がこの〈金魚〉を崖の上の自宅に走って持ち帰り、軒下の蛇口をひねってバケツに水道水を満たし、そこに〈金魚〉を放ったことです。たとえ幼稚園児であれ、海辺で育った子供なら海水と水道水の区別はつくはずなのに。

「ファンタジーだからこれでいいんです」という反論があるかもしれませんが、仮にこの時点で既にファンタジーの世界に入ったとするなら、まず海水魚なのに水道水でも死なないことにこそ宗介は驚かねばならないはず。この神秘に宗介と観客が同時に驚き、両者が手に手を携えてファンタジーの世界に入るのが良心的な映画のルールでしょう。

同じく海水魚を主人公としたピクサーのアニメ『ファインディング・ニモ』はその点見事でした。脚本の精密さが一枚も二枚も上です。ピクサーのアニメは数人の脚本家による共同執筆です。近年のジブリアニメにどうしても心が奪われない理由は、脚本を執筆するのが宮崎駿ひとりであるからだと思えてなりません。

2012年8月25日


悲しみのクリック坊や

2012年8月21日


太鼓判

粗忽印鑑本舗、秋の新商品です。

太鼓判(小)太鼓判(中)太鼓判(大)

2012年8月17日


はえーよ!

男子400メートルリレーのウサイン・ボルト。アンカーでアメリカと同時にバトン受けとったのにゴールで2メートルも差ついてるじゃん! どうなってんだよ! しかも36秒85って、四人全員9秒台で走ってるじゃん。人間じゃねえ!

2012年8月12日


卓球!

卓球女子団体、やってくれました。こんなに嬉しい愛ちゃんの「泣き顔」を見るのは初めて。初出場の石川佳純さん、ラケットさばきの速さと正確さ、すごいよ。ベテランの平野早矢香さん、最後のダブルスがすばらしかった。以下はきょうのニュースで知った豆知識。

2012年8月6日


粗忽オリンピック

ロンドンオリンピックの開催期間に合わせて当サイトで粗忽オリンピックを開催しようと思ってたのに、なんということでしょう! 告知するのをすっかり忘れてたよ。ロンドン五輪の最終日は8月12日。まだ九日ある。今からでも遅くない!――というわけで、いきなりですが、粗忽オリンピックを開催します。

出場資格は粗忽者なら誰でもOK。ご家庭で、職場で、うっかりしたことを粗忽第二共和制BBSに自己申告して下さい。技術点ならびに芸術点を加算して勝敗を競います。

今のところわたくしが勝手に表彰したい選手は、開会式でうっかりインド選手団にまじって行進してしまった会場ボランティアのインド人大学院生マドゥラ・ナゲンドラさん。本人の弁によると「興奮のあまり、つい入場行進にまぎれこんでしまった。反省している」とのこと。それにしては赤いシャツに真っ青のパンツのド派手ないでたちで騎手の真横を堂々と歩いてました。

2012年8月4日


フレームの外

ごくふつうの家族が何気なく撮った平凡なスナップ写真であれ、ピューリッツァー賞を受賞するほどの人類史的な作品であれ、およそ写真というものを目にするたび、わたくしはフレームの外が気になります。意識が自動的にフレームの外に向かう。

写真の鑑賞としては邪道なのかもしれません。なにしろ被写体は二の次なのですから。しかし撮影者がカメラのファインダーで空間を小さな長方形に切りとった瞬間、世界は小さな長方形と、それ以外の膨大な、おそらく無限に広がる部分との二つに分かれてしまう。そして世界にとって重大な事態は後者、すなわち無限に広がる部分において生起しているはずなのです。

――と、ここまで書いて思い出したのが敬愛する映画監督、黒沢清さんの言葉です。どこで読んだのか、どんな言葉づかいだったか、よく思い出せないのですが、発言の趣旨は記憶のなかで鮮明です。黒沢さんは映画の定義について述べました。映画はスクリーンの外側にある世界を想像させる装置である、だいたいそんな内容でした。

わたくしは写真を撮ることにほとんど興味がないのですが、その理由がなんとなくわかってきました。興味の対象はつねにフレームの外にあるのです。どんなに〈絵〉になるショットが撮れたとしても、所詮はフレームの中におさまったものでしかなく、フレームの外の世界は決して撮影できない。写真という再現メディアが宿命的にかかえるこの不条理を不条理としてそのまま受け入れ、無理を承知の上で被写体にカメラを向けることができる人こそが写真家であり映画監督なのでしょう。

2012年8月3日


質量保存の法則

先月中旬にもこの欄でご報告しましたが、ダイエット大作戦が成功いたしまして、八ヶ月で体重がマイナス7kg、お腹まわりはなんとマイナス9cm。目標を大幅に上回る結果となりご満悦なのですが、あんまりはしゃぐと誰か―――特に女性―――が雇ったスナイパーに暗殺される恐れがあるので、詳細につきましてはぐっと我慢して口をつぐみますが、それにしても不思議なのは消えた7kgの肉の行方です。どこに行ってしまったのか、皆目見当がつきません。

7kgの肉がどこかに消えたのはたしかです。しかしですね、皆さんも学校で習ったと思いますが、この世界には質量保存の法則というものがあります。消えた肉は、別の何かに形を変えて、どこかに存在し続けているはずなのです。その行方がわからない。わからなくたってかまわないじゃないか、と思われるかもしれませんが、悲しいかな、わたくしはいったん気になるとほかのことが手につかなくなる。春日三球・照代の地下鉄漫才ではありませんが、「夜も寝られなくなっちゃう」のであります。

ひょっとしてわたくしは質量保存の法則を誤解しているのかもしれない。そう思って、『大辞林』を調べてみました。

【質量保存の法則】
化学反応の前とあとで物質の総質量は変わらない、という法則。1774 年にラボアジエが確認したもので、近代化学の基礎となった。原子核の反応ではあてはまらない。質量不変の法則。

なんと質量保存の法則は原子核の反応には適用されないのでした。つまり、もし仮に、消えた7kgの肉が本当にどこかに消えてしまったのであれば、それは原子核の反応であった可能性が高いのです。わたくしのお腹は原子炉なのです。歩く原発です。

こうしてわたくしは恐ろしい真実にたどり着いてしまいました。こんなわたくしですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2012年7月24日


熱さまひんやり首もとベルト

扇風機だけだと暑い、でもエアコンは使いたくない……。そんなあなたに、去年もご紹介しましたが、小林製薬の熱さまひんやり首もとベルトがオススメです。特殊なジェルで凍ってもカチカチにならないすぐれものだよ。

2012年7月17日


simple & addicting

オンラインゲームは星の数ほどありますが、わたくしはシンプルなものが大好き。たとえばこの Stan Skates はかれこれ十年近く遊んでますが、まったく飽きません。スケボーに乗ってる少年の顔が全然スポーツマンらしくないのもいいし、レベルをクリアするたびに朝日がだんだん昇ってくるところなんざァ、なかなかどうして芸が細かい。

2012年7月14日


Optimal Green

去年も紹介しましたが、株式会社オプティムがパソコンの省電力化ソフト Optimal Green を無償で公開中です。節電効果が高いのはディスプレイのスイッチを切ること。もっと効果があるのはテレビを消すこと。つけっぱなしのテレビは電気の無駄ですぞ。

2012年7月10日


「いじめ」撲滅に向けて

そろそろ「いじめ」という言葉を使うのをやめませんか。「いじめ」の正体は暴行であり恐喝、すなわち犯罪です。少年法の条文にも「いじめ」という言葉は使われず、一貫して「罪」「犯罪」です。「いじめ」という言葉をマスコミが使い続ける限り行為者には決して犯罪意識が芽生えないばかりか、むしろ「いじめ」という言葉が流布することによって犯罪が犯罪として認知されないままはびこり続けます。

この言葉の使用をやめようと最初に大手新聞で呼びかけたのは、わたくしが知る限り、蓮實重彦さんです。朝日新聞の「文芸時評」でしたので、たぶん1994年か95年頃だったと思います。以来マスコミはまるで進歩していません。暗澹たる気持ちになります。

2012年7月7日


トイ・ストーリー3

来たる7月8日、テレビ朝日系「日曜洋画劇場」に『トイ・ストーリー3』が登場します。

記念すべき史上初のフルCGアニメーション『トイ・ストーリー』が世に出たのが1995年。以後ピクサー社のCGアニメはすべて観ておりますが、〈トイ・ストーリー〉シリーズは脚本のすばらしさにおいて他の追随を許しません。あの三谷幸喜が唸るほど。観ないとおしおきだべぇ~!

2012年7月5日


誰が言ったか知らないけれど

土砂降りとはよくぞ言いにけり、です。考えてもみてほしい。土砂ですよ土砂。土と砂が降るわけがない。でも強い雨で足もとがぬかるむ感じをぴたりと言い当てる。英語には It's raining cats and dogs なんて言い回しがありますな。猫と犬が降ってくるんだから、非現実的な天変地異の感じがよく伝わります。雨の多い日本は土砂くらいが比喩としては穏当でしょう。それにしても昔の人はうまいことを言うよ。感心するよ。

2012年7月3日


アクセス殺到

本日29日の早朝から夕方にかけて当サイトへのアクセスが急増し、閲覧が困難な状態が続きました。ふだんに較べて二千倍近いアクセスが殺到してサーバーがパンク。19時54分現在、サーバーは復旧しました。原因は何かと思ったら、なんと小野ヤスシさんの訃報でした。

今朝7時過ぎに Yahoo!ニュースに小野ヤスシさんの訃報が出たのですが、小見出しの下をご覧になればわかるとおり、なんとわたくしが十年ほど前に書いたドリフターズ誕生秘話という評伝へのリンクが貼ってあるのです。小野ヤスシさんはザ・ドリフターズの結成メンバーなのですが、どうやら Yahoo! の人たちは拙文を「信頼できる情報」とみなしたのでしょう。嬉し恥ずかしです。このリンクをたどって当サイトにお越しになった人が大勢いらっしゃった、というわけでした。

そんなわけで、現在は復旧しましたのでご安心下さい。小野ヤスシさんのご冥福をお祈り申し上げます。

2012年6月29日


rich & poor

金持ちと貧乏人のちがいはどこにあるか、考えてみました。

金持ちとは「金について考える必要がない人」ではないか。そして貧乏人とは「たえず金について考える人」ではなかろうか。であれば、たとえ資産が数十億円、数百億円ある大企業の社長でも、たえず金の心配をする人は「貧しい人」であり、お寺のお坊さんのように年収がゼロに等しくても金のことを考える必要がない人は「豊かな人」ではないか。

富貴は財産の多寡とは無関係。だとすれば、いわゆる富豪といわゆるワーキングプアだって対等に話ができるはず。金銭の多寡にかかわらず対等な関係を結ぶことができる。「貧しい人」ばかりの社会と「豊かな人」ばかりの社会とでは、どちらが住みよいか。もちろん「豊かな人」ばかりの社会だ。

誰もが「豊かな人」であるような社会は、決して机上の空論でもなければ夢物語でもない。要は理想の問題です。理想なくして、人間はどうやって生きてゆけるというのでしょう。

2012年6月19日


減量成功のご報告

拝啓
 うっとうしい毎日ですが、一雨ごとに緑が濃くなってまいります。皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

私事で恐縮ですが、このたび減量に成功いたしましたので、ご報告させていただきたく筆を執る次第です。

長年にわたる運動不足と不摂生により体重が72kg、腹囲が89.5cmに達し、健康診断でメタボ症候群というありがたい烙印を押されたのがそもそものきっかけでした。そこで昨年11月末に一念発起し、半年で体重を5kg落とそうと決心しました。

以来、毎日三十分間インターバル速歩を行い、ご飯は茶碗に三分の一、この二点だけを守って精進してまいりました。おかげさまで、今月初め、目標体重の67kgに達しました。腹回りもベルトの穴二つ分減りました。これもひとえにわたくしの努力のたまものと存じます。ありがとうございます

末筆ながら、末筆ながら皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

敬具

2012年6月16日


絶望しない

先週8日の夕方、野田佳彦首相が所信表明演説を行い大飯原発の再稼働を宣言した。演説の原稿は全文を首相官邸ホームページで読むことができる。一読してびっくり仰天した。三つ目の段落、つまり演説の冒頭部分でいきなりこう述べるのだ。

福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。

福島を襲ったのと同程度の規模の地震・津波しか考慮していませんと明言しているのだ。それ以上の規模の天変地異は「想定外」なのである。東日本大震災を上回る災害が起きる可能性には目をつむった上で、「だから安心して下さい」という。

呆気にとられる。演説の残りの部分は、この認識を大前提として説かれる。さらに驚かされるのは、会見後の質疑応答で質問した読売新聞と日本テレビとロイター通信とニコニコの記者のうち、誰一人としてこの大前提に疑義をたださなかったことである。

絶望的な気分になるが、わたくしは決して絶望したくない。絶望すれば、それで終わりだ。武満徹が遺した言葉を思い出す。「ぼくはどんな場合にも、ぼくの『希望』は捨てない」。

2012年6月15日


751万4066人

原発に頼らず自然エネルギーを中心とした社会の実現をめざすさようなら原発1000万人アクション。署名の数が、本日現在、なんと751万4066人に達しました。共同通信によると、本日、180万人分の署名を横路孝弘衆議院議長に提出しました。署名の受付は一千万人に達するまで継続されることになりました。この勢いなら達成するのも夢ではありません。この機会にぜひ署名を!

2012年6月13日


ニュートリノ君

きょうの京都新聞の記事によると、ニュートリノ君の性質がまたひとつ解明されたそうです。

ニュートリノ君にはミュー型とタウ型と電子型の三種類があり、ひとつの型から別の型に変化すると考えられます。今回の実験ではミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化した証拠を99.92%の確率で検出。さらに今後はニュートリノと同じ質量をもつ反ニュートリノの反応の違いが解明されれば、宇宙がなぜ反物質ではなく物質で構成されているかの理由がつきとめられるかもしれないとのこと。

4月24日の当欄でも触れましたが、宇宙が誕生したとき、反物質と物質が同時に生まれたのに、なぜか物質のほうが量が多くて、現在の宇宙ができた、その理由は謎のまま。ニュートリノ君がその秘密を握っているかもしれない。教えてくれ、ニュートリノ君!

2012年6月5日


ニュートリノさん

スイスの欧州合同原子核研究機構(CERN)の実験で、素粒子ニュートリノのスピードが光速を上回る結果が得られたと報じられたのは去年の9月23日だった。

実験結果によるとニュートリノの速度は毎秒30万6キロメートル。光速に較べて毎秒6キロメートル速い。これが事実だとすれば、「物質は真空では光より速く移動できない」とするアインシュタインの特殊相対性理論に矛盾する。データの再検証に参加したフランスの物理学者は「四次元以外の別次元を経由して近道したのかもしれない」とさえ語った。

世界中が色めきたった。わたくしも興奮した。素人考えながら、なんとなく「じつは誤差の範囲じゃないの?」という気もしたが、ニュートリノさんを応援したくなった。光速の壁を超えてくれ、未知の世界を開示してくれ、と、いつしか心の中で「ニュートリノさん」と擬人化して、ピノキオではないが、星に願った。

今年の3月17日、別の研究チームが再実験したところ、やっぱり光速は超えないという結果が出た。そして先月、CERN で再び実験が行われ、ニュートリノさんと光の速さには明確な差がないことがわかり、光速を上回るという仮説は撤回されることになった。ニュートリノさんのサポーターとしては無念のひとことである。と同時に、アインシュタインの偉大さをあらためて確認させられた。

ところで、CERN なんて、われわれ凡人には何の関係もない研究機関だろうと思うかもしれないが、とんでもない。インターネットの基礎的技術を開発したのがほかならぬ CERN なのだ。現にわたくしはいま、この文章をエディターで書き、HTML 形式にしてサーバーにアップロードし、HTTP(ハイパーテキスト伝送プロトコル)によって皆さんが閲覧しているわけだが、HTML や HTTP は CERN の技術者が開発したのだ。だから、ものすごく身近な存在なのです。それにしてもなあ、ニュートリノさん、もうちょっとがんばってほしかったなあ。

2012年6月4日


お引越し

あ、いえ、引越すわけではありません。映画の話です。

6月7日(木)午後1時からBSプレミアムで相米慎二監督の『お引越し』がアンコール放映されます。田畑智子の「ありがとう!」。雨。京都の送り火。忘れがたい作品です。

2012年6月1日


喜劇映画ベスト5

はなはだ唐突ではございますが、5作品を挙げます。甲乙つけがたいので制作年代順に。

来週5月25日(金)午後1時からBSプレミアムで『博士の異常な愛情』が放映されます。ぜひご覧あれ。

2012年5月18日


粗忽印鑑本舗 虚構が現実に

毎度ご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

この度当社の「論外」印が本物の印鑑として登場しました。詳細は5月15日付の粗忽第二共和制をご覧下さい。じゅんやさんのご友人が本物の印鑑を作って下さいました。写真もご覧になれます。

これを記念して、新たに三つの商品をご用意しました。

煩瑣煩瑣煩瑣

不快不快不快

絶句絶句絶句

そのほかのカタログは下記の通りです。

安泰安泰安泰

面倒面倒面倒

眉唾眉唾眉唾

夜伽夜伽夜伽

実印実印実印

無視無視無視

猫舌猫舌猫舌

本人本人本人

論外論外論外

微妙微妙微妙

無理無理無理

粗忽(小)粗忽(中)粗忽

2012年5月16日


満月、ただいま増量中

東の空に満月がのぼってきました。今夜の満月はひと味ちがいますぞ。その名もスーパームーン。地球に最接近するので、いつもの満月に較べて14%も大きいんです。その差は NASA 提供の図解で一目瞭然。日頃のご愛顧への感謝をこめて増量中。原発をぜんぶ止めた日本へのご褒美かもしれません。

2012年5月5日 19時25分


変な顔の人

映画を観る楽しみはいろいろありますが、変な顔の人が見られるのも楽しみのひとつです。

スペイン映画界にはロッシ・デ・パルマという、ピカソの絵から飛び出したような、いちど見たら忘れられない顔の女優さんがおりまして、とにかくユニークな顔です。ふつうの人ならコンプレックスの塊になっていじけてしまうでしょう。ところがこの人は、いじけるどころか堂々たるもの、圧倒的な存在感で見る者をたじろがせる。あまりにも堂々としているので、変な顔なのに、ぐるっと一周して個性的というか、ある種の美を感じさせ、ジャン=ポール・ゴルチエのモデルになってしまったほど。

アメリカ映画界のビッグネームで変な顔の人といえばスティーヴ・ブシェーミでしょう。いつ見ても本当に変な顔です。コーエン兄弟の傑作『ファーゴ』では、彼と一夜を過ごした女の子ふたりが警官の事情聴取でどんな人だったか問われ、「変な顔の人」と答えます。彼は監督もやるし脚本も書く才人なのですが。

そしてもうひとり挙げるならウィレム・デフォー。『プラトーン』『最後の誘惑』『ミシシッピー・バーニング』などの真面目な作品に出るかたわら、マドンナと共演した『BODY/ボディ』みたいなゴミ映画にも出て熱演する。シリアスだろうがゴミだろうが、とにかく力演。そして変な顔。どんなクズ映画でもわたくしはウィレム・デフォーが出ていればどうしても最後まで観てしまいます。おそるべし、デフォー。

2012年5月4日


エレクトーンと日本

小中学生のころエレクトーンを習った。楽器の名称はヤマハの商標名なので一般的には電子オルガンと呼ぶべきらしいが、当時はエレクトーンが電子オルガンの代名詞だった。接着剤といえばセメダイン、絆創膏ならバンドエイドだ。

エレクトーンを習ったことがある者なら誰でも知るとおり、扱う楽曲は多岐にわたる。多岐にというより、あるゆるジャンルを扱う。クラシック、ポップス、ロック、ジャズ、ラテン音楽、歌謡曲、フォーク、ニューミュージック、演歌、文部省唱歌、世界の民謡、日本の民謡、童謡、映画音楽、NHKみんなのうた、宗教音楽……。およそ音楽と呼べるものなら古今東西どんな楽曲でも弾く。だから、たまに来客があって「ちょっと弾いてみてよ」と頼まれれば、以下のようなラインナップで腕前を披露することになる。

  1. 荒城の月
  2. ワン・ノート・サンバ
  3. イエスタデイ・ワンスモア
  4. さくらさくら
  5. いつか王子様が

滝廉太郎の歌曲に始まり、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ、カーペンターズのヒット曲、日本の箏曲にもとづく歌曲、そしてしめくくりはディズニー映画『白雪姫』の挿入歌である。

節操がない。無節操にもほどがある。しかも「さくらさくら」は琴の音色で弾くのだ。鍵盤を叩いて琴の音を出す。大正琴の電子版だ。

いったいどこの世界にこんなプログラムを組む演奏会があるだろうか。たとえばピアノだ。ピアノの演奏会で上記のようなプログラムが考えられるだろうか。

「いますよ、ピアノで弾く人」

たしかにいると思う。小原孝さんあたりならきっと弾くだろう。しかし、ピアノという楽器が発明された経緯を考えれば、ピアノで「荒城の月」と「イエスタデイ・ワンスモア」と「さくらさくら」を弾くのは邪道である。ところがエレクトーンの場合はこの流れが正道なのだ。

だからわたくしは思う。エレクトーンこそ、純日本的なるものなのだと。

安産祈願に神社をお詣りし、教会で結婚式を挙げ、仏教で葬式をする。朝はパンを食べ、昼はラーメンをかきこみ、夜は焼き魚。この雑種性こそが日本だ。

2012年5月2日


インターネットラジオ

ラジオが大好きです。東京のAMラジオを愛知で聞きたいばかりに、毎月六千円払って自宅に有線放送を引いた時期があったほど。おととし開設された radiko.jp ももちろん愛聴しますが、いまのところ聴取できるエリアが居住地に限られているのが残念。いずれエリアのしばりが撤廃されることを願います。

お気に入りのインターネットラジオは SHOUTcast。あらゆるジャンルの音楽が選べます。お勧めのソフトは AzSHOUTcastPlayer。毎日ジャズピアノを朝から晩まで流しながら仕事中。無料で有線放送を楽しむ気分です。

2012年5月1日


ハナミズキ

わが町ではハナミズキが見頃です。近所を散歩するたびに、雪のように白い花びらが目に飛びこみ、大きく開いた四枚の花びらに顔を近づけて、きれいだなあ、とため息が漏れます。

花びらの中心に黄緑色の粒々があり、これはいったい何だろうと思って、昨夜辞書で調べてびっくり仰天。なんとあの四枚の花びらは花びらではなく、葉っぱなのだそうです。正しくはほうと呼ぶらしい。そして中央の粒々が花の正体でした。世の中知らないことばかりです。

2012年4月29日


マットレス

ふだん寝るときは畳敷きのベッドを使い、とても寝心地がよいのですが、先週、朝日新聞の記事で高品質のマットレスの存在を知りました。エアウィーヴという製品で、厚さはわずか4.5センチ。寝返りが楽に打てるのだそうです。浅田真央や北島康介が愛用するくらいですから品質は折り紙付き。子供用の新商品が発売されたそうです。しかもNEWS ポストセブンの記事によれば、おねしょの跡をお湯だけで完璧にきれいさっぱり洗える。

で、ついさっき届いたばかりの『通販生活』夏号を見たら、坂東玉三郎さんがエアウィーヴを紹介しているではありませんか。地方公演にも持参するほどお気に入りとか。よほど寝心地がよいのでしょう。お値段が気になります。おそるおそる値段を見ると……シングル7万円、セミダブル9万円、ダブル11万円。目玉が飛び出そうになりました。

メーカーはどこかしら、外国製かなと、紹介文を読んでみると、なんと地元の愛知県、エアウィーヴジャパンという会社でした。愛知はものづくりが今も盛んなのですね。

試してみたいけど、お高いわ。でもそれだけの価値があるのよね。でも高くて手が出せない。でも一生ものだと思えば安いかも。でも……(以下無限ループ)

2012年4月28日


不明を恥じる

二十六年前のきょう、チェルノブイリ原発で大事故が発生しました。テレビのニュース映像を見て驚愕しましたが、これに匹敵する大事故が日本の原発で起きることはあるまいと、さしたる根拠もなく高をくくっていました。まさに対岸の火事。おのれの不明をただただ恥じるばかりです。わたくし自身は人生の折り返し地点を過ぎて余命数えるばかりですから、放射線をいくら浴びようが構わない。しかし、これから生まれる子供たちに申し訳ない。

「最大の敵は無関心である」

橋本治のことばです。

来たる五月五日、日本の原発がすべて運転を止めます。その後は少しずつ、そして確実に、原発をなくしてゆこう。政財界の一部には「経済成長の戦略を示せ」と声を荒げる向きが少なくありません。彼らのメンタリティーは高度経済成長とバブルの夢にいまだにどっぷり浸っています。日本の人口は今後、大々的に移民を迎え入れない限り、右肩下がりで減る一方。エネルギー消費量は必然的に今より少なくて充分。実際今年に限っても、夏場に電力不足が懸念されるのはわずか三十時間程度。三十時間我慢すれば停電せずに済む。

さようなら原発1000万人アクションで集まった署名は631万人分を超えました。締切りはまたまた延長され、五月末まで受付中です。

2012年4月26日


宇宙に謎はない

宇宙は謎だらけですが、理論物理学による仮説(理論)と、実験物理学による証明(観察)によって、謎は一つずつ解明されます。もちろん新たな謎が登場しますが、理論と観察によって次々と明らかにされる。わたくしが思うに、宇宙に謎はない。唯一の謎は「宇宙が存在すること」ではないでしょうか。なぜ宇宙は存在するのでしょう。

素粒子物理学によると、宇宙が生まれたとき、対生成という概念によって物質と反物質が同時に生まれました。これらは同時に生まれ、出会うと消滅します。だから物質と反物質の量が同じだったら、たちどころにすべてが消滅する。原理的にはどちらも同じ量が生まれるはずなのです。ところが実際にはほんの少し差があった。物質のほうが少しだけ多かった。だから現在の宇宙ができた。なぜ差があったのかは謎です。

なぜ宇宙は存在するのか。この問いに対する答えのひとつが人間理論です。「宇宙が存在するのは、人間に宇宙が存在する理由を考えさせるため」だというのです。しかし、これはあまりにも人間にとって都合のよい解釈ではなかろうか。まるで天動説です。人間理論を覆すコペルニクス的転回はありえないのか、などと考えるとめまいで頭がクラクラして楽しい。

2012年4月24日


「カレーと金を出せ」

きょうの朝日新聞の記事ですが、容疑者にいろいろ聞いてみたくなる事件です。すき家でなぜカレーを? いや、たしかにすき家のメニューにカレーはあるけどさ。しかもカレーと金って、用意するのに手間取るだろう。手間取ってるうちに簡単に足がついてしまうじゃないか。実際、あっさり現行犯逮捕されたし。さらに驚くのは警官の取り調べに「全く身に覚えがない。すき家に行ってない」と答えたことだ。何がなんだかさっぱりわかりません。

2012年4月21日


二者択一

子供のころから二者択一が苦手です。AとBのどちらをとるか迫られるたびに、押し黙るか、第三の選択肢をつぶやいて変人扱いされたものでした。

「王と長島、どっちが好き?」

少年時代のスポーツの花形は野球で、盟主は巨人、スターはもちろん王と長島。実像はさておき、かたや求道者、かたや天衣無縫の、どちらもスーパースター。どちらかを選べなんて無茶です。だからわたくしは「末次」と答えたものでした。

「文楽と志ん生、どっちが好き?」

これも同じ質問です。どちらかといえば志ん生ですが、文楽だってすごい。だから、つい「金馬」の名をあげて質問をはぐらかしてしまう。「志ん朝と談志、どっちが好き?」と問われれば、しばし間を置いてから「小三治」と答えるでしょう。

「ビートルズとローリング・ストーンズのどちらかを選べと問われたら、デイヴ・クラーク・ファイヴと答える」

思春期を過ぎたわたくしに、こういう答え方でよいのだと教えてくれたのが、のちに心の師となった某音楽家です。まず質問の前提そのものに揺さぶりをかける。ビートルズとローリング・ストーンズのサウンドを生んだ土壌からはデイヴ・クラーク・ファイヴも生まれた、そのことを知った上での二者択一なら話は別だが、そうでなければ無邪気に答える気はない、という宣言です。

"Either you are with us, or you are with the terrorists."

世界貿易センタービルを崩壊させたテロの直後に当時のブッシュ大統領が言い放ったこのフレーズ。「俺たちの側につくのか、それともテロリストの側につくのか」。世界を敵と味方の二分法でしか考えない単純な思考。耳を疑いましたが、同じ思考法が今の日本でも広くゆきわたってきました。世の中には改善すべき問題がたくさんありますが、それらの問題の背後にはさまざまな要因が複雑にからまっている。にもかかわらず、物事を単純化して「AかBか、どちらかを選べ」と大声で怒鳴りつける人間が圧倒的な人気を得て政治力を発揮する。わたくしは、どんなときも「デイヴ・クラーク・ファイヴ」を忘れてはいけないと思うのです。

2012年4月13日


nomazon

アマゾンが扱わない書籍だけを集めたオンライン書店nomazon。いろんな本や雑誌の写真がずらりと並びます。ふむふむと眺めはじめたとたんに、わたくしが定期購読している雑誌が目に飛びこんできました。そうだよなあ、アマゾンには置いてないよなあ。

2012年4月10日


人間関係

「斉藤さん、どうぞ」
「先生、おはようございます」
「おはようございます。今日はどうしました?」
「実は、悩みがありまして」
「何です?」
「人間関係に悩んでいます」
「ほう、人間関係ですか」
「はい……」
「まあ人間ですからね、いろいろあるでしょうね」 「はぁ……」
「動物はどうです?」
「はい?」
「動物関係」
「ドウブツカンケイ?」
「あなたも悩んでみませんか、動物関係」
「悩んでみませんかって……」
「アライグマです」
「え?」
「知りません? アライグマ?」
「あ、いえ、聞いたことはありますけど」
「ラスカル」
「ああ、ありましたね、アニメ」
「アライグマをね、ペットにする人もいるんですよ。アメリカの第30代大統領カルビン・クーリッジ」
「飼ってたんですか」
「奥さんがね。奥さんのグレース・クーリッジが、レベッカという名前のアライグマを可愛がってたんです。餌付けしてね。でも、危険なんですよ」
「獰猛なんですか」
「ええ、とくに発情期にはね。それよりも感染症です。悪い病気が広まってしまう。だから餌付けは絶対しちゃいけない」
「あの、人間関係で困ってるんですけど……」
「アライグマは外来生物法により特定外来生物に指定されています。従って、無許可での飼育、譲渡、販売は禁止されています」
「私の悩みとどういう関係が……」
「大ありです」
「蟻? アリクイですか?」
「いや、アリクイじゃなくて、関係が大ありだと言うんです」
「よくわかりませんけど」
「アライグマはトウモロコシやメロン、イチゴ、スイカなどの農作物を食い荒らします。乳牛の乳首を噛み切ることもある」
「痛そうですね」
「アメリカの海岸ではウミガメの卵の87%をアライグマが食べてしまうところもある」
「……」
「どうです? 人間関係に悩んでる場合ですか?」
「え?」

2012年4月8日


幕末太陽傳

あす午後9時、BSプレミアムで川島雄三監督の『幕末太陽傳』デジタル修復版が放映されます。フランキー堺演じる左平次が羽織をサッと着るアクションは必見ですぞ。

2012年4月2日


敵とともに生きる

「敵とともに生きる! 反対者とともに統治する! こんな気持のやさしさは、もう理解しがたくなりはじめていないだろうか。反対者の存在する国がしだいに減りつつあるという事実ほど、今日の横顔をはっきりと示しているものはない。ほとんどすべての国で、一つの同質の大衆が公権を牛耳り、反対党を押しつぶし、絶滅させている。大衆は〔…〕大衆でないものとの共存を望まない。大衆でないすべてのものを死ぬほど嫌っている」

(オルテガ『大衆の反逆』寺田和夫訳、中央公論新社、2004年、pp. 89-91)

2012年4月1日


個性

「よく個性なんて言いますけど、個人てのは個性なんて言葉を使うまでもなく個性はあるんですよ。逆にその個性という言葉を消す人が必要ですよね。ちゃんとした人は個性を消しますよ。で、声だけが残っていく。声しかないって言ってもいいくらいじゃないかな」

(柄本明「巻頭エセー 落語と私 私と落語」『東京かわら版』4月号より)

2012年3月25日


ミツバチのささやき

来週28日(水)午後1時からBSプレミアムで『ミツバチのささやき』が放映されます。ビクトル・エリセ監督の珠玉の名作。ぜひご覧あれ。

2012年3月24日


育児戦隊ソダテンジャー

「ブルー参上! おしめは洗っておいたぞ」
「グリーン見参! ベビーフードはまかせろ」
「イエロー登場! もぐもぐパクパク。うめぇ」
「ちょっとカレー食べてる場合じゃないでしょ~」
「いいからピンク、母乳の用意だ!」
「は? なにそれ? セクハラ信じらんない。てゆうかレッドはどこ?」
「ばぁぁぶぅぅぅぅ」
「レッドだけに赤ちゃんってボケがベタすぎるぞ!」

2012年3月23日


コントの教科書

コントを書きたい人、コントを演じたい人にとっての必読書のひとつが『井上ひさしの笑劇全集』(上下巻、講談社文庫)。井上ひさしがてんぷくトリオに書き下ろしたコントのアンソロジーです。

来週24日(土)午後11時からBSプレミアムでハイビジョン特集「井上ひさしとてんぷくトリオのコント」が放送されます。タイトルを見て「てんぷくトリオのコントが見られるのか!」と狂喜乱舞。さっそく番組内容を確認してみると、てんぷくトリオのコントを山口智充、田中直樹(ココリコ)、中村獅童の三人が三宅裕司の演出で演じるそうです。

三宅裕司は伊東四朗と数々の名作コントを演じているのできっと質の高いコントが見られはず。しかし、できることならオリジナルのてんぷくトリオのコントを放送してほしかった。三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗の演技を見たかった。当時のコントは精神病患者――いわゆる気狂いや白痴――が主人公のものが多いので、今では放送できない作品が多々ありますが、てんぷくトリオが演じる「死刑台の男」や「村長とサギ師」をぜひ見たいと思うのであります。と同時に、彼らのコントを現代に蘇らせる試みは高く評価したい。

2012年3月18日


『用例でわかる現代文重要キーワード』

今年はもう間に合わないかも知れませんが、来年大学を受験する皆様にニュースです。

学研教育出版から『用例でわかる 現代文重要キーワード』という対策本が発売されました。帯の説明によると〈難解論説文がすらすら読める/得点力UP!/用例つきなのでわかりやすく、一度覚えたら忘れない〉。

いわゆる現代文(国語)の穴埋め問題に使う用語をわかりやすく解説した本です。たとえば観念と概念はどうちがうか。これが図解を見ただけで一目瞭然。しかもですね、嬉しいやら恥ずかしいやらでございますが、巻末に長文の練習問題がふたつ載っておりまして、うちひとつがなんとわたくしのエッセイなのでございます。かつて『南スペイン・アンダルシアの風景』(丸善ブックス)に書いた「身体の知性――ロルカと二一世紀」というエッセイが採用されました。定価1029円。ぜひお求め下さい。

2012年3月17日


第9地区

今夜の日本テレビ系「金曜ロードショー」は『第9地区』。おもしろいですよ。アイデアがいいし、撮影もすばらしい。誰にでもお勧めできます。ぜひご覧あれ。

2012年3月16日


東日本大震災一周年、追悼と復興祈念プログラム

現在14時17分。TOKYO-FM山下達郎サンデー・ソングブックで東日本大震災一周年の追悼と復興祈念プログラムが始まりました。14時46分には一分間の黙禱を行います。

[14時48分追記] 予想どおり「蒼氓」と「希望という名の光」が流れました。「蒼氓」はライブバージョン、「希望という名の光」はきょうのために録音したアコースティックバージョンでした。

2012年3月11日


483万6936人

「さようなら原発1000万人署名」が483万6936人に達しました。約五百万人。すごい。

最終〆切は2月28日でしたが、5月末まで延長されました。まだ署名していない方はぜひこの機会に公式サイトをご覧下さい。

2012年3月7日


観月ありさ頌

唐突ではありますが、問答無用で観月ありさを讃美したいのであります。

すでに二十年も昔になりますが、ニッポン放送で観月ありさがDJをつとめる「不思議の国のありさ」という番組がありました。この番組でわたくしは、彼女がコメディエンヌとして並々ならぬ才能を持っていることに気づきました。オヤジギャグのセンスが抜群だったのです。ギャグを言うときのタイミングが秀逸。ラジオ番組なので声だけでコントを演じるわけですが、聴き惚れました。ナンセンスを生き生きと演じる、その輝きぶりが往年のマルクス兄弟のコメディを髣髴させ、わたくしは人知れず観月ありさをマルクス主義者と命名しました。直前の放送枠が「牧瀬里穂の素直になりたい」という番組で、これがじつにどうも凡庸でして、「不思議の国のありさ」が始まると胸が高鳴ったものです。

その後テレビを主戦場として「ナースのお仕事」で名コメディエンヌぶりを発揮し、「サザエさん」を違和感なく演じ、「吉原炎上」「鬼龍院花子の生涯」で凄みを見せる――同世代でこれほど芸域の広い女優さんがほかにいるでしょうか。

2012年3月3日


閏月

おととい閏秒の話をしましたが、書き終わってから、かつて閏月というものがあったのを思い出しました。太陰太陽暦、いわゆる旧歴(陰暦)です。現行の太陽暦が日本に導入されたのは明治5年(1872)ですから、とんでもなく大昔というわけでもありません。

旧歴は月の満ち欠けがベースなので季節が徐々にズレてしまう。そこで太陽の運行も考慮に入れて、数年に一度「閏月」をもうけて一年を十三ヶ月にし、季節とのズレを修正する。

今年は旧歴だと閏月がある年です。三月の次に「閏三月」が来る。三月二十二日が旧歴の三月一日で、四月二十一日が旧歴の閏三月一日。今年は三月がいつもの年より倍も長い。

なぜ明治5年に太陽暦を導入したかといえば、もちろん文明開化で西洋諸国との交易に好都合だからですね。グローバリゼーションです。そのかわり従来の季節感が暦と一致しなくなりました。あしたは桃の節句ですが、我が町はまだ桃は咲いていません。それもそのはずで、旧歴の三月三日は今の暦では三月二十四日。桃はもちろん妍を競っているでしょう。

2012年3月2日


閏秒

きょうは四年に一度の閏日。原稿〆切を間近に控えるわたくしにとっては「ユリウス暦と地球の公転周期に差があってどうもありがとう!」と叫ばずにはいられないほどありがたい。そんな閏日に負けず劣らず頑張ってるのにあまり日の目を浴びないのが閏秒ではないでしょうか。

地球の自転から計算する世界時と、セシウム原子を使って算出する協定世界時とのあいだにズレが出てしまう。これを調整するため、数年ごとに一秒追加するのです。前回は2009年1月1日でした。午前8時59分59秒と9時00分00秒のあいだに「8時59分60秒」を入れる。

この閏秒を廃止しようという声があります。日本は廃止派。理由は、手作業で誤差を調整する際に電子機器などが誤作動を起こすおそれがあるから。しかしですね、2000年問題というのがあったでしょう。コンピューターがどんな反応を示すか予測できない、病院の医療機器が止まってしまうかもしれない、などとさんざん騒がれたものの、蓋を開けてみれば大山鳴動して鼠一匹。

閏秒だって第一回の1972年から数えて二十四回も実施してきた。今年も7月1日に実施される予定。専門的なことはわからないけど、大丈夫なんじゃないでしょうか。うん、きっと大丈夫。

2012年2月29日


孤独について

「ほんとうに、物のわかった人間なら、己れ自らをもっている限り、何ものも失ってはいないのである。ノラ市が野蛮人たちのために破壊されたとき、そこの司教であったパウリヌスは、すべての物を失い彼らの捕虜となったが、神様にこう祈った。『主よ、どうか私がこの損失を悲しまないようにして下さい。まったく主も知り給うように、彼らはまだ私に属する何ものにも手をつけなかったのでございます』と。彼を豊富にしていた富、彼を善良にした善は、依然として彼のうちに完全にあったのである。これでこそ、損害をとうていこうむりえない財宝を選んだと言えるのだ。これでこそ、なんぴとも足を踏み入れることのできないところ、我々自身によってでなければ決して窺い知られない所に、それを隠したと言えるのだ。妻も持たねばならない。子も持たねばならない。財宝も持たねばならない。できれば特に健康をもたねばならない。だが、我々の幸福はかかってそこに在るというほどに、それらに執着してはならない。全く我々の、全く自由独立の、そこに我々のまことの自由と本当の隠遁孤独とを打ちたてるべき、裏座敷を一つとっておかなければならない。我々はそこで毎日、我々対我々自身の会話をしなければならない。どんな交渉もどんな外部の連絡も、そこには入ってこない内輪ないしょの話をしなければならない。妻なく、子なく、財産なく、供まわりもなければ下僕もないように、談笑しなければならない。そうしていれば、万が一何から何まで失せてなくなる時が来ても、それらなしに暮らすことが別段こと新しくは思われないであろう。我々は内省のできる霊魂を持っている。それは、自己を友とすることができるし、攻めるものも守るものも、受けるものも与えるものも、もっている。だから、この孤独のなかで我々はひまで退屈しはしないかなどと、心配するのはやめよう」

(モンテーニュ「孤独について」『随想録』関根秀雄訳、白水社、1997年、pp. 458-459)

2012年2月23日


まかない飯専門店「厨房」本日オープン

お待たせしました! いま静かなブームのまかない飯。当店は日本初のまかない飯専門店です!

当店にはお客様用のフロアはございません。厨房でスタッフと一緒に召し上がって頂きます。ご注文はお受けしません。どんな料理になるかはその日になってみないとわかりません。どうか末永くご愛顧の程お願い申し上げます。

住所
粗忽市うっかり横町2-4-8
営業時間
閉店直前
ご予約
お受け致しません
電話
ございません
定休日
シェフのきまぐれ

2012年2月14日


さようなら原発

すでにご存じの方は多いでしょうし、「もう署名したよ」という人も大勢いらっしゃると思いますが、最終〆切が今月28日なのでご案内します。

どう考えても人間の手に負えない原発はやめて自然エネルギーを中心とする社会をつくる。さようなら原発1000万人アクション。一千万人を目標に署名を集めています。すでに四百万人近い署名が集まったそうです。呼びかけ人は内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔の各氏。

署名の方法はふたつあります。用紙をダウンロードし、プリントアウトして直筆で書いて郵送するか、あるいはブラウザを使ってオンラインでも署名できます。どちらも有効ですが、オンライン署名は一回につきひとりしか受けつけられないのに対し、自筆署名は一枚の用紙に十人の名前が書けます。事務局としてはできるだけ多くの署名を集めるためにも自筆署名で送ってほしいそうです。

用紙はワードファイル(doc)と PDF から選べます。日本語のみならず英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の用紙もあります。

あさって11日に東京の代々木公園で集会があります。震災一周年の3月11日には福島で大規模な県民大会を開催。そして今朝の朝日新聞によると、7月16日に都内で十万人規模の集会を開く予定。

ひとりでも多く署名が集まるよう、ぜひまわりに声をかけて下さい。

2012年2月9日


奇跡

科学雑誌『Newton』によると今年は五月に金環日蝕があり、六月には金星が太陽と地球のあいだを通り(金星日面通過)、八月には金星蝕があるそうです。最大の見物は金環日蝕。全国の広い範囲で観測でき、これほど広い範囲で見られるのは1080年以来およそ千年ぶり。

月が太陽と地球のあいだに入りこんで太陽の光をさえぎるのが日蝕ですが、月と太陽の位置は毎回ちがうので、地球からの距離も異なり、月が太陽よりちょっと大きい場合は皆既日蝕、そして今回のように少し小さい場合は太陽の光がまわりからはみだして金環日蝕になる。これもひとえに地球から見た月と太陽の大きさが「ほぼ同じ」だからこそ楽しめる現象。まったく異なるふたつの天体の見かけ上の大きさが同じだなんて、奇跡としか言いようがありません。

2012年2月8日


猫さん

きのうの朝日新聞の見出しに驚いた。

猫さん、鳴きながら力走 「ロンドン近づいた」

猫さん、である。タレントの猫ひろしだ。カンボジア国籍を取得し、カンボジア代表としてロンドン五輪マラソンへの出場を目指している。「鳴きながら」は「泣きながら」のまちがいではないかと一瞬思ったが、記事をよく読むと、ギャグである「ニャー」の鳴き声を発して力走したのだった。

では、もし歌手のイルカが応援に駆けつけたとしたらどうだろう。それもフランス経由で。

猫さん、イルカさんとドーバー海峡越え

ここにさかなクンが絡むと、いよいよわからなくなってくる。

2012年2月6日


陸の王者

ロンドン五輪出場をかけた各競技の予選が真っ盛りで、今年もロンドンでスーパースターが誕生するだろう。しかし、わたくしが注目する競技はなぜかテレビでは滅多に中継されない。

「十種競技」

夏期オリンピックの花形は陸上競技、そして陸の王者といえば十種競技だよ。キング・オブ・アスリート。正真正銘の王者だ。

何がすごいって、競技が十種類もあるだけでなく、それぞれの記録が専門競技者に匹敵するくらいハイレベルであることだ。しかも全種目をたった二日で行う。初日が100m競争、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m競走。二日目は110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、槍投げ、1500m競走。すごすぎるよ。

だいたいギリシャ語が語源の競技名からしてすごい。

「デカスロン」

なにしろデカスロンである。そりゃあトライアスロンだってすごいさ。しかしデカスロンの力強さには到底及ばない。「デカ」の威力だ。刃向かっても勝てる気がしない。いや、刃向かうつもりはさらさらないが。

十種競技にわたくしは注目する。当然、歴代のメダリストを記憶していると言いたいが、じつは全然知らない。知らないけれど、陸の王者はデカスリートであると力説したいのだ。

2012年2月5日


漢字検索試験リターンズ

誰もが忘れていたときに復活する、それが漢字検索試験。ふるってご参加を!

【19時13分追記】左のナビゲーションメニューに「漢字検索試験」を追加しました。「??」の中にあります。レギュラーコーナーに昇格です。

2012年2月4日


OED のインストールに11ヶ月かかったでござるの巻

CD-ROM 版 Oxford English Dictionary 2nd Edition Version 4.0 を購入したのが去年の三月上旬。ところがインストールを何度試みてもメイン画面が出てきませんでした。OS は Windows 7 Professional SP1。高い買物だっただけにショックで、試行錯誤を繰り返したものの功を奏さず、そのまま諦めて年越し。そして今日ふと思い出して再挑戦したところ、遂にインストールに成功! ネットで調べると Windows Vista でインストールできないトラブルがあるらしく、もしかして同じ悩みを抱える人がいるかも知れないと思い、その手順をご紹介します。

1. Install Disc を挿入

OED 2nd. Edition Version 4.0 は二枚組で、Install Disc と Data Disc があります。指示に従って Install Disc を入れます。自動的にインストール作業が始まります。

2. 「Data Disc を挿入して下さい」のメッセージが出る

言われたとおりに Data Disc を入れます。

3. インストール完了

"OED has been successfully installed" というダイアログが出ます。インストールが完了したので、Data Disc を取り出します。あとはプログラムを起動するだけ。ところが次のステップで問題が発生します。

4. OED を起動

スタートメニューの Oxford English Dictionary をクリックします。あるいはエクスプローラーなどで実行ファイル(oed.exe)を直接起動してもよろしい。これでプログラムが起動すると思いきや……

5. 「ドライブにディスクがありません。/オリジナルな "OED" CD/DVD ディスクを挿入して下さい」のメッセージが出る

なぜディスクが必要なのか? 「オリジナルな "OED" CD/DVD ディスク」って何? 意味不明です。実は、プログラムを初めて起動するときだけ Install Disc を挿入しなければならないのです(説明書にもちゃんと書いてありました)。「オリジナルな CD/DVD ディスク」というのは Install Disc のこと。そこで、改めてドライブに挿入して "Retry" をクリックします。すると……

6. 「認証に失敗しました。もう一度試みますか?」のメッセージが出る

なんで失敗するのよ? まったくもって意味不明です。ですが、ぐっとこらえて、"Retry" をクリック。

7. 三十秒くらい待たされてプログラム画面が無事起動

ようやく動きました。

てなわけで、人騒がせな CD-ROM です。エラーメッセージの日本語の説明が下手くそです。しかし、なにしろ OED は英語が専門ですから日本語にケチをつけてもしかたがありません。とりあえず無事インストールできて満足です。

2012年2月3日


WICKED

今朝郵便受けに放り込まれた無料のタウン誌を手にとったら劇団四季の広告が目にとまった。

「ウィキッド WICKED/誰も知らない、もう一つのオズの物語。」

ブロードウェイ・ミュージカル『ウィキッド』の日本版で、五六年前に日本初演され、近々地元の劇場で始まるらしい。そんなことよりわたくしは「ウィキッド」と WICKED の綴りを見比べて「むむ?」と疑問に思った。「キッド」の部分だ。

「原音に近いカタカナ表記をするなら『ウィックト』とすべきではないのか?」

つまりこう考えた。wicked は「よこしまな」とか「心のねじ曲がった」とか「邪悪な」といった意味の形容詞だが、語の成り立ちは、まず wick という動詞があり、そこに過去分詞を示す -ed がくっついて形容詞として用いられるのだろうと。たとえば backed(バックト)は back(バック=裏をつける)に -ed をくっつけた形だし、blocked(ブロックト=ふさがれた)も block(ブロック=ふさぐ)に -ed をくっつけた形で、どちらも ck が「ク」という無声音(にごらない音)だから -ed の部分もにごらない「ト」あるいは「トゥ」という音だ。

念のため『リーダーズ英和辞典』で発音を確認してみると、/wÍkəd/ とある。おや? 最後がd/ だ。つまり「ド/ドゥ」と濁るのだ。しかもその前の母音はə/ だから、全体としては「ウィーカッド」みたいな感じになる。

釈然としないので『ジーニアス英和辞典』で調べてみた。

wick・edwÍkɪd/
[発音注意]
【原義:魔法使い(wick)の(ed)→邪悪な→有害な. -ed は wretched にならったもの. cf. witch, weak】

なんとwÍkɪd/ で「ウィーキッド」だ。発音に注意しなさいとわざわざ断り書きもある。ATOK用の電子版は実際の発音を再生して聞くことができる。聞いてみると「ウィーキッドゥ」。もう少し大きい『ジーニアス英和大辞典』も発音は同じで、ただし語源の説明だけがちがう。

初13c;中英語 wicke〈邪悪な、有害な〉の変形。-ed は wretched などの類推から

オックスフォードの辞書も発音は'wɪkɪd/、ケンブリッジも'wɪk.ɪd/。結局「ウィキッド」という表記はきわめてまっとうなのだ。

というわけで、朝からたいへん勉強になりました。

2012年2月2日


百年後のタイタニック

豪華客船タイタニック号が沈没したのは1912年4月でした。船は大きければ大きいほど安全、大きな船に乗ってさえいれば安心、のはずでした。でも濃霧で視界を遮られ、気がつけば氷山に衝突し、あっけなく海の藻屑になりました。

あれから百年。「大きな船に乗れ」の大合唱があちこちで聞こえます。とりわけ政治と経済の世界で。わたくしは、小回りのきく小さな舟で、ゆっくりと、しかし確実に航海する道を選びます。もし一艘が顚覆したらほかの舟が手分けして救えばいい。身体感覚の及ばないサイズにはなるべく関わらない。そのほうがリスクが少なくて済みます。生存の可能性が高まります。

2012年2月1日


粗忽印鑑本舗

いつもお引き立てありがとうございます。今年の新製品です。

安泰安泰安泰

ついでに去年のラインナップはこちらです。

面倒面倒面倒

眉唾眉唾眉唾

夜伽夜伽夜伽

実印実印実印

無視無視無視

猫舌猫舌猫舌

本人本人本人

論外論外論外

微妙微妙微妙

無理無理無理

粗忽(小)粗忽(中)粗忽

2012年1月20日


告発サイト「馬鹿のいないロシア」に思う

ロシアのメドベージェフ大統領が旧態依然たるお役所仕事を糾弾するべく「馬鹿のいないロシア」という名の告発サイトを開設するそうです。

このニュースを読んで思い出したのが北杜夫さんのエッセイで教わった馬鹿の定義です。

「馬鹿には二種類ある。自分が馬鹿であることを知っている馬鹿と、知らない馬鹿である」

中学時代に北杜夫さんのエッセイを耽読した時期がありました(ついでに言えば北杜夫×遠藤周作×佐藤愛子による黄金のトライアングルも)。この定義を教わったのはたしか『どくとるマンボウ青春記』だったと思いますが、自分が馬鹿であることを自覚している馬鹿は人を幸せにするのに対し、自覚のない馬鹿は社会にとって百害あって一利なし、という内容だったと記憶しています。

馬鹿の根絶は結構ですが、「人を幸せにする馬鹿」はぜひともなま温かく見守ってやりたい、いや、そんな馬鹿のひとりとして、なま温かく見守っていただきたいと切に願うものであります。

2012年1月19日


湯たんぽ大活躍

年末から無印良品の湯たんぽを愛用。素材はポリエチレンなのに保温性がすばらしくてびっくり。丸一日経ってもあたたかです。半透明なので中のお湯の量が見やすい。しかも安い。保温カバーもいろいろ選べます。おすすめ。

2012年1月17日


リスニング試験はやめよう

かつて大学入試センター試験の試験監督をした経験をふまえて申し上げますが、リスニング試験はやめたほうがよろしい。以下、その理由を述べます。

1. 全員の耳に同じ条件で音声を届けるのはナンセンス

考えてもみてほしい。日常生活で、誰にも平等に、同じボリュームで、同じ音質でメッセージが伝わるなどということがあるでしょうか。ないんです。ありえません。聴きとり能力がもっとも必要とされるのは、不測の事態が起きたときです。たとえば数日前イタリアで豪華客船コスタ・コンコルディア号が座礁した事故。船内は大パニックになったことでしょう。こういうときに、周りの人の話や船内アナウンスを的確に聴きとれるかどうかが大事。ふだんの会話なら、相手の話が聴きとれなかった場合、「すみません、もう一度言ってくれませんか?」と聞き直せばよい。テレビやラジオのニュースなら再放送が何度もある。講演会でも質疑応答がある。一回こっきりの勝負で聴きとりの能力が問われるのは非常事態に限られます。

2. 機械は必ず故障する

リスニング用のICレコーダーであれ原発であれ、およそ人間がつくった機械はどれも必ず故障します。何度製品テストをしても本番では必ず一部が誤作動したり故障したりする。これを防ぐ手立てはありません。数十万人もの受験生に質量ともに同じ音声を届けるのは、物理的にも不可能なのです。

2012年1月16日


一文字足しただけで

名作のタイトルに一文字足すとよくわからなくなってしまうそうで、たとえば――

みごとな台無し感。こんな遊びにツイッターはぴったりなツールです。

2012年1月6日


謹賀新年

今年は事故や災害がなく、人を幸せにする粗忽が花咲く年になるよう希望します。

2012年1月1日