微笑問題

「清水ミチコ」の巻
2000.11.6

B:
いやあ、凄かったねえ。
A:
凄かった。あそこまでやるとはな。
B:
オレたちの期待を裏切らないね。
A:
ホント。三田佳子の次男覚醒剤で二度目の逮捕。
B:
なんの話だよ!
A:
ヤクの入手先は有森冴子。
B:
それは三田佳子が主演しているドラマの女医だろ! しかも降板が決定したんだよ。
A:
分かった。キムタクのテイチク移籍。ついに独立か?
B:
その話でもない!  たしかに移籍するらしいし、7月20日のTBS系「ジャスト」で〈一緒に海に行きたい芸能人〉ベストテンに入らなかったから、〈キムタク一人勝ち時代の終焉〉を口にする人もいるけど。
A:
じゃあ、あれだな、『週刊女性』とのトラブルで山口達也が愛犬のジュノンを改名した事件。
B:
なんだよそれ! そんなことが事件になるか! ジャニーズ事務所の話題から離れろ!
A:
分かった!  今年のレコード大賞新人賞は小柳ゆき、大賞は「さざんかの宿」に内定したという噂。
B:
なんで大川栄作なんだよ。さざんか、じゃなくて、サザンだろ。
A:
分かったぞ!
B:
やっと思い出してくれたか。
A:
とんねるずがロケをいやがって「生ダラ」が視聴率低迷、番組打切りの噂。
B:
そんな噂はどうでもいいんだよ! 愛知県立大の話であるだろ。
A:
なんか、ある?
B:
飛鳥祭でビッグなタレントのトークショーがあっただろ?
A:
ルー大柴?
B:
どこがビッグなんだよ!
A:
春一番?
B:
猪木の物真似しかしないアル中じゃないか!
A:
誰?
B:
我らが清水ミチコだよ。見に行かなかったのか?
A:
行くわけないだろ。こう見えても忙しいんだよ。
B:
もったいないなあ。
A:
去年も、おととしも、行かなかった。だから「三度目も正直」。
B:
ちゃんと大学祭のキャッチコピー、知ってるんじゃねえか!
A:
で、どうだったんだよ。
B:
盛り上がったのなんの、学長まで来た。
A:
よっぽど暇なんだな。
B:
お祭り好きで、大学祭に理解がある人なんだよ!
A:
清水ミチコといえば、最近、教育テレビで子供たちに物真似を教えてるな。
B:
そう。小さい頃から物真似が得意だったって言ってた。追伸簿には「いつもチョロチョロしている」と書かれてたんだってさ。
A:
塾、経営してるんだって?
B:
塾は塾でも物真似塾。有名人の顔真似の写真集を出した。今日もスライドで披露してくれた。
A:
山藤章二の似顔絵塾みたいなものか。オレ、雑誌で見たことあるけど、かなりキワドイよな。
B:
うん。藤桂子は似てたけど宇田多ヒカルはキツかったなあ。そっくりだったのが飯島愛。
A:
「私はセックスじゃないと愛情表現できないんです」。
B:
は?
A:
自伝『プラトニック・セックス』発売記念に「週刊文春」にインタビューして答えた言葉。
B:
おまえ、そんなもの読んでるんなら、学長を暇人呼ばわりできねえよ! だったら大学祭、来いよ。
A:
じつは行こうと思って名古屋駅でタクシー拾って運転手に「県立大までお願いします」って言ったら、着いた先が県立芸術大学だった。
B:
それは清水ミチコが実際今日逢ったトラブルだよ! なんでおまえが知ってるんだよ?
A:
県立大が三年前に瑞穂区から長久手に移転したのを運転手の野郎知らなくてさ、「県立大といえばココです」って言いやがんの。
B:
だからそれは今日清水ミチコがトークで喋ったことなんだよ!
A:
オレ、彼女のファンだから、分かるんだよ、彼女の身になにが起きるか。
B:
あやしい予言者か、おまえは。
A:
で、ほかの芸は?
B:
十八番の〈有名人作曲法〉。
A:
これは有名だな。ユーミンとか中島みゆきの真似で、ピアノを弾きながら、作詞と作曲のプロセスをいかにも二人の弾きそうなメロディーに乗せてパロディーにする。
B:
そう。でも今回は坂本龍一をやった。これが絶品。ピアノそのものがメチャクチャ巧いんだ。
A:
当たり前だよ。
B:
どうして?
A:
笑わせる芸人ってのは、本業のプロの歌手とかアーティスト以上に歌えて楽器も弾けて踊れなきゃ笑いがとれないんだよ。
B:
そういうものなのか。
A:
あの伊東四朗だってタップは踏めるしジャズは歌えるしのマルチタレントなんだぜ。
B:
知らなかったなあ。
A:
おまえ teatrum mundi の「芸人列伝」、読んでないな?
B:
ホームページの宣伝かよ! 坂本龍一の「ウラBTTB」から自然に『鉄道員』になって、それから『戦場のメリークリスマス」になるんだけど、舞台のスクリーンに清水ミチコの気持がそのつど字幕で出るんだ。で、「戦場から帰ってきた鉄道員がクリスマスに交差点でピアノを弾いていると癒される」というのが〈坂本龍一作曲法〉の結論。これには笑ったよ。
A:
でもあの顔、真似するのは難しかっただろうな。
B:
〈有名人作曲法〉は顔真似じゃなくてスッピンでやるんだよ!
A:
だったらもっと凄い人がいるぜ。
B:
誰?
A:
白山雅一。
B:
聞いたことないけど。
A:
声帯模写ってあるだろ。あれを発明したのは古川緑波(ロッパ)という人。
B:
戦前戦後の芸人だよね。
A:
それに対して歌声模写っていうのがある。
B:
清水ミチコの〈有名人作曲法〉もそれだよ。
A:
これを発明したのが白山雅一。
B:
どんな人なの?
A:
テレビには出ない。寄席だけ。やるネタは灰田勝彦とか東海林太郎とか三遊亭円生。
B:
ずいぶん古いな。
A:
灰田勝彦、聞いたことあるか。
B:
ないよ。
A:
戦前戦後の大歌手だぜ。紅白にも出ている。有名なのが「アルプスの牧場」と「きらめく星座」。
B:
いかにも古そうなタイトルだな。
A:
「アルプス」はヨーデルが凄い。
B:
ヨーデル?
A:
「♪焼ァき肉バイキングで食ァべ放~題~、食ァべ放~題~、ヨ~ロレイヒ~/フ~ランクフルトは焼ァき放~題~、焼ァき放~題~ウ~ヨレイヒ~♪。
B:
それは今年の夏にヒットした桂雀三郎 with まんぷくブラザースの「ヨーデル食べ放題だろ!
A:
作詞・作曲はリピート山中、編曲は赤坂東児。
B:
どうでもいいんだよそんなオタクちっくな情報は!
A:
白山雅一は戦前戦後の歌手の歌声を真似させたら天下一品なんだ。東海林太郎なんか、一番は若い頃、二番は年老いた頃と、歌声を変える。
B:
似てるの?
A:
似てるも似てないも、瓜二つだな。歳はもう80を越えているはず。
B:
そんな凄い人がどうしてテレビに出ないんだろう。
A:
凄い人はテレビに向かないんだよ。
B:
たしかに欽ちゃんの番組とか「オレたちひょうきん族」以来、素人っぽい芸人の方がウケてるよね。
A:
「私は化石みたいな存在ですから」といって新しい歌手は一切真似しない。私生活もテレビには絶対に明かさない。粋だろ?
B:
粋かもしれないけど、頑固なだけじゃないの?
A:
師匠があの柳家三亀松だから、筋金入りの粋。
B:
ミキマツ?
A:
おまえは天然記念物級の無知だな。
B:
そこまで言うか!
A:
白山雅一を、柳家三亀松を知りたければ、行け。
B:
どこだよ?
A:
theatrum mundi の「芸人列伝」。
B:
やっぱりホームページの宣伝かよ!  いい加減にしろ!