ごあいさつ 2003年

ありがとう

トップページのデザイン、ほんの少し変えました。2004年はこんな感じでまいります。

theatrum mundi は変わります。そして、theatrum mundi は変わりません。

今までありがとう。これからもよろしく。

2003年12月31日


ハッとしてブー

「ハッとしてブー」「ニンドスハッカッカ」「アンヘル18禁」「女と付き合ってないと」「海に沈めてやる」「あれだよあれ」「こんな店二度と来るか」

検索エンジンさん、ありがとう。

2003年12月30日


質問

口にしたら生きてゆけそうもない言葉と、口にしなかったら生きてゆけそうもない言葉、それらが同じひとつの言葉であるとき、何故あなたはそこに立っていられるのでしょう?

谷川俊太郎「質問集続」(『コカコーラ・レッスン』思潮社)より

2003年12月29日


しあわせ

しあわせは
ほんのすぐそばに
息を殺して
待っている。

別役実『街と飛行船』

2003年12月28日


異郷生活者

「私はパレスチナに属してはいません。ニューヨークに住んでいますから。でも私は常にパレスチナの中にいるのです」

衛星第一「サイード“イラク戦争”を語る」(26日22時)より

2003年12月27日


「種明かし」

今月16日から23日の検索キーワードです。

「種明かし」(527位)。何が知りたいのだろう。気になるなあ。

2003年12月26日


ルドルフだって遊びたい

ルドルフわーい! わーい!

2003年12月25日


サンタクローズ

子どものころからひげが生えてたの?
そうきかれてサンタはさびしくなりました
だってサンタは生まれおちたそのときから
白いひげのおじいさんでしたから
子ども時代がないということは
ぶらんこに乗った思い出がないということ
初恋の女の子の写真がないということ
そうして死ぬほど欲しかった玩具の汽車を
クリスマス・ツリーの下で走らせた経験が
ないということなのですから

ひいらぎ

谷川俊太郎「サンタクローズ」
(『谷川俊太郎詩集II』角川文庫)

2003年12月24日


空に小鳥がいなくなった日

森にけものがいなくなった日
森はひっそり息をこらした
森にけものがいなくなった日
ヒトは道路をつくりつづけた

海に魚がいなくなった日
海はうつろにうねりうめいた
海に魚がいなくなった日
ヒトは港をつくりつづけた

街に子どもがいなくなった日
街はなおさらにぎやかだった
街に子どもがいなくなった日
ヒトは公園をつくりつづけた

ヒトに自分がいなくなった日
ヒトはたがいにとても似ていた
ヒトに自分がいなくなった日
ヒトは未来を信じつづけた

空に小鳥がいなくなった日
空は静かに涙ながした
空に小鳥がいなくなった日
ヒトは知らずに歌いつづけた

谷川俊太郎「空に小鳥がいなくなった日」
(『谷川俊太郎詩集II』角川文庫)

2003年12月23日


生ひ立ちの歌

   I

   幼 年 時
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました

   少 年 時
私の上に降る雪は
のやうでありました

   十七-十九
私の上に降る雪は
のやうに散りました

   二十-二十二
私の上に降る雪は
であるかと思はれた

   二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました

   二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

   II

私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪の燃える音もして
凍るみ空のむ頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神さまに
長生したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました

中原中也「生ひ立ちの歌」
(河上徹太郎編『中原中也詩集』角川文庫)

2003年12月22日


「お仕事ですか」
「うん」
「無職じゃなかったんですか」
「無職だよ」
「無職なのに仕事ですか。いいんですか」
「いけないかな」
「失業手当は」
「申請してない」
「それじゃ闇失業者ですよ」
「え?」
「裏で暴力団や右翼が暗躍してますよ」
「そうだったのか」
「せっせと原稿を書いていらっしゃいますけど、誰かに書かされてるんですよ。闇の支配者。これだから世の中はあなどれませんよねえ」
「まったくだな」

2003年12月21日


どうなってるんだ

Mother, mother
There's too many of you crying
Brother, brother, brother
There's far too many of you dying
You know we've got to find a way
To bring some lovin' here today - Yeah

Father, father
We don't need to escalate
You see, war is not the answer
For only love can conquer hate
You know we've got to find a way
To bring some lovin' here today - Oh

Picket lines and picket signs
Don't punish me with brutality
Talk to me, so you can see
Oh, what's going on
What's going on
Ya, what's going on
Ah, what's going on

In the mean time
Right on, baby
Right on
Right on

Mother, mother, everybody thinks we're wrong
Oh, but who are they to judge us
Simply 'cause our hair is long
Oh, you know we've got to find a way
To bring some understanding here today - Oh

Picket lines and picket signs
Don't punish me with brutality
Come on talk to me
So you can see
What's going on
Ya, what's going on
Tell me what's going on
I'll tell you what's going on - Uh
Right on baby
Right on baby

--- Marvin Gaye, What's Going On (1971)
(Written by: Al Cleveland Marvin Gaye Renaldo Benson)

2003年12月20日


ゲームの規則

誰が決めたわけでもないのに、なんとなくルールができ、それが絶えず更新されてゆくのが遊びの面白さ。「とりかえっ語」や「語尾取り」も例外ではありません。

先月の「とりかえっ語」の「むすめシリーズ」と「まっつぁおシリーズ」、記念に保存しました。

2003年12月19日


「人格がない」

今月9日から16日までの検索キーワード一覧。「クリスマスの意味」(11位)「おせち料理の歴史」(13位)「デパ地下おせち」(162位)にかろうじて季節が感じられます。

「すんませんねえ」(185位)「人格がない」(399位)には何を感じればいいのでしょうか。

2003年12月18日


「ようなものってのを」

「この世のものならず」(263位)。「死んだ歌手」(439位)。今月1日から9日までの検索キーワードにある言葉です。

「ようなものってのを」(398位)を検索した人がいらっしゃいます。機会があれば膝を交えてじっくり語り合いたいものです。

2003年12月17日


忘年会の季節ではございますが

忘れられないこと。忘れるべきではないこと。たくさんあるなあ。

2003年12月16日


ゴドーを待ちながら

バグダッドの国立劇場が再開。国内の劇作家以外ではピランデッロの『壷』とベケットの『ゴドーを待ちながら』。

スーザン・ソンタグが戦火のサラエヴォで演出したのもゴドーでした。

2003年12月15日


汚れつちまつた悲しみに……

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつち悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに詩を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

中原中也「汚れつちまつた悲しみに……」
河上徹太郎編『中原中也詩集』角川文庫

2003年12月14日


オー!マイキー

「今日はクラスでいちばんかわいいエミリーちゃんと、ぶっかけうどん食べに行くんだ。楽しみだなあ」
「マイキー! お待たせ~」
「あ、エミリーちゃん!」
「楽しみね、ずっこけうどん。あたし、まだ食べたことないの」
「なにそれ?」
「え? だって今日はずっこけうどんでしょ?」
「ちがうよ。ぶっかけうどんだよ」
「ずっこけうどんって言ったじゃない」
「言わないよ」
「ひどいわ、マイキー! レディーに恥をかかせるなんて」
「聞き間違えたんだよ、きっと」
「言い訳しないで。あなたとは絶交よ。さようなら」
「そんなあ……」

(『Oh! Mikey』DVD 好評発売中)

2003年12月13日


東京物語

小津の命日で百回目の誕生日。今夜の衛星第二は『東京物語』。築地小劇場のスターだった東山千栄子はとても裕福な家庭で育ったそうです。

2003年12月12日


九ちゃん

日本初のアイドル坂本九。生きていれば今日で62歳。いかに夭逝だったかがわかります。

2003年12月11日


とりかえっ語

7日に二周年を迎えました。

こうなったら新たなミレニアムめざしましょう。900年以上楽しめます。

2003年12月10日


ルーカス

『トイ・ストーリー』から公開中の『ファインディング・ニモ』まで、ディズニーのデジタルアニメを制作してきたピクサーが、2005年の "CARS" を最後にディズニーと縁を切り、自前で配給を始めるようです。内紛続きのディズニーは踏んだり蹴ったり。

一方、ジョージ・ルーカスの ILM(Industrial Light & Magic)もデジタルアニメ制作部門を設立すると発表しました。考えてみればピクサーももとはILMの一部門。ルーカスがいなければ今の娯楽映画の大部分は存在しなかったわけで、毀誉褒貶あるものの、ルーカスは大した男です。

2003年12月9日


退屈する暇などない

起きてから寝るまで、目に映るすべてのものを観察する。どんな細部も見逃さず、とことん見る。見えない人は聞く。聞こえない人は触る。

なにしろタダです。タダで世界を観察できるなんて、きっと何かのご襃美にちがいありません。

2003年12月8日


ワークショップ終了

ワークショップ・ボリビア特集、無事終了しました。参加者のみなさんありがとうございました。ただ歩くだけでこんなに多彩な肉体訓練ができるなんてびっくりです。レクチャーの通訳があまりにお粗末で申しわけございません。心身ともにあれで精一杯でした。ロス・アンデスの日本公演を望む声が上がったのが嬉しかったです。私も観たい!

2003年12月7日


偶然という名の必然

今年の一月に劇団らせん館『サンチョ・パンサ』が参加したチリの国際演劇祭テアトロ・ア・ミル(Teatro A Mil)と六月に招聘されたマイアミ国際ヒスパニック演劇祭。どちらもマリア・テレサさん所属の劇団ロス・アンデスが参加済みと昨日知り、話が盛り上がりました。

人生の局面はそのつど偶然のたまもののはずですが、ふりかえると、どの瞬間も必然的である気がします。

2003年12月6日


冬の日

芭蕉の連句をアニメでやろう。川本喜八郎の呼びかけに35人が結集、DVDのオムニバス『冬の日』を制作。トップはあのユーリ・ノルシュテイン。12月13日からラピュタ阿佐ヶ谷で劇場公開されます。

まだ観ていませんが、観ていなくても、これはただごとではない事件だと断言できます。

2003年12月5日


ワークショップ

マリア・テレサさんの名古屋でのワークショップ無事終了。たった一日、三時間はあまりにも短すぎました。ボリビアでは一日八時間を二週間続けるのがふつうだそうです。でも、クーデターで政情不安定な国から来て下さっただけでもありがたい。金曜土曜は東京です。

2003年12月4日


まっすぐ立ったら気持ちいい

「紅白」「七面鳥」「クリスマス」。検索キーワードにも季節が感じられます。

ところで―――

「まっすぐ立ったら気持ちいい」を検索して、どうしようというのでしょう。「面白いひとこと」なんて知らないよ。「工藤静香」が妙に多いのが不思議です。

2003年12月3日


カーペンターズのクリスマス

70年代後半。この時期になると、アメリカABC制作のカーペンターズのクリスマス特番が放送されたものです。NHKだったと思います。

観るたび、聴くたび、ほっとしました。

2003年12月2日


国際演劇交流セミナー2003 ボリビア特集

6月のプエルトリコ、8月のスペインに続いて、今週ボリビアの劇団ロス・アンデスのワークショップが名古屋と東京で開催されます。今回も通訳します。

講師は劇団ロス・アンデスのイタリア人女優マリア・テレサ・ダル・ペロさん。92年からボリビアで活動しています。新大陸発見の寓意劇『コロン』、『ボリビアのユビュ』、世界の民謠を舞台化した『彼方から』、路上演劇、集団創作など、ユニークな劇作を数多く手がけている劇団。最新作は『イリアッド』。

名古屋 3日(水)18:00~21:00 ワークショップ&レクチャー
東京 5日(金)18:00~21:00 ワークショップ1
 6日(土)14:00~17:00 ワークショップ2
 18:00~21:00 レクチャー「ボリビア現代演劇への招待」

名古屋会場は芸術創造センター(地下鉄東山線「新栄町」)。東京はギャラリーX。JR総武線・都営大江戸線「両国」駅徒歩3分。シアターXの中にあります。

年齢・国籍・性別・演劇経験の有無、一切問いません。参加料は一日千円(参加・見学とも)。

お問い合わせは下記へどうぞ。

名古屋 ショウマン(担当/岡田・金子) Tel&Fax 052-733-0448
東京 日本演出者協会 Tel&Fax 03-3355-8287

2003年12月1日


一瞬と永遠

きのうが初日。函館のろるさんから「すばらしかった」とメールが届きました。今夜が最後。小島章司さんとイズラエル・ガルバンとの共演、多くの人に観ていただきたいです。概要はこの窓の下、「公演のご案内」をご覧下さい。

2003年11月30日


「ふんどし 画像 ロリータ 祭」

どこの誰が、どんな顔をして、こんな言葉を検索しているのか。想像したくもありませんが、つい気になってしまうのは、最後に「祭」とあるからです。

「女の子とやりたい」だの「男子小学生 着替え 画像」だの、ほかに調べることはないのか。情けない。ことごとくヒットしてしまう当サイトは、もっと情けない。

2003年11月29日


「じつは男」

いろんな言葉を検索して当サイトにいらっしゃる方がいます。それにしても「じつは男」ってのは何でしょう。「かっこいい用語」に至っては、検索エンジンも途方に暮れるというものです。

検索するときは複数のキーワードで絞り込みましょう。

2003年11月28日


サイト内検索

「あれどこで読んだっけ」というときは、この窓のすぐ下の「検索」をお試しください。当サイト内のすべてのファイル(拡張子が shtml, html, htm のもの)が対象です。

演劇、舞台通信、夕空の法則などはもちろん、倉庫の芸人列伝やTVコント大全、抑鬱亭日乘など、また意味なしBBSの過去ログもヒットします。

メインBBSは外部のレンタルサイトなので、残念ながら対象外です。

2003年11月27日


どこで聴くか

ポップスやロックの評論家はどこで音楽を聴いているのか。

「車の中が多いです」とピーター・バラカンが先日ラジオで告白していました。

いいのかそれでと一瞬思いましたが、考えてみると、車ほどふさわしい場所はない。『アメリカン・グラフィティ』の若者はみんな車で聴いていたのでした。

2003年11月26日


勧誘

宗教。新聞。保険。住宅。

見ず知らずの人に金を恵んでほしければ、香具師を見習って、少しは芸を身につけたらどうでしょう。

2003年11月25日


会話の練習

「ちょっとよろしいですか」
「何だ」
「お電話です」
「電話は取り次ぐなと言ったじゃないか」
「ゆうさんっていう方からです」
「知らないな」
「私たちの作者だそうです」
「イタズラ電話だろう」
「大事な話があると」
「忙しいんだ」
「そのことなんですが」
「何だね」
「私も暇じゃないからさっさと話を切り上げてくれないかって」
「新手の勧誘だ。そうに決まってる」
「ここまで書くのに20分かかったって」
「それじゃ何か、その、ゆうとかいう人が、私たちの話を書いているというのか」
「そうおっしゃってますが」
「証拠は」
「ありませんよ」
「もし本当なら、いまこうしてしゃべってるのも、そいつの仕業なんだな」
「おかしな話ですね」
「黙ってみよう」
「黙る?」
「いいから、しゃべるな」
「……」
「……」
「……」
「どうだ。黙れたじゃないか。もう二度と電話するなと伝えろ」
「……伝えましたけど」
「何だ」
「笑ってます。『……』はコピー&ペーストで済むからラクなんだよねって」
「じゃあ寿限無だ」
「じゅげむ?」
「忙しいのなら、寿限無を書く暇はあるまい。君、やってみたまえ」
「でも」
「どうした」
「知らないんです」
「何が」
「じゅげむ、じゅげむ、ごこーのすりきれ、ですよね」
「そうだよ」
「その先が」
「ダメだなあ君は。幼稚園でブームなんだぞ」
「幼稚園児じゃありませんから」
「減らず口を叩くな」
「これも作者のせいでしょうか」
「うるさい。その手には乗るもんか。よし、いくぞ。寿限無、寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助。どうだ」
「さすがです」
「もう二度とかけるな、そう伝えろ」
「……いってきました。大笑いしてます」
「今度は何だ」
「寿限無なんてその辺のサイトにいくらでも載ってるんだよー、コピーするだけだもんねー、お茶の子さいさい、ざまあみろ、ですって」
「私はもう疲れた」
「疲れさせたのも私だよ~ん、ですって」
「ちょっと待て。そいつが作者なら、私を元気づけるのも朝飯前のはずだな」
「どういうことです」
「疲れてもう二度と言いたくはないが、もう一度寿限無を言わせることだってできるはずだ」
「忙しかったんじゃないんですか」
「うるさい。まあ見ていなさい。寿限無、寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末」
「……」
「ほら見ろ」
「まだ途中ですよ」
「作者ならコピー&ペーストであっという間に全文書けるはずじゃないか。でも私は疲れた。疲れたからこれ以上続ける気はない。どうだ。私が私である動かぬ証拠だ。そう伝えなさい」
「……伝えました」
「もう電話には出るな」
「脅迫されました」
「脅迫?」
「おまえたちのセリフはもうすぐ終わるって」
「頭がおかしいんじゃないのか」
「最初のセリフを覚えているかって」
「最初のセリフ?」
「この会話のいちばん最初のセリフが何だったか覚えているのか、ですって」
「この会話ってどの会話だ」
「さあ。でも、たぶん、私がお部屋に来てからのことでしょう」
「君、何て言った」
「知りませんよ」
「いちいち覚えているわけがない。それがふつうだ」
「そうですよね」
「それじゃ何か、そいつは覚えているというのか」
「だそうです」
「聞いてきなさい」
「……聞いてきました」
「で?」
「『ちょっといいかな』だそうです」
「『ちょっといいかな』? 君はそんなしゃべり方しないね」
「しません」
「あ」
「どうしました」
「思いついた」
「何です」
「セリフだと言っていたな」
「ええ」
「なら、読んでる人がいるわけだ」
「読んでる人?」
「どこかにいるはずだ」
「え?」
「いた」
「どこに」
「目の前にいるじゃないか」
「まあホント」

「ねえ、そこの君」

 え?

「すまないけど、ちょっといいかな」

 え?

「いや、え、じゃなくて。君だよ君」

 え?

「だから、キョロキョロしてる君だよ」

 オレ?

「そうだよ。さっきから呼んでるじゃないか」

 うわ! 何だよこれ?

「話をきいてくれ」

 オレにしゃべってンの?

「だから、そうだって言ってるだろう」

 うっわー! なにこれ?

「いいから話をきいてくれないか」

 うっわー! スゲー! スゲーよ!

「君はボキャブラリーが少ないね」

 うわー! しゃべってる! しゃべってるよこいつ!

「バカだねこいつは」
「そうですねえ」

 スゲーよスゲーよ! マジかよ~!

「頼みがあるんだ」

 オレっスか?

「何度言わせるんだ。君だよ」

 オレっスかぁ~! マジかよ~!

「昂奮してますね。少し待ちましょうか」
「そうだな」

 スゲースゲー! あーなんでこーゆーときに限ってオレひとりなんだよー!

「そろそろ、いいかな」

 なンすか?

「いいみたいだね。あのね、頼みがあるんだけどね」

 なンすか?

「君、私たちのセリフ、読んでたね」

 読んでたけど……って、なんでオレ、パソコンに向かってしゃべってンだよ! ヤベーよ!

「ヤバくないよ」

 ヤベーよ!

「ヤバくないんだってば。いいから、ちょっと上にスクロールしてくれないか」

 え?

「上にスクロールしてくれ」

 できないッスよ。トップページだから。

「いや、画面全体じゃなくて、ここだよ、ここ。いま君が読んでる、この小さい窓」

 ここっスか。

「そう、そこ。一番上にスクロールしてくれ」

 しゃべってるよー!

「うるさい! いいからスクロールしろ」

 ……

「したか?」

 ……

「できたか?」

 ……

「姿が見えないな。どこに行ったんだ、あのバカ」
「あの」
「何だ」
「もしかしてですけど、スクロールしたから、私たちがいましゃべってるこのセリフ、読めないんじゃないでしょうか」
「そうか。このセリフはいまウィンドウの真ん中だ……。そこまでは気がつかなかった」

 したよ、スクロール。

「おお、来た来た。待ってたよ」

 もう、いいっスか?

「何て書いてあった」

 え?

「何て書いてあったか」

 何が。

「あ、そうか。話してなかったね。これはすまなかった。いやね、最初のセリフにね、何て書いてあるか、それを確認してほしくてね」

 最初のセリフっスか。

「うん。いちばん最初のところにね、何て……あ、行っちゃった」

 ちょっとよろしいですか。

「おお! 今度は早かったね」

 ちょっとよろしいですか。

「何だい」

 だから、ちょっとよろしいですか。

「何が」

 だから「ちょっとよろしいですか」って。

「あ、ああ、そうかそうか。それが最初のセリフなんだね」

 もういいっスか?

「ああ、もういいよ。すまなかったね。ありがとう」

 スゲーよ! マジかよー!

「で、何て言ってたっけ」
「何がです」
「だから、作者」
「あら、そういえば何でしたっけ」
「ちょっといいかな、だったかな」
「それですよ、それ。ちょっといいかな」
「ほら見なさい。作者だったらちゃんと覚えているはずじゃないか。仮に忘れたとしても、スクロールすれば確認できる。どうだ」
「お見事です」
「早く伝えなさい。一泡吹かせてやろうじゃないか」
「……伝えてきました」
「どうだった」
「いつまで電話待たせるんだって」
「それで」
「ちゃんと覚えていないのは、粗忽天皇と呼ばれるくらいそそっかしいからで、それを証明するために、わざわざ勘違いしたんですって」
「言い訳だな」
「読者が存在して、しかも話までできたのに、まだ自分が作中人物だと気がつかないのか、このうすらとんかちめ、ですって」
「あ」
「セリフをスクロールしてくれないかなんて頼む生身の人間が、どこの世界にいると言うのだ、このスカポンタン! ですって」
「そうか」
「今ごろやっと気がつきやがって、このボケナス! ですって」
「それじゃ私は、いや、私たちは、ゆうという人がでっち上げた架空の人物、そういうことなのか」
「当ッたり前だろ、この能無しの木偶の坊の唐変木のクルクルパー! ですって」
「最後のやつ、いま君が考えただろう」
「わかりました?」
「わかるよ」

2003.11.24  ゆう


語尾取り二周年

こんなに続くなんて、二年前には夢にも思いませんでした。こうなったら22世紀を目指そうじゃありませんか。

2003年11月23日


風をあつめて

ソフィア・コッポラの新作 "Lost In Translation" のワンシーンにはっぴいえんどが流れるというから、ソフィアもやってくれます。昨夜衛星第二で放映された『アウトサイダー』にワンカットだけ出ているらしいんですが、どこかしら。

2003年11月22日


語り下ろし

著者の養老さん自身認めているように、『バカの壁』の勝因はタイトルと〈語り下ろし〉の文体。

語り下ろし。この言葉、『大辞林』や『類語大辞典』(講談社)にさえ載っていません。

「そうか。時代は〈語り下ろし〉か。よし、こうなったら、下ろしに下ろすぞ」

あなたには無理です。養老さんだから売れたんです。

2003年11月21日


星空のふたり

Baby come as you are with just your heart and I'll take you in.
 (そのままおいで 僕が案内するよ)
You're rejected and hurt, to me you're worth what you have within.
 (ボロボロになった君 君の心があればいいんだ)
Now I don't need no superstar 'cause I'll accept you as you are.
 (スーパースターなんて要らないわ ありのままのあなたでいい)
You won't be denied 'cause I'm satisfied with the love you inspire.
 (心配しないで あなたの愛が嬉しいの)
You don't have to be a star to be in my show.
 (僕のショーでは君はスターなんかじゃなくていい)
You don't have to be a star, baby, to be in my show.
 (わたしのショーではあなたはスターなんかじゃなくていい)

Somebody nobody knows could steal the tune that you wanna hear,
 (君が聴きたい曲を誰かが盜むかも知れない)
So stop your running around 'cause now you've found what was cloudy is clear, oh honey.
 (遊び回るのはやめるんだ 雲は晴れたよ)
There'll be no cheering from the clouds, just two hearts beating out loud.
 (雲は励ましてくれない ふたりのハートの高鳴りだけ)
There'll be no parade, no TV or stage, only me till your dying day.
 (パレードもTVもステージもないの わたしだけよ あなたが死ぬ日まで)
You don't have to be a star to be in my show.
 (僕のショーでは君はスターなんかじゃなくていい)
You don't have to be a star, baby, to be in my show.
 (私のショーではあなたはスターなんかじゃなくていい)

Marilyn McCoo & Billy Davis Jr., You Don't Have To Be A Star (1976年全米No.1)

2003年11月20日


ガンジー

「何してるんですか」
「ガンジーだ」
「玄関で寝ないでください」
「無抵抗こそ、究極の抵抗なんだよ」
「邪魔なんですけど」
「いいから君も抵抗しないか」
「何に」
「引力だよ。分からないかなあ」
「分かりません」
「私はね、引力に無言の抵抗をしているんだよ。すごい力だよ、引力ってやつは」
「寝るなら部屋でどうぞ」
「こうなったら、負けるが勝ち、しかないじゃないか」
「こうなったらって……」

2003年11月19日


BBS

BBSについて考えていたのでした。

Bulletin Board System。当サイトにはふたつあります。

たいてい〈掲示板〉と訳されている。では何かが「掲示」されているかというと、そんな例はむしろ稀で、ほとんどがどうでもいい井戸端会議。当サイトも例外ではなく、ならば〈言葉の無政府主義〉でいこうじゃないかと、誤字脱字勘違いなど、あらゆる粗忽ぶりを競い合っています。もちろん〈掲示〉の役割もありますが、狭義の Bulletin Board System ではないのは明らか。

で、命名します。

Blind Bullet Socots。

めくらめっぽう、見境のない、でも弾丸のように速い粗忽。Socots は Scots の書き間違いでもあります。

2003年11月18日


雲と麦

「真っ白の雲と麦の穂。人が幸せになるのに、他に何にもいらないわ」

ゾフィアさん

(昨夜 22:00-23:30 のNHK・BS2「死の国の旋律 アウシュビッツと音楽家たち」最後の言葉)

2003年11月17日


生きるのは健康に悪い

あらゆるメディアの健康関連の広告が伝える真のメッセージは、畢竟これに尽きるのではないでしょうか。

2003年11月16日


今日のごあいさつ

「今日のごあいさつ、まだですか」
「うん」
「もうお昼ですよ」
「カブールはまだ7時半だ」
「カブール?」
「アリゾナはまだ『今日』ですらない」
「ネタ切れなんですね」
「よくわかるね」
「誰でもわかります」

2003年11月15日


覆面座談会

「芸能レポーター覆面座談会、さっそく始めましょう。まずAさん」
「……」
「Bさん、いかがでしょう」
「……」
「Cさん?」
「……」
「覆面がキツすぎたようです。ではまた来年」

2003年11月14日


ワークショップ

ボリビアの劇団ロス・アンデス Los Andes のワークショップが開催される予定です。予定。いやな言葉です。こんな時に限って政権転覆ってことはないじゃないか。

12月3日が名古屋、5日と6日が東京。詳細は分かり次第ご案内します。

2003年11月13日


雨の西麻布

とんねるずにそんなタイトルの歌があったと思いますが、昨夕の西麻布は小雨、根津美術館界隈は人影もまばらで、時間があれば一時間ほど散歩したいくらいでした。プラダビルの東隣がいつの間にか更地。何が建つのでしょう。

2003年11月12日


冬の夜

みなさん今夜は静かです
薬鑵の音がしてゐます
僕は女を想つてる
僕には女がないのです

それで苦労もないのです
えもいはれない弾力の
空気のやうな空想に
女を描いてみてゐるのです

えもいはれない弾力の
澄みつた 沈黙
薬鑵の音を聞きながら
女を夢みてゐるのです

かくて夜は更け夜は深まつて
犬のみ覚めたる冬の夜は
影と煙草と僕と犬
えもいはれないカクテールです

2

空気よりよいものはないのです
それも寒い夜の室内の空気よりよいものはないのです
煙よりよいものはないのです
煙より 愉快なものもないのです
やがてはそれがお分りなのです
同感なさる時が 来るのです

空気よりよいものはないのです
寒い夜の痩せた年増女の手のやうな
その手の弾力のやうな やはらかい またかたい
かたいやうな その手の弾力のやうな
煙のやうな その女の情熱のやうな
えるやうな消えるやうな

冬の夜の室内の 空気よりよいものはないのです

中原中也「冬の夜」(1933)
河上徹太郎編『中原中也詩集』(角川文庫)より

2003年11月11日


自由劇場

劇団四季の新しい劇場「自由劇場」が、浜松町に明日オープンします。

劇場の名前の由来は、1909年に市川左團次と小山内薫が設立した自由劇場。入口には、築地小劇場のシンボルマークのぶどうの房のレリーフ。

築地小劇場は東山千栄子や山本安英、岸輝子、村瀬幸子を輩出。広島から出てきたばかりの杉村春子も短期間所属していました。照明と効果を担当していたのは和田誠の父、和田精。経営は浅利慶太の父、浅利鶴雄。

話は変わって、バルセローナの「自由劇場」 Teatre Lliure。2001年から芸術監督をつとめ昨年歿したジョセプ・モンタニェスの一周忌をかねた追悼式典が今日催されます。

2003年11月10日


こんな時代だからこそ

広告でよく見かけるフレーズですが、どんな時代なのでしょう。

2003年11月9日


今日のニッポン

日本語が読める世界のみなさまへ。

今日は立冬なのに満月です。若尾文子が古稀を迎えました。明日の衆議員選挙を控えて国生さゆりは離婚です。曙が相撲協会を脱会し大晦日にK-1でボブサップと対決するのが原因でしょう。

言葉遣いがヘンですか。16時間睡眠の賜です。

2003年11月8日


グレイトなことだわ

「女の子はね、他人の身体にアグレッシブなコンタクトをしちゃいけないと教えられて育てられるでしょ」
「オー・マイ・ゴッド、ブラッディすぎるわ」
「グレイトなことだわ」

『キル・ビル』のパンフレットに載っているユマ・サーマンのインタビュー。グレイトな喋り方です。

2003年11月7日


イタリアにあるピザ

という言葉を検索して当サイトにいらっしゃった方がいるようです。イタリアにあるピザ。なかなか思いつくものではありません。

そして、毎度のことですが、当サイトは何のお役にも立てなかったにちがいなく、すこぶるがっかりなさっていることでしょう。

人をがっかりさせることにかけては人後に落ちません。

2003年11月6日


ニコルソン

「どうかしたんですか」
「え? ああ、ちょっとね」
「顔色が」
「ニコルソンは来ていないだろうね」
「ニコルソン?」
「君、ちょっと玄関見てきてくれないか」
「ニコルソンって、ジャック・ニコルソンですか」
「うん」
「いるわけないでしょう」
「想像してみなさい。玄関を開ける。ニコルソンが、あの顔で、にっこり笑って立っている。こんなに恐ろしい光景があるか」
「想像しないでください」

2003年11月5日


公演のご案内

きのうお知らせしました『一瞬と永遠』の概要です。ご覧のウィンドウのすぐ下、「公演のご案内」をクリック。

2003年11月4日


紫綬褒章

小島章司さんが紫綬褒章を授与されることになりました。小松原庸子さん、長嶺ヤス子さんに続いてフラメンコ界で三人目、バイラオール(男性舞踊家)としては初めてです。目下、月末の公演『一瞬と永遠』に向けて稽古中。オフィシャルサイトがリニューアルオープンすべく休止しているので、概略をご案内します(僭越ながら制作協力をしています)。

日時 11月29日(土) 17時開演
    11月30日(日) 15時開演
場所 東京・芝 メルパルクホール
お問合せ 03-3498-0923

第一部は1966年5月のマドリードの稽古場〈アモール・デ・ディオス〉へのオマージュ、第二部はイズラエル・ガルバンとの競演。アバンギャルドなフラメンコが話題の30歳の気鋭のバイラオールです。

2003年11月3日


15時55分

この「ごあいさつ」、いつも早朝に書いているのですが、今日はごらんの時刻。こういう日もたまにはあるってことです。ゼミの卒業生二人と久しぶりに会い、楽しい時間を過ごしました。

2003年11月2日


みんなまとめておめでとう

きのう触れた服部克久さん、今日が67歳の誕生日。

1936年生まれ。ロルカが死んで、アントニオ・ガデスが生まれた年。あ、逢坂剛さんも今日で還暦なんですね。ガデスは今月14日。ナルシソ・イエペスも同じ日だったのか。

2003年11月1日


カバーはオリジナルを越える

何度聴いたか知れないフランク・シナトラと娘ナンシーのデュエット「恋のひとこと」 Something Stupid。おととい発売のアルバム『Longtime Favorites』で竹内まりやが大滝詠一とカバー。

オリジナルに愛と敬意を表しつつそれを越える。カバーはこうでなくっちゃいけません。服部克久のアレンジがまたすばらしい。

2003年10月31日


巨大な島国

来年1月5日からアメリカへの入国者は指紋の写真を撮られるとAPが伝えています。全米115の空港と14の港にスキャナーを設置。

ビジネスだろうが学生だろうが旅行客だろうか、およそ2,400万人の入国者を十把一絡げ、「テロリストのリストと照合する」というのですから、〈巨大な島国〉はますます島国化していくのでしょう。

2003年10月30日


OpenOffice

編集装置 editor で書き、文字処理装置 word processor で編集する。

本末転倒を続けてはや7年。これもひとえにワープロソフト、とくに Word が重すぎるから。

そこで、Word と互換性がある OpenOffice.org 日本版 Ver. 1.1.0 の Writer を使ってみました。軽いよ。サクサク動くよ。まだエディタには及ばないけれど、もう Word には戻れない。

Linux 同様オープンソースだから無料。爆発的に普及するのではないかしら。

2003年10月29日


何を求めて 13

18日から24日までの検索キーワード一覧です。364種。

ジュリーがダントツ。『キル・ビル』効果でしょう。

323位「家康 恥ずかしい時」。どうしたらこんな組み合わせが思いつくのか。ためしに Google で検索したらヒットはたった一件。夕空の法則でした。

2003年10月28日


バック・トゥ・ザ・フューチャー in 粗忽長屋

「えー、ごめんください」
「ああ熊さん、待ってたよ。まあお上がり」
「へえ」
「呼び出してすまないね。わざわざ来てもらったのはほかでもない。お前さん、今日が何の日か、覚えてるかい」
店賃は月末にかみさんが」
「店賃はいいんだよ。毎月おかみさんが届けてくれる。しっかり者だ、お前さんにはもったいない」
「しっかりしてるでしょ。あれはね、しっかりが着物きて歩いてるようなもんで。こないだもナイフで背中刺したのにケロッとした顔で丼飯三杯」
「刺すんじゃないよ。刺しちゃだめだよ」
「で、ご用ってのは」
「いやね、うちの長屋に住んでもらって十年、お前さんのような働き者に住んでもらって嬉しいよ、嬉しいけど、ひょっとして、ひょっとしてだよ、十月二七日が何の日か知らないんじゃないかと。いや、疑ってるんじゃあない。誤解しないでおくれ」
「仏壇の日」
「なにそれ」
「さっき調べたンです。ネットで」
「仏壇なんてどうでもいいんだよ」
「じゃあ何の日です」
「『シカゴ』のリハーサル」
「ふうん」
「ふうんって、お前さんわかってるのかい。1974年の今日ですよ、ボブ・フォッシーの『シカゴ』のリハーサルが始まったのは。チタ・リヴェラにグエン・ヴァードン、ジェリー・オーバックがいたね。ところがボブはほどなくして入院、舞台の初日は遅れに遅れて76年6月3日だ」
「へえ」
「そんなことも知らない人をうちの長屋においとくわけにはいきません。荷物まとめてとっとと出ていっとくれ」

追い出された熊さん、中川三郎と名乗ってメリケンに渡りましてニューヨーク市立大学に通い、タップダンスやモダンダンスを学んでブロードウェーの劇場に日本人ダンサーとして初めて出演いたします。帰国後はジルバなどダンスの大衆化に貢献、「戦前最高のタップダンサー」ととして令名を馳せたという、時代の脈絡てんでバラバラのおなじみ「バック・トゥ・ザ・フューチャー in 粗忽長屋」の一席でございます。

2003年10月27日


PICASSO CLASSIQUE

そんなわけでって、どんなわけかしりませんが、昨日はピカソの誕生日で、今年は没後三十周年にあたるわけです。

7月19日の「舞台通信」でお伝えしたとおり、上野の森美術館で 「PICASSO CLASSIQUE 1914-1925」 が開催中。

「もういいよ、ピカソなんて」。まあそうおっしゃらず。目玉は『パラード』『三角帽子』『プルチネッラ』の舞台装置と衣裳デザイン。

芝居やってる人。やりたい人。やりたくはないけど観るのは好きな人。まるで興味ないけど知ったかぶりしたい人。「芝居なんかやってないで少しは働け」と親に小言をいわれてる人。その親。「芝居って、ディズニーのアイスショー?」な人。とにかく見なさいってこった。

2003年10月26日


ブレヒトの21世紀

東京両国・シアターχで開催中のブレヒト祭

来週31日(金)午後7時からシンポジウム「ブレヒト演劇と演劇文化の可能性」があります。パネラーはハンス・T・レーマンと岩淵達治、谷川道子。レーマンはハイナー・ミュラー研究者で『ポストドラマ演劇』の著者。1999年、静岡のシアターオリンピックスでもシンポジウムを行いました。

2003年10月25日


『ドラゴン・トリロジー』

マドリード郊外、エル・アラモの古い撮影所で上演されたロベール・ルパージュの『ドラゴン・トリロジー』。あまりの美しさに観客が随喜の涙を流したと、「エル・パイス」のロサーナ・トーレス記者が報告しています。

ピーター・ブルック『マハーバーラタ』、ルカ・ロンコーニ『狂乱のオルランド』、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー『タイタス・アンドロニカス』、ジョセプ・マリア・フロタッツ『シラノ』、タデウシュ・カントール『死の教室』に比肩するとも。

観客のひとり、ヌリア・エスペルも昂奮。来年はルパージュ演出の舞台に立つというから、こちらも楽しみ。

2003年10月24日


渡辺美佐子

71歳の誕生日です。

2003年10月23日


自伝

この人の自伝が読みたいと世界が熱望しているのがフィデル・カストロとウディ・アレン。

フランクフルト・ブックフェアでいろんな憶測が飛び交っていますが、カストロは早ければ2004年春にマドリードのデスティーノ社が出版。アレンは「金次第」、イギリスのハーパー・プレスが100万ドルのオファーをしたそうです。

2003年10月22日


新・枕草子

秋は、芝居。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、芝居小屋へ行くとて、三人四人、二人三人など、飛び急ぐさへあはれなり。まいて、恋人などのつらねたるが、遅れちやうよと怒鳴るは、いとをかし。あかり消え果てて、客入れベルの俳優の声など、はた言ふべきにあらず。

2003年10月21日


メキシコのグアナフアトで第31回国際セルバンテス祭 Festival Internacional Cervantino、スペインはマドリードで第20回秋の芸術祭 Festival de Otoño が開幕しました。

セルバンテス祭は37ヶ国から2,500人が参加。芸術祭の目玉はアルメニア、イラン、インド、アフガニスタンなどの音楽。演劇ではロルカの『観客』をアンダルシアの劇団アタラジャがアルカラ・デ・エナーレスのセルバンテス劇場で上演、のはずだったのに、二階正面席はひび割れるは、手摺の石膏は剥がれるは、シロアリにやられるはで劇場閉鎖、市立中央劇場での公演のみになりました。「あいかわらずやってるな、スペインめ」という感じです。

2003年10月20日


何を求めて 12

今月の検索キーワード一覧。3日から11日で気になるのは262位の「注文++宅配ピザ++ドイツ語」。ドイツ語でピザの注文をしたいこの人はどこにいるのか。ドイツ語圏なら、その辺の人に訊くのがてっとりばやいはず。

11日から18日では325位の「生きたまま++金魚 妹」。「妹」は大丈夫でしょうか。

2003年10月19日


スタンリー・ドーネン

引退してはや二十年、16日に開幕したバレンシア国際映画祭の審査委員長を務めています。『雨に唄えば』公開50周年、往年のハリウッドミュージカルの特集あり。アルフレード・ランダのレトロスペクティヴも。

2003年10月18日


渡辺えり子

来週25日(土)、長久手町文化の家に初登場。『萩家の三姉妹』。作演出は永井愛。

24日(金)は燐光群の『CVR』。もちろん両方観ますとも。

2003年10月17日


ボスの日

明日17日はボス(上役)の日だそうです。

ブッシュとタランティーノが来日、道路公団藤井総裁は聴聞会での爆弾発言を予告。なにか関係があるのでしょうか。

2003年10月16日


品川心中

「なんだいお前さん、さっきからセツコ、セツコって」
「ハァ」
「どこの女だい」
「ハァ」
「まさか、圓蔵師匠のおかみさんとできちまったんじゃないだろうね」
「そんな物好きがいるもンか」
「よしなよ。バチがあたるよ」
「それに『うちのセツコが』って、円鏡時代のギャグじゃねえか。誰も覚えちゃいねえよ」
「いいんだよそんなことは。ひょっとして、ひょっとしてだよ、原節子のことかい」
「おうよ」
「きのうの『晩春』だろ」
「いい女だ、つくづく思ったね」
「そりゃそうだよ。女のあたしだって、あんなにきれいな人がこの世にいるのかって思うくらいだよ」
「ちょいと留守にするから、あとは頼む、な」
「留守にするって、どこ行くんだい」
「ニューヨーク」
「ニューヨーク? ニューヨークって、あの、メリケンのニューヨークかい」
「あたりめえだ。ベトナムにニューヨークがあってたまるか」
「うるさいよ」
「ちょっくらリンカーン・センターに行ってくるから、な」
「品川よりずっと先だよ」
「あたりめえだっていってるだろうが」
「なにしに行くんだい」
「そりゃおめえ、オズだ」
「魔法使?」
「ギャグがいちいち古いよおまえは。安二郎。36本一挙上映してるってのに、指くわえてられるか」
「どこへでもとっとと行っちまえ」
「おう、行ってくらぁ、このくそババア」
「グランド・ゼロでカッポレ踊ったりするんじゃないよ」
「うるせえ」

カラスカァで夜が明けますてェと、品川沖に土左衛門が浮んでる。長屋の者がかけつけてみるとこれが熊さん。「熊の野郎、泳いで行くつもりだったんだよ」「店賃半年ためてたって話だ」。それを知ったおかみさんも首を吊る。おなじみ、品川心中 in ニューヨークの一席でございます。

2003年10月15日


新しき土

今夜24時から衛生第二で放送される日独合作『新しき土』(1937)。国策映画の第一号。ドイツ語タイトルは『サムライの娘』 Die Tochter des Samurai。川喜多かしこの厳命により一般公開が禁じられてきた作品です。

四方田犬彦『日本の女優』によれば、監督のアーノルト・フィンクは山岳映画の専門家で、レニ・リーフェンシュタール主演の『SOS氷山』(1933)でゲッベルスに「本物のナチだ」と賞賛された人。主演は原節子。当初フィンクは田中絹代で撮るつもりでした。

助監督は伊丹万作。国策映画に難色を示したものの、海外進出のきっかけになるからと川喜多長政に説得されてしぶしぶ承知。撮影は難航、結局伊丹版とフィンク版の二本を制作、両方とも日本とドイツで公開されました。

制作費75万円。10万円がふつうだった当時にしては破格。

2003年10月14日


秋の夜空

これはまあ、おにぎはしい、
みんなてんでなことをいふ、
それでもつれぬみやびさよ
いづれ揃つて夫人たち。
  下界は秋の夜といふに
上天界のにぎはしさ。

すべすべしてゐるの上、
金のカンテラいてゐる。
小さな頭、長い裳裾
椅子は一つもないのです。
  下界は秋の夜といふに
上天界のあかるさよ。

ほんのりあかるい上天界
き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ
上天界のの宴。
  私は下界で見てゐたが、
知らないあひだに退散した。

中原中也「秋の夜空」(1929)

2003年10月13日


アメナバル撮影開始

新作『沖へ』 Mar dentro。自身の安楽死を撮影させテレビで放送させたラモン・サンペドロの実話の映画化。

フィクションが太刀打ちできない話をどう料理するのか。脚本はアメナバルとマテオ・ヒル。主演ハビエル・バルデム。

2003年10月12日


メルセデス・サンピエトロ

昨日のごあいさつの続きです。

マリサの後任に決まりました。56歳。外国映画の吹替え、とくにキャンディス・バーゲンやジェーン・フォンダ、ダイアン・キートンの声で有名。故ピラール・ミロ監督のお気に入りの女優です。『しあわせの鳥』 El pájaro de la felicidad (1993)は良かった。

副会長はアグスティン・アルモドバル。

2003年10月11日


マリサ・パレーデス

映画アカデミー会長をつとめて三年。辞表を提出しました。女優業に専念するため。

おつかれさま、マリサ。

2003年10月10日


『演劇365』

今日創刊の演劇雑誌。白夜書房の月刊誌『オーディション』別冊という形で、表紙は毛皮族だそうです。

「だそうです」。まだ手許に届いていないもので。

2003年10月9日


十三夜

シェイクスピアではありません。あれは十二夜。

今夜の月。仲秋の名月(十五夜)と、これを見ないと、片見月といって、縁起が悪いとか悪くないとか。

太平洋側は雨らしい。残念。

2003年10月8日


座頭市

北野映画最大のヒットになるのも当然だと、観て納得しました。スクリーンで観ないと後悔すること間違いなしです。

ハリウッドの凡百の自称監督たちへ。CGはこういうふうに使うものだ。

2003年10月7日


四年目へ

サイト開設から今日で三年が経ちました。

飽きっぽいのにこんなに続くとは夢寐にも思いませんでした。これもひとえにみなさんのおかげです。

のほほんと四年目へ。これからもどうかよろしく。

2003年10月6日


心と意志

坂手洋二の書き下ろし『心と意志』を地人会が上演します。渡辺美佐子や平田満を坂手自身が演出。

テーマは1989年。その背景には68年があるようです。

2003年10月5日


何を求めて 11

今月19日から26日までの検索キーワード一覧です。320種類。

78位。旅行でしょうか。

2003年10月4日


会話の訓練 4

「使えないなあ、このパソコン」
「どうした」
「ホームページがね、不正アクセスって出るからさあ」
「常駐ソフトをクローズして、デコーダでスプールしてみたら」
「やってみたけど、ランタイムエラーなんだよ」
「エスケープシークエンスが間違ってるんじゃないの」
「バイナリはエンコードしてるよ」
「じゃ、エクスポートのプロパティが凍ってるんだろ」
「修正モジュールにはパッチ当ててるけど」
「だったらインストーラがホットスワップだな」
「プロトコルをブートすればいいわけ?」
「あ、それヤバい。先にアーキテクチャのコマンドを最大化」
「カレントディレクトリは?」
「システムをレジストリすれば参照モデルが出るから、それをクリツク」
「あれ? シリアルナンバーがコンテンツになってる」
「それってワクチンソフトじゃん。ワーム入れてる?」
「ログをアカウントに設定して、アドミニストレータをサーバにアップしてるけど」
「それでもだめ?」
「ずーっとネゴシエーション」
「OSのバグだな」
「買い換えなきゃだめかな」
「今どきマルチメディアがオーサリングじゃだめだよ。デジタルコンテンツがモバイルのでなきゃ」
「うん。ありがとう」

2003年10月3日


また寝らんなくなっちゃう

春日三球・照代の地下鉄漫才。ずっと東京の地下鉄の話だと思っていたら、じつは名古屋なのだそうです。

1957年、名古屋~栄間に開通。新宿末広亭に勤めていた名古屋出身の大野善弘さん(柳家小さんのマネージャー)が、中学高校時代に工事の現場を見ていた。ところが電車の姿を見ないまま開通。線路は地上に出ていない。 駅は三つ。どうなっているのか。

「乗り物アラカルト」というネタをやっていた三球・照代に、大野さんが地下鉄ネタの原稿を渡したのがきっかけ。

今月から連載が始まった『東京かわら版』の春日三球「また寝らんなくなちゃう」での証言。しょっちゅう乗っている路線なのにちっとも知りませんでした。

で、どこから入れたんでしょう。また寝らんなくなっちゃう。

2003年10月2日


自然をつかむ7話

自然にはふしぎなことがたくさん。生態系を観察すると、きちんとした法則があるようにみえます。でも、空の雲のかたちが毎日ちがうように、気圧配置もプレートテクトニクスの大陸移動も、エルニーニョも、同じパターンが周期的に繰り返されるわけではありません。現れるたびに「個性」が発現する。自然との出会いは一期一会。法則だけでは説明がつかない。自然は「歴史物語」の中にあります。

評判の『自然をつかむ7話』(岩波ジュニア新書)で木村龍治が述べていることです。「奇術の楽しみ」「豆腐が語る創世記」「茶碗の湯に宇宙をみる」、タイトルをみただけでもワクワク、読めばもっとワクワク。宇宙を空間として考えることに意味がないという話は目からウロコが落ちます。『2001年宇宙の旅』のモノリスの謎まで解いてくれる。

宇宙や自然のふしぎ。小中学生につよくお勧めできる本です。

2003年10月1日


夢路いとし・喜味こいし

「人間国宝、あげとくべきだったよね」と、昨日の「ラジオビバリー昼ズ」の高田文夫。同感です。

2003年9月30日


何を求めて 10

今月19日から26日までの検索キーワード一覧です。516種類。

2位は当然として、なぜ「御法度」が1位なのでしょう。

196位の「悔し涙 哲学者」と479位の「砂場 アデュー」が気に入りました。

2003年9月29日


大辻司郎

胸に一物、手に荷物

(大正15年/昭和元年)

2003年9月28日


サイード

訃報記事で、バレンボイムとともにアストゥリアス皇太子賞を受賞したことを報じたのは、調べた限り、北海道新聞だけでした。

West-Eastern Divan Orchestra の本部はセビーリャにあります。

2003年9月27日


マノロとアントニオ

きのうネルーダのお知らせを書いて、はたと気づきました。

今年はマノロ・カラコール歿後三十年、アントニオ・マイレーナ歿後二十年でもあるのです。といっても、文学者ではありません。フラメンコの偉人。

2003年9月26日


パブロ・ネルーダ

歿後三十年記念行事が23日チリで催されました。来年は生誕百周年。

20 Poemas de Amor y una canción desesperada (1923)はスペイン語の勉強にもってこいです。もちろん愛の告白にも。

2003年9月25日


ミツバチのささやき

第51回サン・セバスティアン国際映画祭で公開30周年記念上映されました。

「公開前に買い手がつかない映画を撮らせてくれない今の検閲に較べたら、フランコ時代の検閲をくぐりぬけるのはわけないことだった」と、会場でエリセが語ったそうです。

2003年9月24日


何を求めて 9

今月14日から19日までの検索キーワード一覧です。448種類。

201位と413位には笑いました。404位は、調べてどうしようというのでしょう。

2003年9月23日


装飾古墳

福岡県飯塚市周辺は古墳銀座。橘塚遺跡のシンプルで広い石室も見事だけど、王塚古墳の装飾は、ちょっとどうかと思うくらいすごい。ピカソが見ていたら夢中になったに違いありません。

2003.9.22 古屋雄一郎


偶然という必然

偶然の出会いと人はいうけれど、同じ空間と時間の一点を目指していたからこそ交わるのだから偶然は必然なのだ、と、初めて訪れた飯塚市で実感しています。

2003年9月21日


リョク

「どうしたんですか」
「困ったもんだよ、リョクには」
「え?」
「老人力。赤瀬川源平の」
「あ、ありましたね。ベストセラーになった」
「あれ以来、素直にリョクは使えなくなったはずなのに、氾濫してるじゃないか」
「そうなんですか」
「ある大学のキャッチコピーは〈国際力〉だ」
「それが」
「それがって、じゃあ聞くが、君の国内力はどうなってる」
「国内力って」
「わからないだろ? 国内力がわからないのに、国際力がわかるはずないじゃないか」
「はあ」
「もう、曖昧力全開って感じだな」

2003年9月20日


大辻司郎

ハラハラと落つる涙をコワキに抱え

(大正15年/昭和元年)

2003年9月19日


きのうの「ごあいさつ」の訂正

きのう告知した『グレン・グールド27歳の記憶』、放送日は今日の深夜24時の間違いでした。昨夜観たらウディ・アレンを追ったドキュメンタリー『ワイルド・マン・ブルース』(1997)をやっていてびっくり。これはこれで面白かったです。

2003年9月18日


グレン・グールド

ドキュメンタリー『グレン・グールド27歳の記憶』。今夜24時、衛星第二。

2003年9月17日


蓼莪

蓼蓼物莪  すくすく伸びゆけば
匪莪伊蒿  秋はいつしか醜草
哀哀父母  いたまし父母は我を生み
生我劬労  かくも苦労し給いしを

『詩経』(目加田誠訳)

2003年9月16日


CVR

今年の読売演劇大賞最優秀演出家賞(坂手洋二)を受賞した燐光群『CVR』が全国14ヶ所を巡演します。愛知は長久手町文化の家。車で5分。ありがたい。

去年の読売文学賞戯曲部門賞受賞作、『屋根裏』が10月12日(日)22時から教育テレビ「芸術劇場」で放送されます。

早稲田大学演劇博物館の企画展「燐光群の20年」もいよいよ明日から。

2003年9月15日


何を求めて 8

今月8日から14日までの検索キーワード一覧です。613種類。

携帯電話を持っていないので35位には驚きました。

2003年9月14日


維新派

明日の夜10時、教育テレビ「芸術劇場」で、維新派の『nocturne』が紹介されます。内容については、番組のサイトの「放送予定」をクリック、9月14日の「放送内容の詳細」をクリック。

で、そこをみると、真ん中あたりに、「1971年の創立から32年、常に野外にこだわって作品を作ってきた維新派が」と書いてあって、別に間違いじゃないんですが、室内でもやってます。1994年の『ヂャンヂャンオペラ★青空』。法政大学の学生会館でした。これには度肝を抜かれました。以来、毎年秋、維新派を見るためだけに大阪に出かけています。

今回の『nocturne』はというと……度肝は抜かれませんでした。ただし、音がいい。とくに水たまりのシーン。劇場でしか体験できない水の音。『nocturne』に限らず、維新派の〈ヂャンヂャンオペラ〉は、リズムがすべてを律する舞台でもあります。

2003年9月13日


藤山直美

名鉄ホール『サボテンの花』の直美が地元紙で絶賛されているそうです。「そうです」というのは、読んだ人からの又聞きだから。

もとはフランスの戯曲ですが、1969年にウォルター・マッソーとイングリッド・バーグマン主演で映画化されてヒット。でもバーグマンにコメディは荷が重かったようで、そこそこのヒットだったようです。

2003年9月12日


天丼

東京新橋の「橋善」が店を閉めてたなんて。きのう雑誌で読むまで知りませんでした。あの山のような天ぷらはもう食べられないのか。

「銀座天國」は健在だそうで、ほっとしています。

2003年9月11日


パスネット

久しぶりに上京したら、私鉄全線共通のパスネットというのが発売されていて、千円のを一枚買ったのですが、きっちり千円分しか使えない。

未来への投資には多少のボーナスがつくべきだと思うのですが。

2003年9月10日


「世界でいちばんパーフェクトな町」

パーフェクトに一番も二番もなかろうとツッコミたくなりますが、新聞報道によると、そう発言したらしいから、しょうがない。ヴェネチアからの帰りに訪れ、ジャズを演奏、きのう名誉市民賞を授かりました。

町はバルセローナ。受賞者は、マンハッタンでしか生きられないユダヤ人クラリネット奏者。

2003年9月9日


何を求めて 7

今月1日から7日までの検索キーワード一覧です。590種類。

447位は、何を調べたいのでしょう。

2003年9月8日


個人主義

近頃は、自分自分といって、どんな勝手なことをしたって構わないという風潮があるけれど、自分の自我を尊重するといいながら他人の自我はちっとも認めようとしない、これは不公平な話です――と、学習院で漱石が講演したのが大正3年。

私たちは今どの時代に生きているのでしょうか。

2003年9月7日


アミナ・アラウイ

古い詩歌を今に蘇らせるモロッコ人歌手。てらいのないシンプルなアレンジと歌唱。そのシンプルさを獲得するのに、いったいどれほど複雑な方法を経たのでしょう。ラジオで聴いただけですが、スペインのマリーア・デル・マル・ボネに似た精神を感じます。

来日中。

2003年9月6日


ジョー・ラケル・テハーダ

生きていれば今日で57歳のフレディ・マーキュリーがイスラエル出身なのは有名。だけど、63歳になるラクエル・ウェルチの父がボリビア人で、洗礼名が Jo Raquel Tejada だったとは知りませんでした。

先週末ロサンゼルスで車を運転中に事故に遭い、片腕を骨折。でも元気だそうで、安心したよ、ラクエル。

2003年9月5日


詩経

知其一 莫知其他
(世間の人は物事の半面しか知らない)

采菲、無以下體
(青菜や大根は上の方が味があっておいしい、下の方は苦いから採らない。人をみるときも長所を評価し、短所はあれこれ批判しない)

詩経の言葉に感じるところが多くなりました。これが「年をとる」ということなのでしょうか。

2003年9月4日


サイト手直し

昨晩から今朝にかけて、アクセスできないページがいくつかあったかと思います。ファイルの拡張子を html から shtml に変更する作業をしていたためです。作業はほぼ完了しました。もしまだ表示がおかしいページがございましたら、掲示板にひとことご報告下さい。

2003年9月3日


何を求めて 6

8月24日から31日までの検索キーワード一覧です。530種類。

「手紙」「種類」「寐」「作家」「パーティー」など、短い単語が目立って増えてきました。「掴めない」ってのはなんだ。「珍しい」を検索してどうしようというのでしょう。

いちばん驚いたのは「of」です。

2003年9月2日


ア、秋

「秋は、ずるい悪魔だ。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。僕くらいの炯眼の詩人になると、それを見破ることができる。家の者が、夏をよろこび海へ行こうか、山へ行こうかなど、はしゃいで言っているのを見ると、ふびんに思う。もう秋が夏と一緒に忍び込んで来ているのに。秋は、根強い曲者である。」

太宰治『ア、秋』

2003年9月1日


舞台動物

小説『容疑者の夜行列車』で今年の伊藤整賞と谷崎潤一郎賞を受賞した多和田葉子さんの新作戯曲『舞台動物』、らせん舘が稽古の真っ最中です。

公演は11月12日から15日まで、ベルリン市ノイケルン区の Werkstatt der Kulturen(ベルクシュタット・デア・クルトゥレン)で。

2003年8月31日


三千万円

荷風が清書した『東綺譚』の原稿が先月神田でオークションにかけられました。最低落札価格三千万円。「高すぎる」という周りの声に「金があれば私だって買う。絶対落札される」と意味もなく昂奮、ところが蓋をあければ落札者なし。

投機目的ですら買い手がつかないのは意外でした。

2003年8月30日


睡眠力

午後1時から翌日の午前5時半まで昏々と眠り続ける力を世界平和に役立てたいと思うのですが、何をどうすればいいのかわからず、途方にくれています。

2003年8月29日


セブン・チャンス

明日の17時15分から衛星第二でキートンの『セブン・チャンス』(1925)。『ターミネーター3』より手に汗握れます。

〈立ち止まれば殺される=走りおおせた者は襃美がもらえる〉というのがキートン映画の主題ですが、『トムとジェリー』『チキチキマシン猛レース』などハンナ・バーベラの一連のアニメの源流はキートンではないでしょうか。

2003年8月28日


二種類の人間

「人間には二種類ある」
「あ、よく言いますよね、成功する人しない人とか」
「そうじゃなくて」
「ちがうんですか」
「もっと根本的なことだ」
「なんです」
「分類される人と、されない人」
「え?」
「君はどっち?」
「考えたこともありませんけど、どっちかっていうと、されない人です」
「じゃあ君は、『分類されない人』に分類されるじゃないか」
「先生はどっちです」
「『二種類に分けない人』だ」
「分けてますよ」
「分類される人、分類されない人、二種類に分けない人。三種類じゃないか」

2003年8月27日


浅草名人伝説4

快楽亭ブラックプロデュース。立川談志、桂三枝、ブラック、そして「特別付録」として中村勘九郎。何が起きても不思議ではありません。

9月26日、浅草・雷5656会館。

2003年8月26日


何を求めて 5

今月17日から24日までの検索キーワード一覧です。425種類。

4位はいったい何なのでしょう。211位は私もときどき迷います。

2003年8月25日


秋日狂乱

僕にはもはや何もないのだ
僕は空手空拳だ
おまけにそれを嘆きもしない
僕はいよいよの無一物だ

それにしても今日は好いお天気で
さつきから沢山の飛行機が飛んでゐる
欧羅巴は戦争を起すのか起さないのか
誰がそんなこと分るものか

今日はほんとに好いお天気で
空の青も涙にうるんでゐる
ポプラがヒラヒラヒラヒラしてゐて
子供達は先刻昇天した

もはや地上には日向ぼつこをしてゐる
月給取の妻君とデーデー屋さん以外にゐない
デーデー屋さんの叩く鼓の音が
明るい廃墟を唯独りで讃美し廻つている

あゝ、誰か来て僕を助けて呉れ
ヂオゲネスの頃には小鳥くらゐ啼いたらうが
けふびは雀も啼いてはをらぬ
地上に落ちた物影でさへ、はや余りにい!

―さるにても田舎のお嬢さんは何処につたか
その紫の押花はもうにじまないのか
草の上には陽は照らぬのか
昇天の幻想だにもはやないのか?

僕は何を云つているのか
如何なる錯乱にめられてゐるのか
蝶々はどつちへとんでいつたか
今は春でなくて、秋であつたか

ではあゝ、濃いシロツプでも飲まう
冷たくして、太いストローで飲まう
とろとろと、脇目もしないで飲まう
何にも、何にも、求めまい!……

中原中也「秋日狂乱」(1935)

2003年8月24日


火星よ、ありがとう

最近なんだか体が軽くなってきたと思ったら、火星が大接近中だというではありませんか。

引力のおかげです。そうにちがいありません。

2003年8月23日


何を求めて 4

今月10日から17日までの検索キーワード一覧です。402種類。

175位と181位の人は同一人物でしょうか。231位は小学生かな。

2003年8月22日


ふりがな

ウェブページでふりがな(ルビ)をどう書いたらよいものか、ながらく迷っていました。<rb>とか<ruby>というタグがあるにはあるのですが、Internet Explorer でしか通用しません。

そこで、ふりがなをつけたい文句にこのような下線を引き、カーソルを乗せるとふりかなが表示されるようにしました。これにて一件落着

2003年8月21日


ふだんは

早朝起きて、まっさきに、ここにひとことふたことメッセージを書くのが日課なのですが、現在時刻は18時56分、遅さの新記録を樹立してしまいました。急用で朝から東京に出かけ、先ほど帰宅したところです。日中の最高気温が35度の名古屋を朝はやく発ち、25度の東京で一仕事して、涼風が吹く夕刻名古屋に帰参。思いがけず避暑になりました。

2003年8月20日


メインBBS

おとといお知らせしましたが、午前5時からアクセスできなくなっています。今日中に復旧する予定です。BBSに書込み たいという方は「意味なし」BBSにお願いします。

2003年8月19日


「朝のリレー」

谷川俊太郎の詩「朝のリレー」を女性が朗読する。ブラウン管に広がる空に、詩のことばが浮んでは消える。バックには谷川賢作のピアノ曲「天使の涙」。

そんなCFが始まりました。ネスカフェ。「日曜洋画劇場」で見られます。最近のCFでは出色の出来です。

2003年8月18日


夏はどこへ行った

Where have all the summers gone?
Wrong time passing
Where have all the summers gone?
Wrong time ago
Where have all the summers gone?
Gods have spoiled them every one
When will we ever learn?
When will we ever learn?

2003年8月17日


掲示板

ふたつある掲示板のうちのメインの方が、19日(火)午前5時から終日アクセスできなくなります。運営会社がOTDからアルチェという会社に変わり、データを新しいサーバに引っ越すのだそうです。翌日から今までどおり使えるはずです。

2003年8月16日


何を求めてここに 3

11日から13日まで、三日間のキーワード統計はこんな感じです。195種類。なぜ1位にこんな言葉が。

2003年8月15日


キャラメル

わたしスキ
ぼくもスキ
 ウチの トウさま カアさまが
 オユルシ あるのは このオクワシ
森永ミルクキヤラメル!

大正7年12月の広告

2003年8月14日


宇宙を大切にしよう

という落書きを近所でみかけました。趣旨には賛同しますが、何をどうすればいいのか。

2003年8月13日


ペルセウス座流星群

今夜が極大。でも満月という悪条件です。

2003年8月12日


膠原病

先月末に宝塚・月組の霧矢大夢さんが初期の膠原病の治療に専念するというニュースに接して思い出したのが、安奈淳さんです。

やはり膠原病で2000年に緊急入院し、去年4月に『マイ☆シャイニング☆アワー』で舞台復帰しました。十年ほど前、ある芝居のオーディションがあり、通訳として帝国ホテルでお会いしたのですが、覇気のなさが忘れられません。相手の目を見るのがやっとという感じで、言葉を口にするのもつらそうでした。あの頃すでに病を患っていたのかどうかは存じませんが、膠原病ときくとあのときの安奈さんを思いだします。

2003年8月11日


Jardi Tancat

10月の新国立劇場「バレエ・ガラ "THE CHIC" にスペインのナチョ・ドゥアト振付による "Jardi Tancat(ジャルディ・タンカート=閉ざされた庭園)" が参加。マリーア・デル・マル・ボネの歌はいちど聴くに値します。

2003年8月10日


何を求めてここに 2

検索エンジンでこのサイトにやってきた人がどんな言葉を検索したか、6月につづいて7月の統計をまとめました。704種。今回は「着メロ」「ジャニーズ」が目立つ気がします。「全裸」の人はなにを求めているのでしょう。「fbi warning」を検索した人はスパイでしょうか。

一覧はこちらです。

2003年8月9日


24%

17年前のスペインの失業率です。失業率の算出方法は国によって違うので単純な比較はできませんが、今の日本よりはるかに深刻でした。日本は5年連続自殺者が3万人を超えています。失業や不況との因果関係ははっきりしないらしいのですが、ひとつだけはっきりしているのは、スペインの自殺者(自殺率)が少ないこと。カトリシズムのおかげではないかと、さしたる根拠もなく考えています。

2003年8月8日


犬投げ

「犬投げは、どうかな」
「……?」
「犬を、一匹ずつ、投げるんだよ」
「なんでそんなことするんです」
「猫を投げたら猫投げになるじゃないか」

2003年8月7日


表彰

「まだですか」
「なにが」
「表彰。粗忽者ワールドカップ」
「ネムイヨ」
「きのうまでお忙しかったのは存じてます」
「トーキョーデ イパーイ ソコツ ヤタヨ」
「そうでしょうとも」
「オキャクサン チューモン ナニ?」
「いんちき外国人みたいな喋り方、どうにかなりませんか」
「インチキナイヨ ワタシ ニホンジンネ アリガトゴザマシタ」
「ゆっくり休んで下さい」

2003年8月6日


でっかいなあ

初めて訪れた北半球の真裏の国で、親が危篤だという知らせを受ける。翌日、何食わぬ顔でワークショップ。艱難辛苦を乗り越えた先にある喜び(アレグリアス)。絶望なんかしていられるかと言わんばかりの飄々たるアイロニー(ブレリアス)。一睡もできないまま、朝から舞台の仕込み、照明と音合わせ、ゲネプロ(本番さながらのリハーサル)、本番、懇親会。

アンドレウもファラも人間がでかいよ。

2003年8月5日


『トゥルケーナ』

朝10時からビルの地下にある梅が丘BOXで仕込み、ゲネプロ、本番、懇親会。アンドレウとファラが外の空気を吸ったのは夜の10時。おかげさまで大盛況でした。観客のみなさん、演出者協会、燐光群スタッフみなさん、本当にありがとう。

2003年8月4日


ワークショップ

フラメンコを踊ったことがない老若男女35人が、二日目には全員でブレリアスを踊りました。あんなに感動的なブレリアスは初めて観ました。6時から9時の予定が、あまりの盛り上がりに終わってみれば10時。アンドレウもファラも大満足です。

参加者のみなさんありがとう。今日はいよいよ『トゥルケーナ』の上演です。

2003年8月3日


トゥルケーナ

あしたの午後4時から梅が丘BOXでバルセローナのトゥルケーナ劇団が代表作『トゥルケーナ』を上演します。ドイツやブラジルでも公演した、フラメンコと人形劇をミックスさせた舞台。上演時間は一時間。作品解説と質疑応答、最後はちょっとしたパーティーも開きます。千円。残席あり。

小田急線梅が丘駅の南口を出ると目の前は商店街。右へ歩いて下さい。すぐ右手にマクドナルドがあります。そのまままっすぐ歩くと交差点があります。この交差点の右の角が梅が丘BOXです。小さなビルの地下にあるちっちゃな劇場で、入口には「燐光群」と書いてあります。お問い合わせは日本演出者協会(Tel. 03-3355-8287 携帯 090-6162-1710)まで。

2003年8月2日


ものみな回る

ドイツ語を話す日本人演出家と、祖母がイギリス人、母がドイツ人のスペイン人演出家と、モロッコ生まれのスペイン人女優と、スペイン語を話す日本の粗忽天皇が、回転寿司を食べながら、ドイツ語とスペイン語とカタルーニャ語と日本語で、スペインとドイツとイギリスとチェコスロバキアとモロッコとイラクと韓国と日本の話をする。

寿司が回る。目も回る。

2003年8月1日


公と個

「通常、公的とされるのは国家レベルの事柄です。しかるに、カントはそれを私的なものといい、逆にそこから離れて個人として考えることを公的だという〔略〕。カントは、そのような個人を世界市民(コスモポリタン)と呼びました。コスモポリタンというと、国際人というような言葉を連想します。私は日本で国際人と呼ばれるようなタイプが昔から嫌いでした。しかし、コスモポリタンとは、何か実体的なものではない。人はどこかの国家や文化に属するのだし、それを否定することはできません。しかし、それを『括弧に入れる』ことはできる。つまり、自ら世界市民として考えることができます。そのように意志することがコスモポリタンであり、そのかぎりにおいて、世界市民が存在するのです。カントはそれをパブリックと呼びました。だから、それは、通常の意味でのパブリックと違います」

柄谷行人『倫理21』(2000)

2003年7月30日


夜の美術館

今月と来月は深夜まで解放。入場無料。スペイン文化省の試み。

マドリードはソリーリャ美術館とアメリカ博物館。バリャドリードはカサ・デ・セルバンテスと彫刻美術館。考古学博物館とバレンシアの陶芸美術館は土曜日だけ午後11時30分まで無料解放。フィゲラスのダリ美術館は深夜1時まで。ほかにもメリダの古代ローマ博物館、アルタミラ博物館など。ティッセン・ボルネミッサ美術館は午後10時まで。「近代の巨匠」コレクションが無料。

贅沢とは、こういうこと。

2003年7月29日


何も読むものがないときは

タウンページを読むのはどうか。たとえば「スナック」の名前。

アダムのへそ
あんたの店
いじっぱり
いつもの処
おしくらまんじゅう
おたまじゃくしと蛙たち
ガルシアの首
火曜日の女
客恋慕
きがるに
ぎりぎり玉子
偽夜蛮
金曜の朝
ごぶんのご
サラリーマン
さりげなく
3月生まれ
三びきの子ぶた
しっちゃかめっちゃか
詩葉楽
写夢猫
樹里庵
スナックどーも
そこ
それなりに
ちやむちやむ
猫とバラの日日
比呂イン
秘書課
美意識
ふぁじぃ
ヘイベイビイ
ぽかーん
慕映夢
マザー・テレサ
マダムパパ
マット・ビアンコ
ゆかいな悪魔たち
夢のつづき
世呂詩九
六軒目
わからん


「ん」なんていう名前をつけるのはかなり幼稚だ。だからといって「ぎりぎり玉子」を褒める気にもなれない。

2003年7月28日


生長

わけの分からぬ線をひいて
これがりんごと子供は云う

りんごそっくりのりんごを画いて
これがりんごと絵かきは云う

りんごに見えぬりんごを画いて
これこそりんごと芸術家は云う

りんごもなんにも画かないで
りんごがゆを芸術院会員はもぐもぐ食べる

りんごりんごあかいりんご
りんごしぶいかすっぱいか

谷川俊太郎「生長」

2003年7月27日


時代 [époque]

われらの時代〔=現代〕。
現代をはげしく非難すること。―詩的な時代でないと嘆くべし。
現代を「移行期」、「頽廃の時代」と呼ぶべし!

フローベール『紋切型辞典』

2003年7月26日


会話の訓練 3

「輪ゴムの王子様って、知ってる?」
「え?」
「王子様。輪ゴムの」
「なにそれ」
「王子様がね、来るんだよ、白い馬に乗って」
「うん」
「白い馬だよ」
「王子様っぽいね」
「でしょう。もうどこから見ても王子様」
「うん」
「でね、泣いてるんだよ」
「誰が」
「だから王子様」
「なんで」
「ぼくもね、不思議に思って、どうして泣いてるのかなあって、よーく見てみると、指にね、輪ゴムをね、巻きつけてるんだよ」
「輪ゴム」
「一本ならいいよ、何本も。きつーく巻いてるの。もう指だかゴムだかわからないくらい」
「それで」
「いや、それだけだよ」
「それだけ?」
「うん」
「それだけってことはないだろう」
「しょうがないだろ、夢の話なんだから」
「なんだ、夢か」
「そうだよ」
「夢じゃしょうがないな。で、どの指」
「え?」
「だから、どの指に巻いてたの」
「どの指って、人差し指、だったと思うけど」
「人差し指か。人差し指じゃあ、だめだな」
「だめって、何がだめなんだ?」
「そういう人は、トイレットペーパーで鼻をかむタイプだよ」

2003年7月25日


アルモドバル

『エル・パイス』のペネロペ・クルスのインタビューによると、"La mala educación" を撮影中のアルモドバルが次の作品の脚本を執筆中。クルスが出演するそうですが、内容に関しては口止めされているそうです。

2003年7月24日


会話の訓練 2

「おはようございます」
「いやあ、見事ですねえ」
「原因と結果を取り違えているんじゃないですか」
「ビールといえばやっぱりこれですよ」
「ま、ラクダみたいなものかな」
「ズキズキしますか、シクシクしますか」
「それじゃ話がちがうじゃないか」
「え? じゃあ、あなたも」
「予算が削減されることも考えられます」
「血は争えませんね」

2003年7月23日


会話の訓練 1

「どの面さげて来やがッた」
「ふん」
「とことんとっちめてやる」
「ちゃんちゃらおかしいや」
「戯れ言抜かすとひっぱたくぞ」
「やかましい」
「こっちの台詞だ」
「大根役者のくせに」
「減らず口ばかり叩きやがって」
「口から先に生まれてきましたから」
「利いた風な口をきくな」
「ぼんくら」
「四の五の言ってねえで勝負しろ」
「おたんちん」
「なんだと、この唐変木」
「田吾作」
「顔みてるだけで虫酸が走らァ」
「死に損ない」
「今にみてろ」
「覚えてろよ」
「今日はこのくらいで勘弁してやる」
「ちくしょう。恩に着るぜ」
「いいってことよ」

2003年7月22日


プー

「プー。ヒヤ/\といひたいが、失敬ながら申ちません」

坪内逍遥『當世書生氣質』

2003年7月21日


プレイ

「守山君は卒業したら何になるぢやろうか。」
「代言人になるとかいつてるョ。」
「守山君の代言人は、少々適當しないではないかなァ。」
「なぜ。」
「何故でも、守山君はあんまり謹愼すぎるかならなァ。」
「馬鹿ァいひたまへ。守山がなんでおとなしいもんか。」
「エ。そんなら守山君もプレイ(郭などへ行くことをいふ書生の通語なり)するかなァ。」
「ナニ、プレイする譯ぢゃァないがネ。中々如才ない男だから、世間の交際は極めて精妙ョ。」

坪内逍遥『當世書生氣質』

2003年7月20日


気持ちいいぞ

「君はチューブの糊を最後まで使い切ったことがあるか」
「え?」
「糊だよ、チューブに入っている」
「ありませんけど」
「買わないか」
「なにを」
「これ。あと一回塗ればからっぽになる」
「え?」
「あとひと塗りすれば、スカッとなくなる。どうだ」
「どうって」
「気持ちいいぞ」
「売るんですか」
「売るよ」
「いくら」
「百円」
「結構です。自分で使い切ってみせます」

2003年7月19日


亡命者

「ほんとうの亡命者たちは、どこにいても同じ仕事のできる自立的な精神世界を、自己内部に作り出した人たちだけではなかったろうか」

加藤周一

2003年7月18日


ラブして居るぞ

「今まで持ツて居たプレジユア(快樂)を奪はれた上に。ホウプ(将来のたのしみ)まで無くなつてしまツちやア。人間ハとても。立行くもんじやアない。彼の聖賢にあらざるよりハ。そりやア。イムポツシブル(難行)だ」

「四圓だけゲツト(得領)したのさ」

「余ツ程君をして居るぞ」

坪内逍遥『當世書生氣質』(1885-6)

2003年7月17日


偉い

95年5月3日の早朝。ニッポン放送の大リーグ中継を聴いていました。

野茂のデビュー戦。先頭打者を三振にうちとり、5回まで91球、被安打1、三振7、四球4。「10年くらい腰を落ち着けてメジャーでやってほしい」と解説のパンチョ伊東。さすがパンチョ。今年で8年目。

イチローは凄い。松井もなかなかやる。でも「偉い」のは野茂。

2003年7月16日


個人主義

「それからもう一つ誤解を防ぐために一言しておきたいのですが、何だか個人主義というとちょっと国家主義の反対で、それを打ち壊すように取られますが、そんな理窟の立たない漫然としたものではないのです。いったい何々主義という事は私のあまり好まないところで、人間がそう一つ主義に片づけられるものではあるまいとは思いますが、説明のためですから、ここにはやむをえず、主義という文字の下にいろいろの事を申し上げます。ある人は今の日本はどうしても国家主義でなければ立ち行かないように云いふらしまたそう考えています。しかも個人主義なるものを蹂躙しなければ国家が亡びるような事を唱道するものも少なくはありません。けれどもそんな馬鹿気たはずはけっしてありようがないのです。事実私共は国家主義でもあり、世界主義でもあり、同時にまた個人主義でもあるのであります」

漱石「私の個人主義」(1914)

2003年7月15日


先日カタルーニャの画廊主がパリでダリの絵を落札、バルセローナに運ばうと額から絵を外したところ、裏に未発表のスケッチがあった。

裏返したから発見できた。油断も隙もないな、裏ってやつは。

2003年7月14日


何を求めてここに来るのか

人はどんなキーワードを検索して、このサイトに辿り着くのか。

先月分のリストを作ってみたら、436種類ありました。

芸能、時事ニュース、演劇、スペイン語など、さまざまですが、「何が知りたくてこんな言葉を」というものもあります。

「さかりのついた猫」
「順子」
「賤しからず」
「地下鉄入口」
「find, 今夜、とにかく」

リストはこちら。

2003年7月13日


2分30秒の芸術

ザ・ワイルド・ワンズの「思い出の渚」、ザ・ピーナッツの「恋のフーガ」。60年代は2分30秒で世界を構築してました。シルヴィ・バルタンにはその名もずばり「しあわせの2分35秒」がある。

長いね、最近は。

2003年7月12日


Aさん

お会いしたのは一度きりでしたが、忘れません。安らかにお眠り下さい。

2003年7月11日


知らざァ言って聞かせやしょう

「問われて名乗るもおこがましいが」
「え?」
「おこがましいが」
「なにが」
「だから、問われて名乗ることだよ」
「それが」
「おこがましいだろ」

話が進みません。

2003年7月10日


え?

「来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せる」
「え?」
「曇らして見せる」
「なにを?」
「月」
「いつ?」
「だから、来年の今月今夜、曇らして見せるよ」
「なにを?」

人の話はちゃんと聞け。

2003年7月9日


さすがアフリカ

拙者ムニエル。毛皮族。シベリア少女鉄道。ロリータ男爵。ゴキブリコンビナート。男子はだまってなさいよ!。

どれも人気劇団またはユニットの名前。まったくおまえらってやつはっていう感じです。

男子はだまってなさいよ!の主催者は男。細川徹と佐伯新。細川はシティボーイズ『ラ・ハッスルきのこショー』『パパ・センプリチータ』の作家。サイトの日記を読んでみました。7月5日。

「ニカウさんが死にました。59歳くらいで。さすがアフリカ。」

なぜ「さすが」なのか。

2003年7月8日


星に願いを

織姫は琴座のベガ星、彦星は鷲座のアルタイル。今日は曇つて見えないかな。じゃあここで気分だけ味わいましょうか。

地球からベガまでは26光年。この距離が重要なモチーフになっているのがロバート・ゼメキス監督、ジョディ・フォスター主演の『コンタクト』。近年のSF映画では出色の出来です。劇場版『スタートレック』第一作に匹敵。

「望遠鏡がなくたって、10倍以内の双眼鏡でもじゅうぶん星は見えるんですよ」

きのうのNHK-FM「日曜喫茶室」で柳家小ゑんが言っていました。「星空寄席」やプラネタリウムの解説もする小ゑん、"6330 Koen" という小惑星の名前の主でもあります。友人が発見して「おまえの名前をつけたい」と、スミソニアン天文台に申請、落語家というカテゴリーは当然なく、「三ヶ月待つてくれ」とスミソニアン。三ヶ月後、晴れて命名されたそうです。

悩んだんだろうな、スミソニアン。

2003年7月7日


バリー・ホワイト

ラブ・アンリミッテッドの「愛のテーマ」(1973)は何度聴いたことか。聴けばたちまちゴキゲン。アレンジにシビレました。享年58。

2003年7月6日


ヒステリー

3月15日のこの欄で、自殺した広島尾道市高州小学校の慶徳和宏校長は鬱の治療をしていたと書きました。

つい先日、尾道市教育委員会は調査報告をまとめ、鬱病だと承知はしていたが頑張って仕事をするよう励ましてしまったのが落ち度だったと認めました。そしてきのうの午後、調査報告を担当していた教育次長が首を吊りました。親族の話では、昼となく夜となくマスコミの取材に追われていたらしい。

ちょうどその頃、厚生労働省が、過労による鬱病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害の後遺症に障害補償を認定するという方針を打ち出しました。過労による鬱の後遺症に対する補償の認定基準が、はじめて定められました。

よってたかって魚に「飛べ」とヒステリックにけしかける。よってたかる人たちはヒステリーに気づかず、きょうも枕を高くして眠るのでしょう。

2003年7月4日


書評

去る日曜の毎日新聞「今週の本棚」に、丸谷才一さんが『スペイン黄金世紀演劇集』の書評を寄せてくれました。拙訳の一節が引用されており、嬉し恥しでございます。インターネット版にも掲載されました。こちらです。

2003年7月4日


屋根の上の市村正親

森繁久彌、西田敏行につづき市村正親が『屋根の上のヴィアオリン弾き』三代目テヴィエを演じます。来年4月3日東京芸術劇場で開幕。全国15都市を巡演。

2003年7月3日


絵のちから

ラフォーレ原宿ミュージアムで開催中の「希望/HOPE-未来は僕等の手の中」に出品した北野武の自画像。ネットで小さな写真をみただけですが、構成と色彩が素晴しい。映画を撮るときまず画が浮かぶ人。黒澤明もそうでした。新作『座頭市』の衣装は娘の黒澤和子が担当しています。6日まで。

2003年7月2日


バグダッドの渥美清

永六輔が田所康雄と出会ったのは、学童疎開から戻った焼け野原の浅草でした。

子供たちはくず鉄を拾い集めてお金を稼いでいた、その元締めだったのが、〈渥美清〉になるまえの田所康雄。車道と舖道のあいだに立っている鉄柱をつなぐ鎖が金になるから外して持って来いと、田所は少年たちを仕切っていた。器物損壊で検挙された永は中学一年、田所は中学三年。

当時の様子を永六輔は「今のバクダッドの子供たち」になぞらえています(『笑芸人』Vol.11)。

2003年7月1日


女ボーイ

1904年のセントルイス博覧会。日本の茶業組合が出店し、万博後も組合は茶汲みの藝者をアメリカに派遣。そのころ日本では銀座台湾喫茶店という店がオープン。最盛期の明治43年ごろ、女給は「女ボーイ」と呼ばれていたそうです。永井荷風が『斷腸亭日乘』で証言しています。

デビュー当時の丸山明宏(現・美輪明宏)が元祖「シスターボーイ」だったのは有名な話ですが、「女ボーイ」ってのは知らなかった。水原明人『「死語」コレクション』(講談社現代新書)にも載っていません。

2003年6月30日


びわ湖ホール

四年前にここでピナ・バウシュを観たときからプログラムの良さに感心しているのですが、今年もやってくれます。

ダンスとバレエは8月の「夏のフェスティバル」。ダムタイプ、笠井叡、珍しいキノコ舞踊団、フランソワ・シャ、パパ・タラフマラ。9月が山海塾で10月がローザス、11月はマギー・マランとバレエ・プレルジョカージュ。

松竹大歌舞伎に太田省吾、野村万作・萬斎、ウィーン・フィルなど挙げたらキリがない。ほとんどが主催公演だから恐れ入ります。

湖のほとりの大劇場。気持ちがいいですよ。ダンス・バレエのスケジュールはこちらです。

2003年6月29日


下町ダニーローズ

立川志らくが劇団「下町ダニーローズ」を結成。今日と明日、池袋シアターグリーンで旗揚げ公演があります。主演は酒井莉加。立川談四楼もゲスト出演。

劇団名の由来はもちろんウディ・アレンの『ブロードウェイのダニーローズ』。芸人の楽屋話の映画なんですが、アレンの罪滅ぼしが鼻につく代物で、これを目標にかかげるのはあまりいいセンスとは言えません。モンティ・パイソンを換骨奪胎するケラリーノ・サンドロビッチ主宰のナイロン100℃の方が志ははるかに上。ナイロン100℃のサイトを運営している会社は "Silly Walk"。ジョン・クリーズの、あの〈バカ歩き〉。マネージメント部の名前がマルクス兄弟の "Duck Soup"(『我輩はカモである』)。

同じお金を払うなら、9月からの国立演芸場「志らくのピン」で新作落語を聴く方がいいでしょう。

2003年6月28日


阿国

阿国歌舞伎を「復元」上演するという試みが8月2日と3日にあります。

関西楽劇フェスティバル協議会の「上方ルネッサンス楽劇の祭典」プログラムのひとつ。阿国の歌舞伎踊りが民衆に根づいていく過程を囃子や狂言で「文献や史料をもとに忠実に再現する」(野村万之丞)そうです。

京都四条大橋の北、鴨川東岸に7メートル四方の能舞台を設営。西岸に800人収容の無料席。先斗町納涼床特別席も。出演は花柳和彩紀、大沢健、池乃めだかなど。演出は野村万之丞。来年1月、八世野村万蔵を襲名します。

8月3日はテレビ中継あり。ただしNHK・BSデジタル。日程など詳細はこちら

2003年6月27日


演劇ニュース

新しいページを作りました。ネット上の演劇関係ニュースにひとことコメントをつけて紹介します。トップページに5つある「→」の二番目。タイトルをクリックすると記事を参照できます。

リンク先の記事にコメントをつけるこういう形式のページをBlog というらしい。Web Log の略称。日記のようで日記じゃない、ではニュースサイトかというとそうでもない、まだ生まれたばかりのサイト形式。どんな使いみちがあるのか、とにかくやってみます。

2003年6月26日


コルドバ演劇祭

第1回コルドバ演劇祭が開催中。

バスクやカタルーニャなど全国各地から九劇団が参加、ほとんどが野外パフォーマンス。最終日の日曜は午後9時からグラン・テアトロでフアン・タマリスのイリュージョン。

23日から29日まで。

2003年6月24日


ハビエル・カマラ

アルモドバルが新作撮影を開始。『トーク・トゥ・ハー』の看護士ハビエル・カマラの出演が発表されました。主役は『天国の口、終りの楽園。』のガエル・ガルシーア・ベルナルと、『テシス』『オープン・ユア・アイズ』『アナとオットー』のフェレ・マルティネス。フェレは『トーク・トゥ・ハー』にも出ています。何の役かは観てのお楽しみ。

2003年6月24日


座して奏するヴァイオリン

明治40年頃の大阪では、バイオリンと琴を習うのが〈嫁入り道具〉だったらしい。渡辺裕『日本文化モダンラプソディ』(春秋社)によると、隨一の指導者は関西音楽団の甲賀夢仙人。面白いのは甲賀が「一般家庭の模樣に調和させるため」にバイオリンを座って弾くことを奨励したこと。

大阪だけではないようで、福岡の大日本家庭音楽会発行の『通信教授ヴァヰオリン講義録』(1914)にはこうあります。

「日本座敷で琴、三絃、尺八、等と合奏します時、ヴァイオリンのみ直立してひくのは頗る不調和であります。〔……〕ヴァイオリンは必ず直立してひくものだと、がんばつて居る人は余程ゆうづうのきかぬ人間です。こんな人が、たまたま日本曲をひくと彼のマーチ流のひき方をして温雅なる筝曲等をマーチ化するものですから、さつぱり、だめになつてしまうのです」

ハヤシライスやカツ丼のように見事に「日本化」された「洋食」の趣があり、これを単に「未熟」とか「幼稚」とか言って片付けるのは日本の西洋音楽受容を異文化接触として捉える視点がない文化本質主義者だと、渡辺裕は言います。

名古屋「喫茶マウンテン」の甘口抹茶小倉スパはさしずめ、振袖の女性がお茶室に正座しヤマハのサイレントバイオリンで「帰れソルレントへ」を奏でる、といったところでしょうか。

2003年6月23日


休戦

昼と夜が休戦協定を結んだ午前4時、キーボードを叩いていたのは夢かうつつか寝てか醒めてか。今日はだらだら過ごそう。

2003年6月22日


即興

チェンバロの曽根麻矢子が弾くスカルラッティとソレルのファンダンゴを聴くと、即興が教養の産物であることを思い知らされます。コメディア・デラルテの即興演技が単なる思いつきではないのと同じ。いちど生演奏を聴いてみたい。

2003年6月21日


無念

プエルトリコ演劇祭のディレクターからメールが届きました。予算不足で招待できません、招聘団体以外はアメリカの入国許可が下りません、ほんとうにごめんなさい、とのこと。無念。

2003年6月20日


マイアミからサンフアンへ

今月マイアミ国際ヒスパニック演劇祭に参加した劇団らせん館の『サンチョ・パンサ』。9月末にプエルトリコ国際演劇祭で上演できるかもしれないという知らせが、演出家の嶋田三朗さんから届きました。

「日本の現代劇は何も知らないから教えてくれ」というラモス=ペレアさんに『サンチョ・パンサ』の話をしてさしあげたのが2週間前。

「サンフアンに行きなさい」という天の声でしょうか。

2003年6月19日


春風亭柳昇

「えー、大きいことを言うようですが、いまやシュンプーテーリューショーといえばわが国では……」のマクラに爆笑したのは1981年ごろ。「……私ひとりでございまして」のあとの無表情が絵になっていました。円丈の緻密さ鋭さがない、ゆるゆるの芸風が万人ウケしました。『結婚式風景』は落語史に残ります。享年82。

2003年6月18日


ホセ・ルイス・アルカイネ

『トーク・トゥ・ハー』、いよいよ公開されます。アルモドバルは目下新作撮影中。撮影監督はビクトル・エリセ『エル・スール』のホセ・ルイス・アルカイネ。スペインが世界に誇るカメラマンです。

2003年6月17日


福岡の友人が遊びに来てくれました。全身黒尽くめ。あいかわらずおしゃれです。黒を着こなすんだからすごいよ。

2003年6月16日


大きい夢

「夢みた夢みたって、どんな夢みやがったんだお前の夢は。大きな夢みたって、どういう夢だ。たっつぁんなんざァお前、富士の山に腰をかけたってぇ夢みてる。ずいぶん大きいじゃねえか」
「う~ん? 俺の夢なんざァ……もっと大きいや」
「そうかい? どんな夢」
「うん。ナスの夢だい」
「ナスの夢? ナスなんぞお前、どれだけ大きいんだ? 大きいったってお前、なんだろう? まあ、一尺ぐらいのナスっていやあ、かなり大きいな」
「そんなんじゃねえんだ。もっと大きいんだ」
「はあ? するとなにか、三十寸くらいのナスか」
「もっと大きい。ずっと大きいや」
「畳一畳くらいか」
「もっと大きい」
「じゃあ……この六畳の座敷いっぱいくらいのナスか」
「いやあ、もっと大きいんだ」
「……じゃ、この家くらいか」
「もっと大きい」
「……町内くらいか」
「もっと大きいや」
「……う~ん、どんな大きいナスだ」
「暗闇にヘタつけたようなやつ」

古今亭志ん生

2003年6月15日


教育

「本当に、父兄の心遣いと費用とは、ただただ我々の頭の中に学問を詰め込むことばかりをねらっている。判断や徳操に至ってはほとんど問わない。〔……〕問うべきことは、誰が『最もよく知るひとか』で、『最も多く知るひとか』ではない」

モンテーニュ「ペダンティスムについて」『隨想録』

2003年6月14日


価格破壊

80年代の「女子大生」のように90年代の「女子高生」も価格破壊が進んでしまい、これでは商売あがったりだから女子中学生かなと思ったらすっとばして女子小学生ということになっているらしい。デフレなんですね。次は女子幼稚園児か。

2003年6月13日


今の私は普通の人間はおろか性格破産者でも、低能児でも、この世に生まれ出た生命のすべてに敬々しい愛情を感じないではいられない。母とはそういう愚かさの代名詞ではないだろうか。

円地文子『黒い紫陽花』

2003年6月12日


維新派

大阪南港の埋立地に劇場をつくる。入口には戦後闇市を思わせる飲食店街。奧行き100メートルはあろうかという舞台に、中上健次の路地が、架空の国の工場が、大阪の海辺の貧民街が、忽然と現れ、公演が終わると劇場を跡形もなく取り壊して去る。毎年これを繰り返す。

大阪の劇団維新派が9月に新国立劇場中ホールにやってきます。『nocturne ~月下の歩行者』。これはちょっとした事件。日程などは新国立劇場のサイトで。こちらです。

2003年6月11日


くるくる

窓の外を幼ない燕が十羽ほど、くるくるくるくる飛んでいます。
よく目が回らないものだ。
キツツキが脳震盪を起こさないのも不思議です。
うまくできてるなあ。

2003年6月10日


国立近代美術館

ショップを覗いたら絵画の所蔵作品目録が絶版で再版の予定なし。見本さえ置いていない。呆れました。

2003年6月9日


どろんこハリー

久しぶりに読みました。「くろいぶちのある、しろいいぬ」のハリーが「しろいぶちのある、くろいいぬ」になって、さあたいへん。おうちのひとはハリーだときづいてくれません。だいきらいなおふろが解決してくれます。おうちにかえったハリー。「とってもすてきな きもちです」。読んだ私も、とってもすてきなきもちになりました。

2003年6月8日


名前を知らない君へ

昨日の打上げでCWCについて熱く語った若い君へ。カメラマン役ばかりさせられて気の毒でした。もっと話がしたかった。ロックを産んだのが黒人だということさえ知らずに聴いている若者たちへの苛立ち。「学生運動」という言葉を耳にしただけで拒否反応を示す人たちへの苛立ち。その苛立ちはラモス=ペレア氏もきっと共有しています。最先端のアートで政治を変える運動の話、興奮しました。

戦火のベトナムに医療品を届け、トラックが三菱製のミサイルを運んでいるのをみて人生観が変わった牧師さん。一年間パナマに滞在しこの春高校を卒業したばかりの女性。マルセル・マルソーの弟子にパントマイムを教わったウィリー氏。メキシコでグロトフスキーの弟子に学んだラモス=ペレア氏。狹くるしい居酒屋の座敷は密度の濃い空間だったね。「密度の濃さ」「強度」はラモス=ペレア氏のワークショップのキーワードだったね。

「大学の先生になる人って、『なる』んじゃなくて『呼ばれる』んですよね」。そうなんだと思うよ。「授業、出てみたかったです」。きっとまたどこかで会えます。今度会ったときは名前を教えて下さい。

2003年6月7日


世界市民

「自国民であればあるほど、あらゆる国の人になれる」

ウナムーノ

2003年6月5日


額に汗して働くのはきもちがいいなあ。働く前から緊張して汗をかいているけれど。仕事の前と後の汗はちがうなあ。

2003年6月4日


しかも

「暑いですねえ」
「暑いな」
「もうすぐ梅雨だと思うと」
「なんだ」
「気が滅入ります」
「言っておくが」
「はい」
「わたしのせいではない」
「わかってます」
「しかもいかりや長介は入院だ」
「しかもの使い方が変です」

2003年6月3日


恋愛

特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。

『新明解国語辞典』三省堂

2003年6月2日


生誕105周年

ロルカ生誕105周年の記念行事が生地フエンテ・バケーロス(グラナダ)で始まりました。ダンス、フラメンコ、公開討論会、詩の朗読、コンサートなどイベント多種。

誕生日の5日は歌手パシオン・ベガがプラド通りで無料コンサート。最終日の7日は『ニューヨークの詩人』がガルシーア・ロルカ劇場で上演されます。

2003年6月1日


雨が空から降れば

雨が空から降れば 思い出は地面にしみ込む
雨がシトシト降れば 思いではシトシトにじむ
黒いコウモリ傘をさして 街を歩けば
あの街は雨の中 この街も雨の中
電信柱もポストも故里も雨の中
しょうがない 雨の日はしょうがない
公園のベンチで一人
お魚を釣ればお魚もまた雨の中

しょうがない 雨の日はしょうがない
しょうがない 雨の日はしょうがない
しょうがない 雨の日はしょうがない

別役実「雨が空から降れば」

2003年5月31日


新茶

方丈に今とどきたる新茶かな (高浜虚子)

2003年5月30日


Puppetry of the Penis

全裸の男がアソコを「エッフェル塔」や「ハンバーガー」に見立てるオーストラリアのパフォーマンス集団。キャッチフレーズは〈生殖器の折り紙〉。

日本ならお座敷芸、芸人同士の内輪のお遊びでしょうが、彼らはちょっと違うようで、2000年のエジンバラ国際演劇祭に参加、その後ロンドンはウェスト・エンドで5ヶ月のロングラン、エルトン・ジョン、U2のボノ、ヒュー・グラントにナオミ・キャンベルが観ているそうな。イギリスと北米を席捲し、きのうスペインでプレビュー公演。フランス、オランダ、オーストリア、南アフリカ、アイスランドでも公演予定あり。マドリード公演は来月5日 Teatro Alfil、バルセローナは11日 Club Capitol で。

ストンプやタップ・ドッグスのように公演ごとにオーディションをしています。詳細はこちらのオフィシャルサイトで。

2003年5月29日


青いインクとトランクと

「今は西暦2003年です。そうして、あなたの名は宮沢賢治です。あなたはこのトランクの中で今も時代をすりぬけて、通り抜けて生きつづけているのです。あの、あなた自身が拠り所とした法華経ですら、何千年もの昔にあなたが旅をして、あなたがめたあなたの作品なのですよ。トランクをゆすると、ガサゴソ、カリカリ、コツコツコツと音がします。それはあなたの声だ。声なき文字という声だ。ブルーブラックの青いインクで書かれた声だ。それはあなた自身の歩く音だ。時代を超えて聞こえてくる足音だ。ある時は風の又三郎、ある時はジョバンニやカムパネルラ、ある時はセロ弾きのゴーシュだったあなた。いまのいままで謎ばかりを残して、トランクを通り抜け、時代を行き来するあなた。タイムマシンのようなトランクに謎をいっぱい詰め込んで、いつも静かに笑っているあなた。このありとあらゆる宇宙を旅しているあなた。賢治さん、いまは西暦2003年です。西暦2003年、またしても、トランクに消えたあなたを求めて、今度は、僕たちがあなたへ向けて旅立つ番だ」

北村想『青いインクとトランクと』(2003)-プロジェクト・ナビ最終公演作品

2003年5月28日


恩恵

恩恵を施す者はそれを隠せ、恩恵をうくる者はそれを公にせよ。

セネカ「恩恵について」

2003年5月27日


ホトトギス

ホトトギスという鳥をウグイスなどと同ンなじように、風流な人たちは、その初音を楽しんで来ました。その風流にあやかろうという輩もおりまして、

「おい、おれはな、ゆうべホトトギスの初音をきいたぞ」
「そいつはおそい、おれなんか、おとといだ」
「なあーんだ二人ともおそいおそい、おれはもう去年の今時分にきいてるぞゥ」

このホトトギス、口をあけますってェと、その中が赤いことから「鳴いて血を吐くホトトギス」なんてェことをいわれて参りました。鳴くのは大体、夜が多いそうですな。

〔……〕

大そう仲のいい筈の男女お二人が、浮気をしたの、しないのなんてつまんないことから痴話喧嘩をおっぱじめました。そしてかきくどくような女性の涙声。と、その時「テッペンカケタカ」のひと声。ハッとしたそのお二人、

「あなた、ホトトギス!」
「む、おれもきいた」

それがきっかけで二人の痴話げんかはどこかへ行ってしまった。ホトトギスもどこかへ飛んで行ってしまった。

ホトトギス口説の腰を折って行き

古今亭志ん朝『風流入門』

2003年5月26日


アメリカ

「多極化した世界と、世界最強国としてひとつ残ったアメリカ。この構図は正しくない。世界がほんとうに多極化したなら、アメリカもまたその多極のなかのひとつであるはずだ。そのことの認識のなかにのみ、今後のアメリカの進む道がある」

片岡義男『日本語の外へ』

2003年5月25日


政治家

あっちもこっちも
ひとさわぎおこして
いっぱい呑みたいやつらばかりだ
 羊歯の葉と雲
  世界はそんなにつめたく暗い
けれどもまもなく
さういふやつらは
ひとりで腐って
ひとりで雨に流される
あとはしんとした青い羊歯ばかり
そしてそれが人間の石炭紀であったと
どこかの透明な
地質学者が記録するであらう

宮沢賢治「政治家」

2003年5月23日


アヴァター

プエルトリコの芝居が日本初上陸。『アヴァター』(1999)。

劇作家であり俳優であるロベルト・ラモス=ペレア作。アヴァター(アヴァタール)はヒンドゥー教の最高神ビシュヌの化身ですが、ナザレのイエスの知られざる日々を描いた物語。

ピープル・シアターが翻訳上演。6月3日~8日、東京両国・シアターχ(カイ)。日本演出家協会主催による講演会とワークショップも開かれます。通訳をすることになりました。

ピープル・シアターのサイトはこちら。「新着情報」をクリックすると舞台写真がスライドショーで見られます。作品内容や日程、劇場についてはシアターχの専用ページで。こちらです。

2003年5月22日


映画と演劇

戯曲の映画化や映画をとりいれた芝居はたくさんありますが、もっと根源的なところで両者の関係を考えさせる作品の系譜にあらたな映画が加わったようです。

カンヌで上映された "Dogville"。ニコール・キッドマン主演。監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー。

1930年代、FBIに追われて山村に身を隠した女を村人たちが匿う。女たちは召使として。男たちは娼婦として。やがて「何か」が起き、ゲームの規則が破られる。

スクリーンには山も村も家も映らず、画面は空っぽの空間らしい。ピーター・ブルックの言う「何もない空間」を思わずにはいられません。

カンヌは満場の喝采だったそうです。血が騒ぐよ。

2003年5月21日


茄子

黒田硫黄という人の『茄子』というコミックが評判だそうで、スタジオ・ジブリの高坂希太郎が映画化、カンヌ映画祭に日本アニメとして初めて出品、こちらも喝采を浴びているそうです。

アニメのタイトルは『茄子 アンダルシアの夏』。ツール・ド・フランスのスペイン版、ブエルタ・ア・エスパーニャ Vuelta a España の話らしい。

で、気になるのはスペイン語タイトル。 "Verano del Andalusia"。「夏」(Verano)がスペイン語なのにアンダルシアが英語表記なのはなぜだろう。しかも de ではなく男性定冠詞がついた del。よくわかりません。

2003年5月20日


どうしてこんなに眠いのか

「私は、もしそういえるなら、半覚半睡の時間が最も好きである」

埴谷雄高『変幻』

2003年5月19日


更新

「スペイン演劇のページなんですけど」
「どうかしたか」
「ぜんぜん更新してませんね」
「ああ」
「メインなんですよね」
「そうだよ」
「いいんですか」
「CDが届いたんだよ」
「え?」
「注文していたCD」
「何のCDですか」
「それはいいじゃないか」
「いいじゃないかって」
「君はCDの紙、どうしてる」
「紙?」
「あるだろう、紙、ケースの横に張ってある」
「紙って、タイトルとかアーティストの名前とか書いてある、あれですか」
「あの紙、君はどうしてる」
「どうしてるって、そのままですけど」
「ひらひらするだろう」
「は?」
「端のほうは糊がついていないんだよ」
「なんなんですか」
「CDは、裏がパカッと開くんだ」
「え?」
「だから、CDを固定するプラスチックだよ」
「それが」
「左のところが太くなっているだろう、背表紙のところ」
「ええ」
「あそこから、パカッと開くんだよ」
「そうなんですか」
「あの紙、わたしはその中にしまっておくんだけどね」
「ええ」
「あそこがパカッと開くのを、いったいどれだけの人が知っているのかってことなんだ」
「どうでもいいじゃないですか」

2003年5月17日


トニー賞

『ナイン』が8部門ノミネート。アントニオ・バンデーラスがミュージカル部門最優秀主演男優賞候補。演出のデヴィッド・ルヴォーは1993年からtpt(シアタープロジェクト東京)で堤真一を鍛えた人。

授賞式は6月8日。

2003年5月16日


カンヌ映画祭

昨日開幕。オープニングはペネロペ・クルス主演の『ファン・ファン・ラ・チューリップ』。今年の審査委員長は舞台演出家パトリス・シェロー。94年の審査員特別賞。委員もチェックしておきましょう。

アイシュワリヤ・ライ。インドの女優。94年のミス・ワールド。

ダニス・タノヴィッチ。ボスニアの監督。『ノー・マンズ・ランド』で一昨年脚本賞受賞。

カリン・ヴィアール。フランスの女優。

エリ・デ・ルカ。イタリアの作家、反戦運動家。「旧約聖書」をヘブライ語から翻訳。ユーゴ紛争でボスニアの人道団体の運転手を務めています。

ジャン・ロシュホール。フランスの俳優。

スティーブン・ソダーバーグ。『トラフィック』『エリン・ブロコビッチ』の監督。初監督作品『セックスと嘘とビデオテープ』は89年のパルムドール。

チャン・ウェン。『鬼が来た!』の製作・監督・脚本・主演。一昨年のグランプリ。

メグ・ライアン。『恋人たちの予感』『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』でゴールデン・グローブ賞ノミネート。『恋人たちの予感』が抜群。

この顔ぶれだと、黒沢清の『アカルイミライ』の受賞は難かしそうだなあ。回顧上映はフェリーニ。チャップリン『モダン・タイムス』で閉幕。

2003年5月15日


ある階段の物語

ブエロ・バリェーホの代表作。きょう35年ぶりに再演されます。マドリードのマリーア・ゲレーロ劇場。改修後のこけら落とし。

ロルカの『観客』のスペイン初演もこの劇場。1987年でした。

2003年5月14日


太田光

38歳の誕生日。『日本原論』シリーズは名著。さすがは談志の隠し子。

2003年5月13日


故旧忘れ得べき

『蛍の光』原曲のスコットランド民謡 "Auld lang Syne" の冒頭、"Should Auld Acquaintance Be Forgot..." を高見順が古風に訳したものです。

映画『恋人たちの予感』のラストシーンでビリー・クリスタルがこの文句の意味をメグ・ライアンに訊ねる。まさに「忘れ得べき」シーンです。

2003年5月12日


スペイン黄金世紀演劇集

初の著書が出ることになりました。著書といっても翻訳ですが。

『スペイン黄金世紀演劇集』。名古屋大学出版会。22日刊行。

担当したのはカルデロンの「名誉の医師」。ほかにセルバンテスとロペ・デ・ベガ、ソル・フワナ・イネスもあります。いずれも本邦初訳。

2003年5月11日


Forum 2004

来年5月からバルセローナで始まる巨大なイベント、世界文化フォーラム。9月24日までイベント目白押しです。

24の展覧会、44の対話集会、3,500人のアーティスト。演劇や舞踊、サーカスなどのパフォーマンス集団は109。コンサートは合計423回。

ロストロポビッチ指揮のブリテン「戦争レクイエム」。演劇はロバート・ウィルソン演出『ラ・ガリゴ』、リュイス・パスクアル演出『ハムレット』、ロベルト・ルパージュ演出、ヌリア・エスペル主演『ラ・セレスティーナ』、ピーター・ブルック演出『バンディアガラの賢者』、マリオ・ガス演出『オレスティア』、劇団チーク・バイ・ジョウル『オセロ』など。ウィレム・デフォー主演作もあるらしい。

ピナ・バウシュ、バリシニコフ、ナチョ・ドゥアト。バレンボイム、ジョルディ・サバル、ラトル指揮ベルリン交響楽団。

パブロ・ネルーダに捧げるリサイタルにはマヌエル・セラーとアナ・ベレン、チコ・ブアルケ、パブロ・ミラネス、アレハンドロ・サンスが出演。アフリカのエイズ撲滅基金チャリティーコンサートにはボノとスティングとユッスー・ンドゥール。

移住したいよ。

2003年5月10日


森光子

10代の林芙美子を演じる『放浪記』。でんぐり返しをするのには恐れ入りました。テレビではとんねるずとコントもやる。大正生まれ。今日で83歳。化け物。もちろん最大の賛辞です。

『放浪記』、松たか子が継ぐといい。

2003年5月9日


南果歩

末恐ろしい俳優。ここ数年で顔の輝きが一段と増してきました。

来週、新国立劇場『涙の谷、銀河の丘』でに主演。

松田正隆作、栗山民也演出。長崎。終戦から現在までの四姉妹の物語。共演は梅沢昌代(こまつ座)、中田喜子、長山藍子。高良久美子(ビブラフォーン)と徳高真奈美(ヴィオラ)の生演奏もあるらしい。

13日から25日まで。詳細はこちら

2003年5月8日


恋するふたり

〈歌うツチノコ〉こと大瀧詠一の「恋するふたり」。フジテレビ「東京ラブシネマ」の主題歌。月9にしては視聴率はイマイチらしいですが、ナイアガラーとしてはそんなことはどうでもよろしい。5年半ぶりの新曲。前作「幸せな結末」は13年待ちました。

ケータイというものを所有していないので個人的にはやはりどうでもよろしいのですが、12日から大瀧詠一の着メロが配信されます。「恋するふたり」「幸せな結末」「君は天然色」「さらばシベリア鉄道」の四曲。詳細はこちらで。

2003年5月7日


オーソン・ウェルズ

「人間は、ときとして覚えているはずのないようなことを思い出すものだ」(『市民ケーン』)

生きていれば今日で88才。

2003年5月6日


こどもの日

「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」(祝日法)日だなんて、知りませんでした。

「重んじる」の主語は素直に考えれば「親」。「幸福をはかる」のも「親」。その「親」が「母」に感謝する。

いったい誰の日なのか。

2003年5月5日


純粋労働

「今日も原稿ですか」
「そうだ」
「大変ですね」
「そうでもない」
「でもお仕事なんでしょう」
「わからない」
「わからないって、そんな」
「報酬はない」
「ボランティアですか」
「似てるけどちがう」
「何なんです」
「人のためじゃない。自分のために書いている」
「日記?」
「毎日書いているわけじゃない」
「やめたらどうです」
「読んでくれる人がいるのだ」
「でも一銭にもならないんでしょう」
「ならない」
「今日は国民の休日ですよ」
「非国民で結構」
「祝日に働くのは非国民ですか」
「そういう理窟じゃないか」
「一文の得もないのに」
「まさに純粋労働だな」
「純粋労働って」
「純粋にはたらく非国民。どうだ」
「どうだって言われても困ります」
「どうだってことは、ないな」
「ないです」

2003年5月4日


シルヴィ・ギエム

20世紀バレエ史の終わりに出現した美しい怪物。今月から来月にかけて来日公演があります。

『三つの愛の物語』。「三人姉妹」「カルメン」「椿姫」。

東京(6/16~18)、埼玉(6/13)、大阪(6/9)は残席あり。新潟、富山、大分でも公演。

2003年5月3日


WATARIDORI

日本野鳥の会会員だから、というわけではなく、ただの映画好きとしてお勧めします。ジャック・ペラン監督のドキュメンタリー『WATARIDORI』。

カメラが渡り鳥とともに空を飛ぶ。ただそれだけの1時間39分。SFXを駆使したスペクタクル映画にはない「驚き」に満ちています。

札幌、仙台、東京、川崎、幕張、大阪、神戸、奈良、福岡は上映中。ほかの地域は7月まで順次公開。まさに渡り鳥。公式サイトはこちらです。

2003年5月2日


落語

たまにはラジオで昭和の名人の落語を聴くというのはどうでしょう。

NHK第一「ラジオ深夜便」、土曜日の深夜1時台「演芸特選」。5月4日は三代目三遊亭金馬「雛鍔」。25日は五代目古今亭志ん生「三枚起請」。

同じくNHK第一「ラジオ名人寄席」。毎日午後9時30分から9時55分まで。5月は柳家小さん特集。5日・6日は「湯屋番」。12日・13日が「菊江の仏壇」。19日・20日が「阿武松」。そして26日・27日は小さん師匠の十八番、「親子酒」と「子別れ」です。

2003年4月30日


第5回バルセローナ・アジア映画祭

昨日開幕。5月7日まで。今年のラインナップは以下の通りです。まずは実写から。

田中光敏『化粧師 KEWAISHI』(2001)
奥原浩志『波』(2002)
清水浩『チキン・ハート』(2002)
熊井啓『海は見ていた』(2002)
青山真治『私立探偵 濱マイク6 名前のない森』(2002)

続いてアニメ。

北久保弘之『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000)
高橋留美子作『犬夜叉』(2000)
大友克洋『AKIRA』(1987)
押井守『甲殻機動隊』(1995)
押井守『パトレイバー』(1989)
本郷みつる『星方武侠アウトロースター』(2002)
竹内啓雄『ハーロック・サーガ ニーベルングの指環~ラインの黄金~1』(1999)
竹内啓雄『ハーロック・サーガ ニーベルングの指環~ラインの黄金~2』(1999)
富野由悠季『プレインパワード』(1999)

『AKIRA』が入っているのが嬉しい。もはや古典。

2003年4月29日


風の吹くまま

明日月曜の深夜24時から衛星放送でイラン映画『風が吹くまま』が放映されます。

キアロスタミ監督にしては珍しくバストショットが多い作品。携帯電話が重要なモチーフになっています。

2003年4月27日


ボウリング・フォー・コロンバイン

公開されて一ヶ月のスペインで観客動員数15万人。長編ドキュメンタリー映画の新記録達成。

フランスは80万人。ドイツはなんと150万人を超えました。

日本公開は5月18日。

2003年4月25日


管理人も復旧

胃腸風邪にやられていました。点滴を二日受けてなんとか恢復。みなさんも気をつけてください。

2003年4月24日


サーバー復旧しました

データの移行作業が無事終わったようです。

2003年4月21日


21日(月)午前2時から7時まで

アクセスできなくなります。サーバーのデータ引越し。朝7時頃には繋がると思います。

2003年4月19日


SMAP

前回ボブ・ホープとSMAPの繋がりに触れましたが、これだけでは何のことやらわからないでしょう。

どちらも「面白い」。でもボブ・ホープには「カッコよくてセクシー」なところはありません。

芸人としてのSMAPについて、以前「芸人列伝」というコーナーに小文を書きました。こちらです。

2003年4月18日


ボブ・ホープ

5月29日に百歳を迎えるというのでアメリカはイベントをいろいろ企画しているようです。

戦後のNHKラジオ「陽気な喫茶店」は堀江史朗ディレクターが米軍CIE(民間情報教育部)の指令で「ボブ・ホープ・ショー」を真似してつくったもの。

SMAPをバラエティーに進出させたジャニー喜多川は澤田隆治に「いちばん尊敬しているのはボブ・ホープ」と語っています。

2003年4月16日


連想ゲーム

NHKが番組を終了させたときは腹が立ちました。再開を願って幾星霜。おととい衛星第二の再放送をみて願いはいっそう強まるばかり。

キャプテンの人選が難しいだろうなあ。

2003年4月15日


アントニオ・バンデーラス

ブロードウェイ・デビューを果たしました。10日に始まった "Nine"。原作はフェリーニの『8 1/2』。唯一の男性出演者。ニューヨーク・タイムズをはじめ各紙絶賛。

共演はチタ・リヴェラ(!)。映画『フライド・グリーン・トマト』の美少女メアリー・スチュアート・マスターソンも。

2003年4月13日


O君に

雨が、あがつて、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴めない。
 誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
 ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
 けれども、それはせない……

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがつて、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。

中原中也「春宵感懐」

2003年4月12日


カエタノ・ヴェローゾ

ブラジリアン・ポップスの大御所。自伝を出版したようです。

ニューヨーク・タイムズの紹介文。「ボブ・ディランの詩的かつ政治的な言葉とバート・バカラックのメロディーの魅惑、フランス・ヌーヴェル・ヴァーグの俳優の魅力、スーザン・ソンタグの現代思想を組み合わせたシンガーソングライターを想像してみて下さい」

先日のアカデミー賞では『フリーダ』の主題歌がノミネート。でも『トーク・トゥ・ハー』での歌の方がずっといい。お楽しみに。

2003年4月11日


イエロー・ジャーナリズム

CNNやFOXなどの大手メディアは戦争を煽っているという批判があります。そのとおり。最近に限った話ではありません。

1898年の米西戦争。新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストとピューリッツァーが、互いの勢力争いのために戦争熱を煽らなかったら起きなかったといわれる戦争。

ハーストは「モーニング・ジャーナル」、ピューリッツァーは「ワールド」。どちらもセンセーションを売り物にした低俗な大衆紙。ハーストは映画『市民ケーン』のモデルです。

今日はピューリッツァーの誕生日。

2003年4月10日


プリンプリン物語

7日から再放送が始まりました。

神谷明、斎藤隆、はせさん治、滝口順平。錚々たる声優陣。

教育テレビ。月~木曜。午後6時10分~25分。

2003年4月9日


夢であいましょう

昨夜の「NHKアーカイブス」は1965年(昭和40年)2月6日放送の「夢であいましょう」。

カメラを何台使っていたのか知りませんが、当時を考えれば3、4台でしょう。見事です。生放送でここまでやっていた。永六輔が近年テレビに出なくなった理由がわかります。

ジャニーズの「僕の手袋やぶれてる」には笑いました。SMAPや嵐も時がたてば笑われるんだろうなあ。

2003年4月7日


マクベスを批判し、愛す

きのうの午後7時、紀伊国屋サザンシアターで「イラク攻撃と有事法制に反対する演劇人の会」が開かれました。

朗読劇「あきらめない 演劇は非戦の力」。斎藤憐作、渡辺えり子演出。台本はここで読めます。「演劇人の会」のサイトはこちら

呼びかけ人代表は永井愛、斎藤憐、渡辺えり子、坂手洋二、篠原久美子、福島明夫、 西山水木、くまがいマキ。

2003年4月6日


リップ・シンクロ

今夜の日本テレビ『紅の豚』。ハリウッド黄金時代に匹敵する作品。

もう見飽きたという人。ジーナ(加藤登紀子)がホテルで歌う「さくらんぼの実る頃」のシーンに注目。発音と唇の動きがぴたりと一致。リップ・シンクロです。日本のアニメでは珍しい。ここでの加藤登紀子の歌は彼女のワン・オブ・ザ・ベスト。ポルコが着水するまで、それは見事なカットの連続です。

2003年4月4日


マリサ・パレーデス

誕生日です。Ha cumplido cincuenta y siete primaveras.

2003年4月3日


四月になれば彼女は

April come she will
When streams are ripe and swelled with rain
May, she will stay
Resting in my arms again.

June, she'll change her tune
In restless walks she'll prowl the night
July, she will fly
And give no warning to her flight.

August, die she must
The autumn winds blow chilly and cold
September I'll remember
A love once new has now grown old.

Paul Simon, "April Come She Will" (1965)

2003年4月2日


April Fool

April Fool, n. 【四月馬鹿】 その愚かさにもう一ヶ月加えた三月馬鹿のこと。

A・ビアス『悪魔の辞典』

2003年4月1日


ありがとう

退職の日です。研究室はからっぽです。5年前もからっぽでした。

いろんなことがありました。いろんな人と会いました。病院通いはつづくけど、ずいぶん元気になりました。

学生諸君ありがとう。同僚のみなさんありがとう。これからもよろしく。

2003年3月31日


かよわい花

かよわい花です
もろげな花です
はかない花の命です
朝さく花の朝がほは
昼にはしぼんでしまひます
昼さく花の昼がほは
夕方しぼんでしまひます
夕方に咲く夕がほは
朝にはしぼんでしまひます
みんな短い命です
けれども時間を守ります
さうしてさつさと帰ります
どこかへ帰つてしまひます

三好達治「かよわい花」

2003年3月30日


煙草の害について

公園に吸殻を散らかし
家じゆうに灰を落し
ズボンに焼焦をつくり
空気をよごし
ライターに無駄金を使い
爪も歯もきいろく染め
風邪をこじらせ
あげくの果に肺ガンになり
いいことは何ひとつないのに
世界じゆうの人間が
国境を問わず人種を問わず好むという
人間の人間らしさのおろかな証し……
だが私はとりわけこうした
非衛生的な人類というやつがいとしい

谷川俊太郎「煙草の害について」

2003年3月28日


世界演劇デー

3月27日は世界演劇デー(World Theatre Day)。国際演劇協会(ITI: International Theatre Institute)が1961年に定めました。

知っている人はほとんどいないでしょう。マスコミでも報道されません。演劇活動に携わっている人で、この日を知っている人がどれだけいるか。

パリ本部の Manfred Beilharz 氏が緊急メッセージを公式サイトに寄せています。以下、全文を訳して紹介します。

「ユネスコ傘下の職業演劇活動の国際組織、パリに本部をおく国際演劇協会(ITI)は、各国政府に対し、政治的問題を政治的手段により解決すること、ならびに、暴力の行使と戦争をやめるよう求めます。私たちの抗議は、相互理解と平和的共存を促進するために世界中の演劇人の交流と協力を促す1948年のITI規約の原則に基づくものです」(公式サイトは http://iti.unesco.org

『モロッコの甘く危険な香り』。いよいよ初日の幕が開きます。

2003年3月27日


はるです

なごやはさくらが さきました
おうちのなかは ちゅーりっぷ
おそとはぽかぽか いいてんき
まどにひよどり きています
おはようおはよう ひよどりさん
はるがきました うれしいな

2003.3.26  レモン


速報

ペドロ・アルモドバル、『トーク・トゥ・ハー』でオリジナル脚本賞受賞。予想通り。当然です。

2003年3月24日


愛 -Paul Klee

いつまでも
そんなにいつまでも
むすばれているのだどこまでも
そんなにどこまでもむすばれているのだ
弱いもののために
愛し合いながらもたちきられているもの
ひとりで生きているもののために
いつまでも
そんなにいつまでも終らない歌が要るのだ
天と地とをあらそわせぬために
たちきられたものをもとのつながりに戻すため
ひとりの心をひとびとの心に
塹壕を古い村々に
空を無知な鳥たちに
お伽噺を小さな子らに
蜜を勤勉な蜂たちに
世界をなづけられぬものにかえすため
どこまでも
そんなにどこまでもむすばれている
まるで自ら終ろうとしているように
まるで自ら全いものになろうとするように
神の設計図のようにどこまでも
そんなにいつまでも完成しようとしている
すべてをむすぶために
たちきられているものはひとつもないように
すべてがひとつの名のもとに生き続けられるように
樹がきこりと
少女が血と
窓が恋と
歌がもうひとつの歌と
あらそうことのないように
生きるのに不要なもののひとつもないように
そんなに豊かに
そんなにいつまでもひろがつてゆくイマージユがある
世界に自らを真似させようと
やさしい目差しでさし招くイマージユがある

谷川俊太郎「愛」(1955)

2003年3月24日


卒業おめでとう

きのうの謝恩会でみんなに贈った詩、愛児を失った中原中也の詩の全文です。

1

愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。

愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。

けれどもそれでも、業が深くて、
なほもながらふことともなつたら、

奉仕の気持ちに、なることなんです。
奉仕の気持ちに、なることなんです。

愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから、

もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、

奉仕の気持ちに、ならなけあならない。
奉仕の気持ちに、ならなけあならない。

2

奉仕の気持になりはなつたが、
さて格別の、ことも出来ない。

そこで以前より、本なら熟読。
そこで以前より、人には丁寧。

テムポ正しき散歩をなして
麦稈真田を敬虔に編み―

まるでこれでは、玩具の兵隊、
まるでこれでは、毎日、日曜。

神社の日向を、ゆるゆる歩み、
知人に遭へば、につこり致し、

飴売爺々と、仲よしになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ撒いて、

まぶしくなつたら、日蔭に這入り、
そこで地面や草木を見直す。

苔はまことに、ひんやりいたし、
いはうやうなき、今日の麗日。

参詣人等もぞろぞろ歩き、
わたしは、なんにも腹が立たない。

((まことに人生、一瞬の夢
ゴム風船の、美しさかな。))

空に昇って、光って、消えて―
やあ、今日は、御機嫌いかが。

久しぶりだね、その後どうです。
そこらの何処かで、お茶でも飲みましよ。

勇んで茶店に這入りはすれど、
ところで話は、とかくないもの。

煙草なんぞを、くさくさ吹かし、
名状しがたい覚悟をなして、―

戸外はまことに賑やかなこと!
―ではまたそのうち、奥さんによろしく。

外国に行つたら、たよりを下さい。
あんまりお酒は、飲まんがいいよ。

馬車も通れば、電車も通る。
まことに人生、花嫁御寮。

まぶしく、しく、はた俯いて、
話をさせたら、でもうんざりか?

それでも心をボーツとさせる、
まことに人生、花嫁御寮。

3

ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手をしませう。

つまり、我等に欠けてるものは、
実直なんぞと、心得まして。

ハイ、ではみなさん、ハイ、ご一緒に―
テムポ正しく、握手をしませう。

中原中也「春日狂想」(1937)

2003年3月22日


What's Going On

Mother, mother
There's too many of you crying
Brother, brother, brother
There's far too many of you dying
You know we've got to find a way
To bring some lovin' here today - Ya

Father, father
We don't need to escalate
You see, war is not the answer
For only love can conquer hate
You know we've got to find a way
To bring some lovin' here today

Picket lines and picket signs
Don't punish me with brutality
Talk to me, so you can see
Oh, what's going on
What's going on
Ya, what's going on
Ah, what's going on

Marvin Gaye, "What's Going On" (1971)

2003年3月20日


くり返す

くり返すことができる
あやまちをくり返すことができる
くり返すことができる
後悔をくり返すことができる
だがくり返すことはできない
人の命をくり返すことはできない
けれどくり返さねばならない
人の命は大事だとくり返さねばならない
命はくり返せないとくり返さねばならない

私たちはくり返すことができる
他人の死なら
私たちはくり返すことはできない
自分の死を

(谷川俊太郎「くり返す」)

2003年3月18日


禁句

首を吊った広島尾道市高州小学校の慶徳和宏校長は鬱病の治療を受けていた。

昨年4月に銀行からいきなり小学校に赴任、右も左もわからず、悶々と悩む。月の休みは3日。頼みの綱だった教頭は5月に脳出血で倒れる。慶徳校長は医師に「情緒不安定」と診断され、教育委員会に療養休暇を申請したが「教頭が倒れた時だからこそがんばれ」と励まされた。

8月に鬱病と診断された。今年の2月。後任の教頭が心筋梗塞で入院。そして校長は首を吊った。

鬱病患者に絶対に口にしてはいけない言葉がある。「がんばれ」。無理だ。無理なんだよ。脳も体も悲鳴をあげているのだ。とにかく休むこと。仕事のことは一切忘れること。

3年前、同病を患う「戦友」を私は喪った。年下だった。入院を決めたきっかけのひとつが、彼女の死だった。

人は誰だってミスを犯す。そんなときは周りの人間が支えてやればいい。お互いさまなのだから。

心が広い人。清濁あわせのむ人。ユーモアを忘れない人。そんな人がそばにいて耳を傾けるだけで救われる。

言葉が人を殺す。言葉が人を救う。

2003年3月15日


11年ぶりの再演

学生時代に初めて戯曲を翻訳して、劇団青年座が上演した。『モロッコの甘く危険な香り』。アロンソ・デ・サントスというスペイン当代随一のコメディー作家の代表作。映画にもなった。アントニオ・バンデラスが出ている。マドリードのアパートで共同生活する男女3人の喜劇、でもちょっとほろりとさせる、そんな芝居。

演出の鈴木完一郎さんの知遇を得たのは86年秋のマドリードだ。すっかり意気投合して、いろんなところに行き、いろいろ喋った。スペイン演劇の研究で食って行こうと決意した、そのきっかけのひとつが、完一郎さんとの出会いだった。

再演されるなんて夢にも思わなかった。人生、何があるかわからない。

「平成14年度文化庁新進芸術家公演事業」だというのも嬉しい。将来が楽しみな若い俳優が稽古に励んでいる。

青年座といえば西田敏行さん。急性心筋梗塞で緊急入院したのが3日。心配したが、経過は順調だという。

公演は3月27日から31日まで。場所は青年座劇場。80年代スペインの傑作コメディーがどんなものか、興味がある方は足を運んで下さると嬉しい。詳細はこちらの専用ページか、またはこちらの劇団サイトで。

2003年3月13日


待つことの悦び

資本主義社会では、人を待たせるのは罪悪とみなされがちだけれど、待つ楽しみってのもあるんじゃないか。

ちあきなおみ。待った甲斐がありました。

11年ぶりに活動開始。4月にアルバムが発売される。『Virtual Concert 2003 朝日のあたる家』。「朝日のあたる家」は、あのアニマルズのヒット曲のカバー。

3年前からネスカフェのCMで流れている「黄昏のビギン」。あれで人気にふたたび火がついたんだろうな。いいことだ。この名曲、6枚組CD『ちあきなおみ・これくしょん』には、なぜか収録されていない。これはちょっとまずいんじゃないか。

でもとにかく復活だ。待つことがこんなに愉しい歌手はなかなかいない。

2003年3月12日


BBS(復旧?)

午後9時30分ころからBBSが表示されなかったようですが、10時9分現在復旧したようです。ひょっとするとわたしのパソコンだけの問題だったかも知れません。もし表示されない場合は「意味なし」でご連絡下さい。

2003年3月11日


あたりまえの暮らし

夜が更けて自然に眠くなる。日が昇るとインコがさえずり目が覚める。一日三回食べる。あたりまえの暮らし。回復するのに十年かかった。

あたりまえは、ありがたい。

2003年3月9日


女の平和

反戦運動にもいろいろな形がある。演劇もそのひとつ。スーザン・ソンタグが戦火のサラエボで『ゴドーを待ちながら』を演出したのが好例。そして今日、世界中で古代ギリシアの反戦喜劇が上演されている。

リュシストラテ・プロジェクト。

リュシストラテは紀元前411年に上演されたアリストパネスの喜劇。邦題は『女の平和』。ペロポネソス戦争のまっただなかで破滅しつつあるアテネ。和平を望むアテネとスパルタの女たちは、男たちが戦いをやめるまで褥をともにするのを拒む。これが見事功を奏して終戦になる、という話。

現時点で59ヶ国、998の公演が行われている。日本は東京と名古屋。公式サイトはこちらです

17時58分現在、1029公演。

2003年3月3日


キーワード

Google や Yahoo などの検索エンジンでこのサイトを見つけてご来訪する人が、毎日何人かいる。キーワードでいちばん多いのはわたしの氏名だ。そして「スペイン語講座」「悪魔、講座」「スペイン演劇」とつづく。

それはいい。だが、「皮袋」というキーワードでここにたどり着いた方がいる。たしかに元旦にリニューアルしたとき、「ごあいさつ」のなかで皮袋という言葉を使いはしたが、それにしても、この人は皮袋について調べたかったに違いなく、であれば、このサイトを眺めてどんな気持ちになったのだろう。皮袋についてわたしは無知である。申し訳ない気持ちだ。

なかには「農耕と園芸」で検索した人もいるし、「壽司」でやってきた人までいて、なんだかよくわからないが、いちばんわからないのは「なんともはや」で検索した人である。

いったいこの人は、「なんともはや」について、何を調べたかったのか。機会があれば教えてほしい。

2003年3月2日


春宵感懐

なんとなく中原中也の詩を思い浮かべたりします。

雨が、あがつて、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴めない。
 誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
 ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
 けれども、それは、せない……

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがつて、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。

2003年3月1日


SIDE MENU

昨日の午後あたりから、「語尾取り」「とりかえっ語」「四字熟語」などが表示されなかったと思います。更新作業でちょっとしたミスを犯してしまったせいです。ラッサナ・ラマヤさんに指摘されてはじめて気づき、直しておきました。ラッサナ・ラマヤさんありがとう。

引き続き、大いに遊んでください。

2003年2月27日


服役

大麻所持で起訴された中島らもが保釈された。ファンとしては、どんなコメントを発表するのかあれこれ想像せずにはいられないが、さすがはらも、想像をはるかに超えていました。以下は日刊スポーツ芸能欄の記事。

「日本全国民善男善女、ことに読者の皆さま、出版社、知人、友人、妻、子供、飼っている犬、猫、ハムスター、すべての動物たち、留置所、拘置所の悪党たち……伏しておわびを申し上げます。とにかくざんきの念に堪えません」

らもだ。まぎれもなく、ここには、らもがいる。

「大麻解放論者だが、法治国家の日本では吸わないと著作で公言していたのに、魔が差して大麻を吸ってしまいました。アムステルダムで吸うべきでした。自身の法に照らして、アメリカ式に56億7000万年の刑に処します」

大麻解放にはわたしも賛成だが、こんなおもしろいコメントが聞けなくなるなら、もう少し禁止しておけと国会に言いたい。

2003年2月26日


クレヨンしんちゃん

うほほ~い、オラだゾ。

オラのアニメ、スペインでも大人気だゾ。タイトルは "Shin-Chan"。マドリードは Telemadrid、ガリシアは TVG、カタルーニャは TV3 で絶賛放送中。でも国民党が「児童教育の時間帯にふさわしくないから放送時間を変えろ」ってカタルーニャ議会に要望書を提出したゾ。照れるなァ。

去年の映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞だゾ。

見せたくないならテレビ消せば? オラのぞうさん見せちゃうゾ!

2003年2月25日


衆人環境

近所のメガネ屋にレンズクリーナーを買いに行ったら、レジで「先生!」と声をかけられてびっくり。2年前に授業をとってくれた教え子でした。

どこで誰に目撃されているか、わかったものではない。もちろん、目撃されるとまずいようなことはしていないのだが。

2003年2月24日


セザール賞

フランスのアカデミー賞、セザール賞のヨーロッパ最優秀作品賞にアルモドバルの『話してごらん』が選ばれた。めでたいじゃないか。

2003年2月23日


トライトーン

3月4日と5日、名古屋ブルーノートに登場する。

カーラジオからシンガーズ・アンリミッテッドが流れてきた。98年12月だ。今どき珍しいなと思ったら、「はい! トライトーンのみなさんでした」とアナウンサー。生演奏だと知ってびっくり。早稲田のサークル出身の日本人だと知って二度びっくり。

男声3人女声2人。スウェーデンのリアルグループやキューバのボーカル・サンプリングには一歩及ばないが、現役日本人アカペラ・グループでは最高峰。シンガーズ・アンリミッテッドの世界を生で再現するといえば、その凄さが少しはわかってもらえるだろうか。

予約受付中。

2003年2月22日


Reel Evil

アリエル・ドルフマン、やはり黙っていません。

ブッシュが「悪の枢軸」と呼ぶイラクと北朝鮮、イランの映画を、勤務先のノースカロライナ州デューク大学で来週から上映すると発表。「ならず者国家」のキューバとシリアとリビアのもやるらしい。

初日の26日はイランのバフマン・ゴバディ監督作品『酔っぱらった馬の時間』。

企画タイトルは Reel Evil。にくいね。

2003年2月21日


コメディアンツ

コメディアンツが債務不払いの申し立てをしたというニュースがきのう飛び込んできた。

スペインの劇団ではおそらく世界一有名なコメディアンツ。

"Bi" の中国公演の制作費が予定の3割増になったり、"Boccato di Cardinale" が仲介業者のせいで公演中止の憂き目にあったり。災難続き。"Boccato di Cardinale" は観客に地中海料理をふるまう晩餐会のパフォーマンス。

「同時多発テロ以来、イベントやパフォーマンスがかなり中止されたのが痛い」と、代表のジョアン・フォントが嘆いている。こんなところにもテロの影響はある。

コメディアンツとは何者か。詳しくはメインページの劇団紹介で、と言いたいところだが、まだ書いていない。書きます。そのうち書きます。

2003年2月20日


ワイルダー

四月に名古屋の名東小劇場でビリー・ワイルダー特集があります。

『お熱いのがお好き』がスクリーンで観られるとは。Some Like It Hot を〈お熱いのがお好き〉と訳した人はえらいよ。握手したい。

2003年2月19日


芝居

たまには仕事の宣伝をしてもいいですか? いい? ありがとう。

今月17日(月)25時から衛星第二で『言葉』という芝居が放送されます。アルゼンチンに潜伏しているナチ戦犯アイヒマンを捕らえてイスラエルの法廷に出廷させる任務を負った諜報部員たちの話。アルゼンチンだからスペイン語を話す人が出てくる。そのセリフ、翻訳しました。たぶん一瞬で終わると思いますが。作者は山崎正和。演出は文学座の鵜山仁。劇団「シアター21」の公演です。

2003年2月15日


あしたのテレビは大変です

明日15日の深夜テレビはすごいことになっています。

24時45分から衛星第二で『ベルリン・天使の詩』(1987)。ヴェンダースなんて嫌い! という人、せめて冒頭の詩の朗読に耳を傾けていただきたい。ドイツ語の響きの美しさにわたしは心を奪われました。

26時25分からCBCで『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)。最近おもしろいコメディーがないと嘆いているそこのあなた。黙って観なさい。ただし東海地方オンリー。

26時55分からふたたび衛星第二で『オリーブの林をぬけて』(1994)。こういうラストシーンを撮れる人はなかなかいません。必見。

2003年2月14日


ありがとう

昨夜は楽しかった。ゼミ四年生諸君、ありがとう。

2003年2月11日


サンチョ・パンサ

先月チリのサンティアゴ国際演劇祭に参加した劇団らせん舘『サンチョ・パンサ』が好評らしく、6月のマイアミ演劇フェスティバルに招待されました。演出家の嶋田三朗さんによると、お客さんたちは大いに笑ってくれたとのこと。翻訳者として、原作者の多和田葉子さんのユーモアが伝わったことがなにより嬉しい。

東京、大阪、名古屋、スペイン、ドイツ、チリ。そして北米へ。サンチョ・パンサの旅は続きます。

2003年2月7日


考える

落ち着いて考える。それが大事ではないか。

アメリカはどうしてもイラク攻撃を断行するつもりらしい。理由は「ひそかに大量破壊兵器を開発している証拠があるから」。では、核を保有しているとエドワード・サイードが証言しているイスラエルについてはどうかといえば、査察のサの字も出てこない。

ブッシュは1978年に石油採掘会社アルブスト・エネルギー社を設立しています。社名変更や合併をくりかえして1986年にハーケン・エネルギー会社に買収されますが、ブッシュはハーケンの株を入手して年間12万ドルの顧問料をもらっていました。アルブスト・エネルギー社にはオサマ・ビン・ラディンの兄も出資していたそうです。オサマ・ビン・ラディンはソ連のアフガン侵攻を阻止するためにCIAが育てた、というのは周知の事実。

ブッシュと石油とビン・ラディン。

クリントン政権は、絶対に無理だといわれていた厖大な財政赤字を解消し、なんと国家財政を黒字にしました。ブッシュ政権はその流れを逆行させ、史上最悪の財政赤字を記録しつつあります。

湾岸戦争に「勝利」して圧倒的な支持率を誇ったブッシュ・シニアが財政悪化でクリントンに負けたことを、ブッシュ・ジュニアは忘れたのでしょうか。

それより、オサマ・ビン・ラディンをつかまえて法的に裁くという国際法の手続きはどうなったのでしょう。

落ち着いて考える。いまわたしにできるのはこれだけです。

2003年2月5日


NHK

2月1日は本放送開始50周年、16時間の生放送だそうです。なんだか、NHKが日本のテレビの歴史をつくったような宣伝ぶりで、たしかにそのとおりなのですが、でもちょっとちがう。当初の開局予定はもっと遅かったのに、それを早めたのはアメリカです。

1950(昭和25)年、アメリカのテレビ所有世帯が300万を超えます。

共和党上院議員のカール・ムントが「Vision Of America 構想」を発表。国務省の対外宣伝放送機関 VOA (Voice Of America) をテレビでも行うというもの。

51年4月にムントは、共産主義の脅威に対抗するためドイツと日本にテレビ網を敷く必要性を上院で力説しました。これが読売新聞の正力松太郎の耳に入り、ムントの肝いりでアメリカが技術や設備の提供とドル援助を約束。朝鮮戦争のまっただなかでNHKが開局を早めたのにはこういう背景があります。GHQが撤退して日本が「独立」したのがほんの前年、52年の4月28日ですから、しかたがないですね。

てなことをふりかえりながら、「ジェスチャー」「夢であいましょう」「ひょっこりひょうたん島」「サンダーバード」「プリンプリン物語」の再放送を楽しみにしています。

2003年1月24日


藪入り

松の内があけました、と思ったら、「まだや」と関西出身の人にいわれました。大阪あたりでは15日の薮入りまでが松の内なんですね。知らなかったよ。昔はどこでも薮入りまでだったから、伝統が息づいているのですね。

藪入りといえば、落語「藪入り」。

奉公にだした一人息子の亀が藪入りで3年振りに帰ってくる。前の晩から楽しみで一睡もできない父、熊。

朝の5時。

女房に「飯を炊いてやれ」。「いま炊いたらあの子が帰って来るころには冷や飯になっちまうよ」「冷や飯でもいいから温けェ飯食わしてやれ」。

亀の帰宅。亀は正座し頭を下げてあいさつする。

「めっきりお寒くなりました」

感激のあまり熊はひとことも発することができず、顔すら拝めない。涙。

「よっぽど大きくなったンだろうなあ。おい、代わりに見てくれ」と女房に頼む始末。

女房が亀を立たせる。「オレより大きい」「あんたが座っているんでしょ」。

「お口に合わないでしょうが」と、土産の菓子折りを手渡されて、また涙。

女房が亀の財布の中身をあらためると15円入っている。はじめての里帰りにしては多すぎる。熊はくすねた金だと勘違いして、湯屋から戻ってきた亀をといつめる。泣き出す亀。女房がなだめて訳をたずねる。亀がしゃくり上げながら事情を話す。

「ネズミを獲って交番に持っていったら懸賞金が当たったので、喜ばせようと持って来たんです」

ほっとした熊が、ひとこと漏らしてオチ。どんなオチか。それをいっちゃあおしまいよ。「藪入り」はいろんな噺家がやってますが、わたしのおすすめは三遊亭金馬。

2003年1月9日


ごあいさつ

どんな新年をお迎えですか。

ご覧のとおり、サイトのデザインを一新しました。ヘアスタイルをあたらしくして気分を変える。それをウェブでやってみようと思うのです。

3月に大学を辞めます。理由は長患いの病。勤務した5年間、入院したり休職したりで同僚と学生には迷惑のかけどおしでした。

人生を一からやり直す、というと大げさですが、とりあえず仕切りなおしをしよう、そう決めました。なにかきっかけがほしい。そうだ。「新しい酒は新しい皮袋に」というじゃないか。形から入ろう。で、サイトの形を変えることにしました。

スペイン演劇をメインにします。今までのページも大部分引き継ぎます。実際にはあまり変わりばえがしないかも知れません。人間、ちょっとやそっとで変われるもんじゃありません。「語尾取り」や「とりかえっ語」の常連のみなさんご安心を。

在野で研究する。食えるのでしょうか。わかりません。不安だけど、ちょっと楽しみでもあります。「どうってこたぁねえ」。恩師の言葉です。

theatrum mundi は変わります。そして、theatrum mundi は変わりません。

今までありがとう。これからもよろしく。

2003年1月1日