穏やかな年越しでありますように。
2005年12月31日
お知らせページでご案内のとおり、みんなで小説コーナーの「ハリー・ポッターと冬の中心でソナタを叫ぶ」が見事に完結しました。たぶん「完結した」のだと思います。そう思いたいです。
あらためて全篇を読み返すと、あっけらかんとしたでたらめぶりが、月並みな言い草ではございますが感動的です。
執筆に協力して下さった皆様には心から、「そんな暇があるなら部屋の掃除をしたらどうだ」と申し上げます。
2005年12月27日
2005年12月26日
2005年12月22日
ひどい映画、もっともっと観たいな。
2005年12月20日
……臨時ニュースです。昨夜未明東京湾に怪獣が出現しました。東京都内は壊滅的な打撃を受けています。地球防衛軍によると怪獣はギドラウスという突然変異の怪物で、関西方面に進路をとっています。内閣の緊急対策本部は情報収集につとめています……
-隊長!ミサイルが効きません!
-なんだと?ではレーザービームを使え!
-レーザーも試しました。効きません!
-うーむ……このままでは日本が滅びる……。こんなとき、こんなときに、クエスチョンマンが来なければいいが……。
-……お待たせ!
-あ、クエスチョンマン!
-ごめんね、遅くなって。
-来てくれなくていいから。(爆発音。ビルが崩壊する音)
-うわあ、すごいね。どうしたの?ねえねえ、どうしたの?
-見ればわかるだろ!怪獣が暴れてるんだ!
-所長!首相からお電話です。
-うむ。こっちに回してくれ。
-怪獣?え?怪獣なの?それって、それってもしかして、ちょーヤバくない?
-いいから帰ってくれ。いま忙しいんだ。あ、首相。今のところこちらで把握しているのは……。
-ねえねえヤバいって絶対。みかん食べる?
-おい、所長の邪魔をするな。
-要らない、みかん?甘いよ、すっごく。
-いいから帰ってくれ!
-どうして?
-お前がいると邪魔なんだよ!
-みかんとグレープフルーツ、ビタミンCが多いのはどっち?
-頼むから帰ってくれ!
-歌うたってくれたら帰る。
-なんだって?
-歌。聞きたいな、「瀬戸の花嫁」。今ね、すっごく聞きたい気分なの。
-ふざけるのもいい加減に……(チュドーン!)所長!攻撃されました!
-ねえねえ所長さんってさ、すっごく偉そうだけどさ、ほんとのところはどうなの?
-頼むから帰ってくれえええ!
2005年12月16日
アフガニスタンの映画を観ませんか。
今夜24時40分、NHK衛星第二で『アフガン零年』を放映します。2003年、アフガニスタン+日本+アイルランド合作。セディク・バルマク監督。
続けて26時05分からイランのアッバス・キアロスタミ監督『5five~小津安二郎に捧げる~』もあります。
日にちを間違えました。今夜ではありません。15日(金)です。なぜまちがえたか。お釈迦様でもわかるまい。だってわたしは粗忽者。
15日(木)、24時42分、NHK衛星第二で『アフガン零年』が放映されます。アフガニスタン+日本+アイルランド合作で制作は2003年、監督はセディク・バルマク監督。
続いて26時08分からイランのアッバス・キアロスタミ監督『5five~小津安二郎に捧げる~』もあります。
2005.12.12 粗忽天皇
2005.12.10 みなしごチェック
きょうは国連で障碍者の権利宣言が採択された日。それとは関係ないけど、夏目漱石の命日でもあります。来年は没後九十周年。以上、粗忽天皇通信でした。
2005.12.9 粗忽天皇
2005年12月8日
とりかえて、とりかえて早や四年。ちょっとすごいと思います。感謝感激でございます。これからも、とりかえにとりかえようではありませんか!
2005年12月7日
- ムラタ君。
- あ、社長!おはようございます!
- おはよう。いつも元気があっていいね。
- ありがとうございます!……あれ?……
- ……どうした?
- あ、いえ。社長、背、伸びました?
- 気づいたか。
- ええ。なんかきょうはいつもより高いような……。
- ついに買ったよ、シークレットブーツ。
- シークレットブーツ?
- 誰にも気づかれずに背が伸びる。みんなを驚かせてやろうと思ってな。どうだろう、驚くかな?
- 別の意味で驚きました。
- なんだ、別の意味って。
- 今時売ってるんですね、シークレットブーツ。昔はよく雑誌の広告とかで見ましたけど。まさか今でも売ってるとは。びっくりしました。
- 君のびっくりは的を外れている。
- え?
- こんなところで油売ってないで、仕事をしなさい!
- 社長!
2005年12月5日
小島章司さんの公演、あすとあさってです。ぜひル テアトル銀座に足をお運び下さいませ。
2005年12月2日
毎日これを食べる高3次男君への同情を禁じ得ません。
2005年11月30日
きのうの毎日新聞「今週の本棚」に、先月ご紹介した白水社の『ほめことばの事典』の書評が載りました。評者は沼野充義さん。
巻末の作家索引がすごいことになっています。ホメロス。世阿弥。志村けん。この三人のことばをいっぺんに読める本は、世界中どこをさがしてもほかにないでしょう。アインシュタインとサトウサンペイ。バルザックとチチ松村。カルデロンと桃井かおり。目次だけでも楽しめます。
2005年11月28日
非戦を選ぶ演劇人の会がリーディングを行います。12月8日、なかのZERO。イラクの現状についての座談会やファルージャのドキュメンタリー上映などもあります。詳しくはオフィシャルサイトで。
2005年11月25日
桃太郎は犬とサルとキジを連れて歩き始めた。山を越え、谷を越えた。途方もない時間が過ぎた。犬が頭を垂れている。サルは桃太郎の肩に乗ったままだ。キジは犬の背中で眠っている。
「オニガシマか」桃太郎は呟いた。
「どうやら一杯喰わされたようだな」
桃太郎がつぶやき、来た道を引き返そうとしたそのときだった。地平線の彼方にきらきらと輝く光が見えた。桃太郎は歩き続けた。海に出た。浅瀬の彼方に島があった。
「あわてる乞食はもらいが少ないってやつだな」桃太郎はポケットからウィスキーの小瓶を取り出し、景気づけに一口飮んだ。熱い固まりが喉を下る。ウィスキー。それは希望を失った男のたったひとりの友人。
桃太郎と犬とサルとキジは浅瀬を渡りオニガシマに着いた。大きな門があった。犬が門を叩いた。
「誰だ」中から野太い声がした。
「合言葉を言え」
「スピーク・イージーに気をつけろ」犬がこたえた。
「何者だ」
中が騒然となった。サルが塀をよじ登った。キジは空から攻め込んだ。門が開くと桃太郎は抜き身の刀で鬼たちに挑みかかった。竹の棒を持った鬼が躍りかかった。桃太郎の刀は竹の先端をとらえた。ぐいぐい刀を切り込む桃太郎。竹はふたつに割れ、竹を握っていた鬼の指が宙を舞った。
勝負はあっという間についた。鬼の大将が、もう悪いことはしない、だから勘弁してくれと土下座した。仲間のひとりが宝物の山を持って来た。桃太郎はその中から小さなブローチを拾い上げた。
「もらっておくぜ」
「全部さしあげます」
「いや、これだけでいい」
金と真珠にトルコ石とダイヤモンドをあしらった、花籠の形をした十九世紀イギリス製の小さなブローチだった。桃太郎は内ポケットにしまった。
「どうぞ、これも持って行って下さい」鬼が冠を差し出した。桃太郎はちらりと見て言った。
「パールクラウン二世に用はない」
鬼たちはびっくりした。それは王冠の歴史の中でもいちばん華やな時代といわれる中世ビザンチン様式の王冠だった。
「これからはその王冠を見るたびに俺のことを思い出せ」桃太郎はマールボロに火をつけた。一口吸い、そしてこう付け加えた。
「今度悪さをしたら、その冠を乗せる頭がなくなるからな」
鬼たちは全員土下座した。桃太郎は吸いかけたマールボロを捨て、かかとで踏み潰し、視線を海の彼方にやった。潮騒のざわめきの中に彼はいた。海がこんなに青いはずがない。そんな海だった。
桃太郎たちはジーサンとバーサンの待つ家に帰った。ジーサンとバーサンは桃太郎が無事を祝った。もちろん、よく冷えたコワントローで。
2005年11月24日
Yahoo!で「小泉 内閣 組閣」を検索して当サイトに来る人が急に増えた。どうしてだろうと、試してみた。驚いた。26万件中だ。ちょっと怖い。
2005年11月23日
桃太郎が元気に歩き出すと向こうから犬が一匹やってきた。犬は桃太郎を見てちょっと驚かせてやろうと思った。こう言ったのさ。「どこに行くんだい」ってね。犬が口をきいたので桃太郎の驚きようといったらなかった。気を失い、バタリと倒れた。犬が桃太郎の鼻先をぺろぺろ舐めると息を吹き返した桃太郎は、まだ信じられないという顔で犬を見た。「ふん。犬が人間のことばをしゃべったくらいで驚くとはな。火星に人工衛星飛ばす時代だぜ」「俺が生まれた桃の世界にはそんな犬はいなかった」。今度は犬が失神した。
死んだように眠っている犬の鼻先にきびだんごを一つ置き、桃太郎は気を取り戻して元気に歩き始めた。すると今度は猿が来てこう言ったのさ。「桃太郎さん、桃太郎さん。どこに行くんですか」ってね。桃太郎は驚かなかった。犬がしゃべるんだ、猿がしゃべったっておかしくはない。だから落ち着き払って答えた。「オニガシマに行くんだ。悪い鬼を退治しにね」「一緒に行ってもいい?」「ああ、いいよ。ただし一つ条件がある。なぞなぞに答えるんだ」。桃太郎はとっておきのジョークを披露した。「アメリカ人は電球が切れると三人で取り換える。どうしてだ?」猿は黙っていた。桃太郎はにやりと笑って言った。「一人がはしごを持ってくる。あとの二人は電球の山を持ってきて切れてない玉を探すのさ」。猿は笑わなかった。アメリカン・ジョークがわからない奴に用はないと桃太郎がすたすた歩き出すと、猿が言った。「カナダ人は電球が切れるとどうするか?」桃太郎は考えた。「わからない。降参だ」。猿が答えた。「何もしない。カナダ人は取り換えない。自然をあるがままに受け入れるんだ」。桃太郎はキョトンとした。「カナダ・ジョークもわからないのか」。猿はあきれて、桃太郎からきびだんごを一つくすねた。
犬と猿を連れて桃太郎が先へ行くと今度はケーン、ケーンとキジがやって来た。「桃太郎さん、どこに行くんですか」「オニガシマさ。鬼退治に行くんだ」「お腰につけたものは何ですか」「きびだんごだよ」「一つ下さい。お供します」「いいいとも。ただし条件がある。話を聞くんだ」。いいですよとキジは答えた。「ソ連時代、アメリカ人はロシアに潜入させるために一人の秘密エージェントを何年もかけてトレーニングした。凄腕だった。キルトのジャケットに長いブーツをはき、大きな耳当てのついた帽子をかぶって、遂に彼は飛行機から飛び降りロシア領土に降り立った。森から出ると丸太小屋が目に止まった。彼は小屋に行き、そこに住んでいた老婆に一杯飲ませてほしいと行った。『あんた、スパイだね』老婆が言った。『おばあさん、どうしてそんなこと考えるんだい?』『だってこの辺じゃ黒人は一人もいないよ』」。キジがきびだんごを喉につまらせた。桃太郎はとっておきのアメリカン・ジョークがウケたのが嬉しくて、キジの背中をトントン叩いてきびだんごを吐き出させた。「面白かったかい」「どうして知ってるの?」「なにを?」「ぼくのこと」「え?」「それ、ぼくだよ」「ぼくだよって……君がモデルなの?」キジはきびだんごが入っていた袋で顔をごしごし拭いた。化粧がとれた顔は真っ黒だった。犬が失神した。
2005年11月22日
イーサン・コーエンを憶えているか。昔の話だ。昨日?そんな昔のことは……いや、もっと昔だ。これはイーサンの兄、ジーサンの物語だ。
ジーサンはバーサンという女と暮らしていた。暮らし向きは悪かったらしい。むさくるしい掘っ立て小屋だ。場所ははっきりしない。世界中の刑事が捜したが、皆お手上げだった。フィリップ・マーロウでさえ見つけることができなかった。
その日ジーサンはいつものように五時に起きて、冷蔵庫からコワントローを一本、戸棚から透き通ったシャンペン・グラスを二つ取り出し、卓袱台においた。
「同じものでいいかい?」
ジーサンがバーサンに訊ねた。バーサンはうなずいた。彼女はいつもうなずく。機械仕掛けの人形のように。ジーサンはグラスにシャンペンをなみなみと注いだ。
「君の瞳に乾杯」
冷たく響くグラスの音。ジーサンはドアを開けた。乾いた秋の空気が彼の頬を撫でる。
「じゃあな」
「どこへ行くの?」
「決まってるだろ。山だ。ボストンに行くとでも思ったか」
「やめて」
バーサンはグラスを卓袱台に置いてうつむいた。ボストンの話をするとバーサンは決まってそわそわする。ジーサンはバーサンに構わず、グラスを一気に空け、山に芝を刈りに行った。バーサンはため息を一つつき、川に洗濯に出かけた。いつもと変わらない平凡な朝だった。
バーサンが川でランジェリーを洗っていると、川上から大きな桃が一つ流れてきた。バーサンは桃を拾って家に持ち帰り、ジーサンの帰りを待った。
「スパークリングワインでも作るのか?」
バーサンが顔を上げると戸口にジーサンが佇んでいた。背中にはどっさりシバを背負っていた。
「流れてきたのよ」
二人は見つめ合った。言葉はいらない。割ればいいのだ。二人はジーサンのアーミーナイフを桃に入れようとした、その時のことだ。桃がぱっと割れて、中から男の子が出てきた。
「待たせたな」
男の子はそう言って冷蔵庫からコワントローのボトルを取り出し、ボトルごとぐびぐびと飮んだ。ジーサンとバーサンは喜んだ。三角関係。それも悪くない。人生は退屈だ。この子が刺激を与えてくれるかもしれない。ジーサンとバーサンは桃太郎と名づけて男の子を育てた。桃太郎はみるみるうちに育ち、屈強で心やさしい少年になった。
ある日のことだ。
「出かけてくる」
桃太郎はジーサンとバーサンに言った。オニオンスープを作りながらバーサンが訊ねた。
「どこへ」
「オニガシマさ」
「そんな町、聞いたことないわ」
「町じゃない。島だ。鬼が住んでる島だ。俺は悪い鬼を退治しに行く。行かなければならないんだ。だから、日本一のきびだんごを作ってくれ」
「オニオンスープじゃだめ?」
「オニオンスープはだめだ。きびだんごじゃないとだめだ」
バーサンはしかたなくきびだんごを作った。ジーサンは「日本一」と書いた旗を持たせた。
「気をつけろよ」
「ああ。わかってる」
ジーサンはバーサンの肩に腕を回して桃太郎を見送った。
(つづく)
2005年11月21日
「よい音楽が面白くない場合には、よい音楽を作つた人の心のエネルギーが聴く方に欠乏してゐるからだ。心のエネルギーといふものは、りきむ生ずるものではなくて常日頃沈澱蓄積するものだ。
音楽のみならず一切物の鑑賞には、すべてこの心のエネルギーが最も重要である。
そして、心のエネルギイが蓄積されるのは、自己に忠実であり得られることによつてである。」
中原中也「日記」『中原中也全集』第五巻、角川書店、p.129
2005年11月18日
スパムメールといえば昔は英語と相場が決まっていた。たまにロシア語のなんかもあって、見た瞬間、あ、スパムだな、とわかったものだ。
最近はちがう。日本語だ。しかも、たしかネットのルールではタイトルの頭に「未承諾広告」と断りを入れなければならないはずで、初期の頃はたいていメールのタイトルがこれで始まったが、ルールがたちまち破られたのはスパムを送りつける連中だけに、当然のことだった。この頃はこんなのが届く。
「いきなりすみません!」
本当にいきなりだ。もちろん読まずに削除する。
「最新号に関しまして」
「最新号が到着しました」
最新号らしい。最新号が届いたのだ。
「お疲れ様です。例の詳細についてです」
仕事関係の人からのメールを装っているのだろう。これなんか、うっかり読んでしまう人がいるかも知れない。だがスパムはやはり風俗だ。セックスや風俗がらみが多い。
「女房の浮気」
「奥さんとお尻」
「知的女性の下半身」
最近笑ったのはこれだ。
「彼方に投資します」
彼方に投資してどうする。2005年11月16日
小島章司2005のご案内です。
パウ・カザルスを想いながら、小島章司がひとりで踊ります。
スペシャルゲストはカンテのミゲル・ポベーダ。
リト・イグレシアスのチェロ、オルビード・ランサのバイオリンの生演奏もあります。
2005年11月13日
おお、グレートスピリットよ、私は嵐の中にあなたの声を聞きます。
あなたの息吹は、万物に生命を授けています。
どうか私の言葉を、お聞き届けください。
あなたが生んだたくさんの子供の一人として、
私はあなたに心を向けているのです。
私はこんなに弱く、そして小さい。
私にはあなたの知恵と力が必要です。
どうか私が、美しいものの中を歩んでいけますように。
赤と緋に燃える夕日の光を、いつも目にすることができますように。
あなたが創り出したものを、私の手がていねいに扱うことができますように。
いつもあなたの声を聞き取っていられるよう、
私の耳を研ぎ澄ませていてください。
あなたが、私逹人間に教え諭したことのすべてと、
一枚一枚の木の葉や一つ一つの岩に隠していった教えのすべてを、
私が間違いなく理解できるよう、私を賢くしてください。
私に知恵と力をお授けください。
仲間たちに秀でるためではなく、人間にとっての最大の敵を
わが手で打ち倒すために。
汚れない手とまっすぐな眼差しをもって、
あなたの前に立つことができますように。
そのときこそ、私の命が夕焼けのように地上より消え去っていくときにも、
わが魂はあなたのもとに堂々と立ち返ってゆけるでしょう。
カナダ・オジアブ族の祈り
中沢新一『神の発明 カイエ・ソバージュ Ⅳ』講談社選書メチエ、80-81ページ
2005年11月1日
白水社から出版されたばかりの榛谷泰明『ほめことばの事典』に、拙訳のカルデロン「名誉の医師」からセリフがふたつ採用されました。
「わたしがこのあたりで狩りを催したのは、朝日を迎える隙を与えないように獲物を追い立てるためではなく、天高く蒼穹を舞い、日輪の宮殿の黄金に輝く手すりにも手が届く鷺、そう君を探し出すためだったんだ」
(王子エンリーケが人妻のドニャ・メンシーアに)「ぼくはかつて一条の光を愛していて、その輝きは、光を隠していた最大の天体をすら呑み込むものだった。たしかに炎がぼくを照らしたのだ。でもそれは、神々しいばかりに美しい君の前ではかすんでしまう炎だったんだ。君は光のるつぼだからね。太陽が昇るまでは、星も美しくみえるじゃないか」
(ドン・グティエーレが妻メンシーアに)現物をまだ見ていないのですが、編集部によると、「古今東西の文献から、約八百項目、三千事例余の『賛辞表現』を五十音順に配列し、まとめたもの」だそうで、540ページ、本体価格3,800円だそうです。榛谷泰明さんは『レトリカ 比喩表現事典』(白水社)の著者でもあり、これはわたしも愛読しています。
以上、粗忽天皇よりご報告申し上げます。
2005年10月17日
おかげさまでサイトを開設して五年経ちました。これからもよろしくお願いします。
2005年10月6日
詩人や作家、舞踊家、学者、ジャーナリストなど37人がアンダルシアを論じた本が9月30日付で出版されました。わたしもロルカのことを書きました。アマゾンは今日現在在庫切れ。丸善のサイトも在庫僅少とのことです。どこかでお手にとって下されば幸いです。
2005年10月2日
今年が結成25周年。カタルーニャの過激なパフォーマンス野郎たちが久しぶりに来日します。名古屋と大阪。しかも世界初演。カフカの『変身』。
名古屋はあす14日と15日午後7時から Zepp 名古屋で。大阪は20日午後7時シアターBRAVA!。
大阪公演のチケットが二枚余っています。1階K列○番と○番(連番)。欲しい!という方はメールでご連絡下さい。一枚七千円です。
2005年9月13日
青年劇場がアリエル・ドルフマンの『谷間の女たち』を再演します。去年来日したドルフマンに「今こそ上演しなさい」と背中を押されたのが大きなきっかけだったそうです。演出は鵜山仁。
9月22日かめありリリオホール。25日前進座劇場。27日~10月2日紀伊国屋サザンシアター。10月3日府中の森芸術劇場ふるさとホール。詳細は劇団のサイトで。
2005年9月7日
きょうから四日間、長久手町文化の家で開催されます。入場料千円。四日間有効。
シンポジウムが20もあって大変です。森山直人・鐘下辰男・松田正隆の「『戦争』の時代と演劇」とか、しりあがり寿・北村想らの「マンガと演劇について」、芹川藍・わかぎゑふ・鈴木裕美「私が芝居を選んだ理由」、流山児祥・丹野賢一・キチモトマサヤ・くまがいマキほかの「表現の自由と規制について」、田口トモロヲ・西田シャトナー・竹内銃一郎・鴻上尚史などの「映画と演劇のドラマツルギー」、松本雄吉・加藤ちか・田岡一遠の「舞台美術シンポジウム」などなど。
別役実の演劇講座「別役実の《可笑しいコト》何か」、斉藤憐の戯曲論「日本語の芝居」、佐藤信&斉藤憐の「ザ・対談」――ザが恥ずかしいよ――あたりはいかにも「劇作家大会」っぽくて、お、やってるな、と思いますが、深津篤史vs寺十吾vs羊屋白玉が「舞台で〝食べるということ〟~ザ・料理對決~」で〈消え物〉対決をやるとか、野沢雅子・池田昌子・キートン山田・肝付兼太の「声優、チェーホフを読む。」あたりになると、「大会」というよりは「祭」と呼びたくなるほどで、小宮孝泰・モロ師岡・たかべしげこ・丹野賢一・佃典彦などの「独りぼっちシンポジウム」は果たしてシンポジウムとして成立するのか不安にさせられる。
鴻上尚史のワークショップとか、20分間の短編劇のバトル――NHKの「オンンエアバトル」形式――とか、いろいろあります。詳細は長久手町文化の家のサイトで。
2005年9月1日
- 社長!おはようございます。
- おはよう。ほう、朝から掃除か。
- はい!少しでも気持ちがいいようにと思いまして。
- そうか。偉いな君は。ところで名前なんていったっけ。
- ムラタです。いい加減覚えて下さいよ、もう四年目ですから。
- ムラタ君か。ムラタ、ムラタ……。以前話したと思うが、社員の名前は絶対覚えない主義でね。
- ええ、うかがいました。(よく社長が務まるよな……)
- ん?なんか言ったか?
- あ、いえ。
- なんか、考えただろう?
- いえ、なにも……。
- そうか……。君は、寝首を掻くタイプか。
- はァ?
- カエサルにとってのブルータスか。
- よくわかりません……。
- わたしたちが信長と光秀だとしよう。
- はァ?
- どう考えても信長はわたしで、君は光秀。
- ……。
- つべこべ言ってないで仕事しなさい!
- なんにも言ってません!
- うるさい!さっさと働け!
- しゃ、社長!
2005年8月26日
昨年末の話なので思いっきり時宜を逸した、ものすごく遅いニュースですが、2004年12月16日付のニューヨーク・タイムズに名前が載りました。こちら(PDFファイル:735KB)です。
Mozilla Foundation が開発中のブラウザ「Firefox」をみんなで使おうよ、という全面広告。約一万人が出資、25万ドル集めて行いました。私も愛用者のひとりとして30ドル寄付しました。
なにしろ一万人の名前です。小さい文字がびっしり並んでいます。Adobe Reader で画面を400%くらいにまで拡大させると、ようやく一人ひとりの名前が判読できます。一ページ目の一番下の方に「FURUYA Yuichiro」とたしかにあります。
2005年8月20日
自他ともに認める粗忽天皇でございますが、世界最強のライバルが出現しました。
いずれサシで勝負したいものです。
2005年8月19日
2005年8月18日
Gracias por tu lección de euskara. Gero arte!
2005年8月7日
「坂本――命の重み、命の価値の非対称性ね。
辺見――そうですね。人命の価値もそうだし、光と闇もそうですね。光も完全にG7諸国というか、列強に吸い取られちゃって、アフガンはほとんど闇ばっかり。ほんとに暗い。夕方五時になったら真っ暗です。誰かが、人工衛星からみたら真っ暗闇だったといったことの意味が、行ってみてほんとにわかったですね。その闇も実に濃いんです。爆撃跡地の暗闇にたくさん犬がいて、やたら遠吠えするんですよ。朝になるとコーランの声が聞こえてきますが、夕闇が迫ると犬の遠吠えが夜中までずっと続いて、どちらも臓腑にこたえたですね。
光も非対称だけれど、いちばん感じたのは、九二~三年の内戦の凄まじさを含めて情報の非対称性です。アフガンについて語られることの少なさ。これは地球上のさまざまな事態についてわれわれが知るべき情報の不公正を象徴しているような気がしました。そのことは、じつは9・11までわからなかった。が、ベロリと剥いだ世界の虚偽の皮膜というのは相当なものです。ぼくはそこにこだわらざるをえません。」
逸見庸×坂本龍一『反定義 新たな想像力へ』朝日文庫、p.16-17
2005年7月20日
「 先日新聞で、よい記事を見た。
あるおばあさんが、夫の遺産何千万円かをだましとられた。しかしおばあさんには被害者意識はない。『話相手になってくれる』とむしろ喜んでいる、というのである。
それはそうだろう、と思う。金を握って死ぬより、親切な話相手が来てくれるほうがうれしいにきまっている。
昔こんな話を聞いた。
イギリスで、一人暮しのおばあさんが死んだ。おばあさんは毎日かかさず日記をつけていた。最後の十年間の文言は、日づけと曜日以外、すべて同じだった。
〈今日も、だれも来なかった。〉
おばあさんのバッグにどれだけのお金がのこっていたか知らないが、もしだれかが『こんにちはメリー』と明るい笑顔でたずねてきてくれたら、おばあさんはきっと、その人にバッグごと渡しても惜しいとは思わなかっただろう。
高島俊男「お言葉ですが……第493回 法返しがつかねえ」『週刊文春』2005.7.14号、98ページ
2005年7月15日
五十年以上前にご覧になった映画のショットがどんな順番で繋がっていたかを冒頭から正確に記憶なさっていた淀川さんにかなう批評家は、わたしが知る限り、まだ世界には現れていません。
淀川さんにたったひとつ自慢できることがございます。クリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』に間に合いました。
二度目のオスカーを獲ったヒラリー・スワンクは、不当にも『スタア誕生』でオスカーを獲れなかったジュディ・ガーランドにそっくりでした。ジュディ・ガーランドの誕生には間に合いませんでしたが、ヒラリー・スワンクには間に合いました。
最後にもうひとつご報告がございます。十数年来の北野武の『秀吉』プロジェクト、どうやら実現しそうです。エキストラはCGではなく本物の人間を二万人集めるそうです。
草々
2005年7月9日
耳を澄ます。
音が見える。
眼を閉じる。
色が聞こえる。
何もない。
「ないもの」が、そこには、ある。
すべてが、そこには、ある。
クリント・イーストウッド。
ヒラリー・スワンク。
モーガン・フリーマン。
『ミリオンダラー・ベイビー』。
2005年6月6日
こんなに興奮するサイトは久しぶり。面白いぞ、バンダイ。
2005年6月5日
ご常連の方ならご存知、漢字検索試験です。
2005年5月28日
今月1日から15日までの検索キーワード。543種。ヒット順です。
今回のお気に入りは―――
ビバ+いなかもの
金成日+豚汁
サルスベリの盆栽
足利 協和 知ってる
カスタネットのおじさん
ボリビア大使
髭をそる 髭をあたる
裸 気をつけい 罰
2005年5月25日
― あなたはきょう何をしてしまいましたか?
― 朝食を食べてしまいました。紅茶を二杯飲んでしまいました。
― 昼間は何をしてしまいましたか?
― 働いてしまいました。
― ずる休みするのではなかったのですか?
― はい。でも会社に行ってしまいました。人より多く残業してしまいました。
― あなたはもうおしまいですね。
― わたしもそう思います。
2005年5月23日
日本一の司会者、玉置宏さんにならいましてご挨拶申し上げます。半年のご無沙汰でした。
「あ、知ってますよ。〈一週間のご無沙汰でした。玉置宏でございます〉……。『ロッテ歌のアルバム』ですよね」
そうです。憶えている方も多いでしょう。
でもね。「昔の月の家円鏡、今の橘家圓蔵は玉置にレコードを借りてネタを覚えた」。ご存知でしょうか。玉置さんは昭和の名人たちの貴重な録音をたっぷりお持ちです。今は「横浜にぎわい座」の館長。NHK第一「ラジオ名人寄席」の席亭でもあります。
ここだけの話。ラジオの声にさすがに衰えが感じられます。「橋幸夫のデビューと氷川きよしのデビューで仕事ができた。司会者として思い残すところはありません」とおっしゃる玉置さんの名調子、今のうちに聞いておきましょう。
2005年5月13日
ご機嫌いかがですか。昨秋より日本国で亡命ライフをエンジョイしている粗忽天皇でございます。
「亡命ライフ?なにそれ」
疑問に思うのもごもっともです。そんなライフがあるものか。でも、あるのです。これだから世の中侮れません。
もうしばらく亡命ライフをエンジョイいたします。みなさまにとって良き春でありますように。
2005年3月10日