微笑問題

「20世紀を振り返る」の巻
2000.12.13

ペペ:
20世紀ももう終わりだね。
パコ:
おまえも終わりだ!
ペペ:
なんの話だよ!
パコ:
ただ言ってみただけ。
ペペ:
なにか言えばいいってもんじゃないぞ。振り返ってみれば色んなことがあったね。
パコ:
せんだみつおは交通事故を起こすし。
ペペ:
そんな小さな事件、どうでもいいだろ!
パコ:
森進一は離婚したし。
ペペ:
そんな重箱の隅つつくような話題はやめろよ!
パコ:
森繁久彌はまだ生きているし。
ペペ:
不謹慎だぞ! 老いてなお矍鑠なんだよ。
パコ:
戦争が多かったな。
ペペ:
そう。20世紀は世界大戦が多かった。
パコ:
まったく生きた心地がしなかったよなあ…野村沙知代と浅香光代の壮絶なバトル。
ペペ:
どこが世界大戦なんだよ!
パコ:
デヴィ夫人対酒井氏。
ペペ:
芸能界の寄生虫論争かよ! 話題が小さすぎるよ。
パコ:
全日本プロレスが亡き馬場夫人と対立し、川田と渕を除いて、三沢中心に脱退、新団体「ノア」を旗揚げ。
ペペ:
たかがプロレスの話だろ!
パコ:
20世紀の三大発明といえば、なに?
ペペ:
唐突すぎるよ。三大発明? なんだろう…。
パコ:
おまえの頭は鳥並みだな。
ペペ:
セキセイインコだから当たり前だろ!
パコ:
20世紀の三大発明は精神分析と映画とファシズム。
ペペ:
ふ~ん。
パコ:
なにが「ふ~ん」だよ。少しは勉強しろ。
ペペ:
余計なお世話だよ!いちばんの発明はテレビかな。
パコ:
テレビは映画の延長だろ?
ペペ:
言われてみればそうだね。
パコ:
精神分析は、目に見えない“心”の問題を科学的に分析することに成功した。
ペペ:
そう言われてみれば大事な発明かもね。
パコ:
そのおかげで、酒鬼薔薇聖斗様の精神鑑定もできるようになった。
ペペ:
“様”をつけるなよ! 小学生の頭を切り落した残虐な犯罪者だろ!
パコ:
でも犯行声明の文書はなかなかの力作だよ。
ペペ:
たしかに14歳にしては立派な文章なんだよね。
パコ:
佐川君みたいに作家になればいいね。
ペペ:
佐川君ってフランスで人肉を食べた犯罪者だろ!
パコ:
作家はいろんな人生経験を積んだ方がいい。
ペペ:
だからといって殺人を正当化していいわけないだろ!
パコ:
二番目の発明は映画。
ペペ:
映画って1895年に発明されたんじゃないの?
パコ:
ノータリンにしてはよく知ってるな。
ペペ:
侮辱するな!それになんだよ、“ノータリン”って。死語だよ。
パコ:
たしかにリュミエール兄弟が映画を公開したのは1895年、つまり19世紀だけど、今の映画のスタイルを確立したのは今世紀のグリフィス。
ペペ:
知らなかったよ。
パコ:
グリフィスが映画の父。
ペペ:
観たことないけど。
パコ:
ウルトラの母は不細工。
ペペ:
なんの話だよ。
パコ:
新宿の母は大人気。
ペペ:
それは有名な占い師だろ!
パコ:
りえママは傍若無人。
ペペ:
“りえママ”という言い方がもう古すぎるよ!
パコ:
最後の発明はファシズム。
ペペ:
ヒトラーだね。
パコ:
ファシズムが恐ろしいのは、民主主義と矛盾しないこと。
ペペ:
そうなの?
パコ:
ヒトラーは民主的な手続きで独裁者になっただろ?
ペペ:
ということは、民主主義はファシズムに抵抗できない、ということ?
パコ:
おまえにしちゃ物分かりがいいな。
ペペ:
ひとこと多いよ!
パコ:
おまえにとって20世紀はどんな世紀だった?
ペペ:
どんなって言われても、1965年生まれだから昔のことは知らないよ。アイドルがたくさん登場した世紀かな。
パコ:
アイドルという言葉が日本で初めて使われたのは60年代初頭。
ペペ:
よくそんなこと知ってるなあ。
パコ:
セキセイインコだからってアマく見るなよ。
ペペ:
初代アイドルは誰なの?
パコ:
坂本九。“アイドル・ボーイ”というキャッチフレーズでデビューした。
ペペ:
坂本九なんて、今の人、誰も知らないよ。
パコ:
人気は凄かった。シルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ」という歌がヒットしたのも同じ頃。
ペペ:
アイドルももう40年くらいの歴史があるんだね。ぼくらの世代だとピンク・レディーとか松田聖子とかキョンキョンだね。
パコ:
今ならカントリー娘だな。
ペペ:
それを言うならモーニング娘。だろ!
パコ:
モーニング娘。は“娘”のあとに“。”をつけたのが新しい。
ペペ:
つんくがプロデュースしてるんだよね。
パコ:
あいつは才能がある。
ペペ:
あいつ呼ばわりかよ! 面識もないくせに。
パコ:
真似して、つのだひろも“つのだ★ひろ”に改名した。
ペペ:
嘘つけ! つのだ★ひろの方が先だよ。
パコ:
奥田民生の才能も凄い。
ペペ:
どうして君はいつも芸能ネタに走るんだよ?
パコ:
政治だと戦争の歴史ばかりになっちゃうだろ?
ペペ:
たしかに。
パコ:
それよりも和田アキ子と小林幸子の闘いの方が面白い。
ペペ:
紅白歌合戦の衣裳問題かよ! 歴史にとってどうでもいい話題だろ。
パコ:
経済のことだって詳しいぜ。
ペペ:
たしかに20世紀は大恐慌とかがあって大変だったね。
パコ:
千昌夫、火の車。
ペペ:
また芸能関係かよ!あの人はバブル時代の事業が破綻したんだよ。
パコ:
不死鳥の異名を持つ歌手の活躍。
ペペ:
美空ひばりだね?
パコ:
畠山みどり。
ペペ:
なんで借金を抱えている芸能人の名前ばかり挙げるんだよ!やっぱり今世紀の芸能人なら美空ひばりで決まりじゃない?
パコ:
もっと凄い人がいる。
ペペ:
え?
パコ:
惜しまれながら引退した。
ペペ:
誰?
パコ:
ラ・おかき。
ペペ:
それは欽ちゃんの浅井企画にいた、短命に終わった漫才師だろ!誰も覚えていないよ。
パコ:
史上もっともつまらない芸人だった。
ペペ:
だったらいちいち名前を言うなよ!
パコ:
美空ひばりは所詮、笠置シヅ子の物真似歌手。
ペペ:
初耳だよ。
パコ:
ラ・おかきは誰の真似でもなかった。
ペペ:
だったらどうして短命で終わったんだよ?
パコ:
いちども笑いがとれなかった。
ペペ:
だったら芸人として意味がないだろ。今世紀といえば、人類がはじめて宇宙に飛び立ったことも大きいね。月に人間が降り立ったのは画期的だったね。
パコ:
おまえ、信じているのか?
ペペ:
信じるとき信じないとかいう問題じゃないだろ。
パコ:
あれはNASAがセットで仕組んだヤラセ。
ペペ:
なわけねえだろ!
パコ:
おまえ、月に降り立ったところを見たのか?
ペペ:
テレビでやっていたよ。
パコ:
所詮テレビだろ? あれは全部セット。月に行ったように見せかけてみんな演技していただけ。
ペペ:
おまえの頭はどうなってるんだよ?
パコ:
だいたい、月まで行くのにどれくらいかかると思う?
ペペ:
そりゃ、何日もかかるよね。
パコ:
妙だろ?
ペペ:
どこが?
パコ:
東京から大阪まで新幹線で三時間なんだぞ。
ペペ:
そうだよ。
パコ:
月は何日もかかるんだぞ。
ペペ:
当たり前だろ。遠いんだから。
パコ:
月は見えてるだろ? 大阪は見えないんだぜ。見えないのに三時間で着く新幹線の方が速い。
ペペ:
メチャクチャな論法だよ!
パコ:
これは春日三球・照代の漫才のネタ。
ペペ:
パクリかよ!
パコ:
セット云々は中田ダイマル・ラケット師匠の「地球は回る目は回る」というネタ。
ペペ:
盗作じゃねえか! いい加減にしろ。