微笑問題
「クリスマス秘話」の巻
2000.12.24
- A:
- みなさん、はじめまして!
- B:
- ピー!
- A:
- なにがピーだよ! ちゃんと喋らなくちゃダメだよ。
- B:
- だってぼくたちセキセイインコだよ。
- A:
- 喋れるんじゃねーか! でもそうなんです。ぼくたち、セキセイインコです。
- B:
- 「ぼくたち」? まだオスかメスか分からない雛鳥よ、アタシたち。
- A:
- だったらなんで女言葉になるんだよ!
- B:
- ♪だってだってだって…だってだってなんだもン!♪。
- A:
- それは昔のアニメ「キューティー・ハニー」の主題歌だろ!30歳以上の人じゃないと分からないよ!
- B:
- どうせオイラは、時代に取り残されたしがねえ渡り鳥さ…。
- A:
- なんで遠くを見詰めて自分に酔いしれてるんだよ!
- B:
- ワン!
- A:
- おまえは鳥だろ! 吠えるな! それにしても、こうやって籠から世の中を見ていると、奇妙なことばかりですね。
- B:
- たしかにそうですね。
- A:
- 文部省は学校教育に社会奉仕を義務づけるとか義務づけないとか。
- B:
- それって、徴兵制度の復活ですよ。
- A:
- そうなの?
- B:
- スペインでは、徴兵を免れた人は社会奉仕させられますからね。
- A:
- 人間って大変だね。
- B:
- その点、鳥はラクでいいね。
- A:
- ぼくたち、まだ飛べない子供だから、ご主人さまがお湯でふやかしたあったかいアワの餌をくれるんだよね。
- B:
- でもたまに冷えたのをくれるときがあるね。そういうときはアタマに来ますね。ブン殴ってやろうかと思いますね。
- A:
- 手がないのにどうやって殴るんだよ!
- B:
- 冷めた餌なんか食えないから、頭ごなしに怒鳴りつけてやりましたよ。
- A:
- なんて?
- B:
- ♪ピー♪。
- A:
- カワイイじゃねーか! ちっとも怖くないよ。
- B:
- 「今日はこのくらいで勘弁してやるぜ」って意味だよ。
- A:
- 「ピー」にそんなに長い意味が詰まってるのかよ!それはそうと、あしたはクリスマス・イブですね。
- B:
- そうですね。
- A:
- 町中がイルミネーションで飾られてきれいですね。
- B:
- あちきの羽根に較べれば大したことありませんけどね。
- A:
- 自慢するな! それになんだよ、「あちき」って!おまえはどこの生まれだよ?
- B:
- スリランカ。
- A:
- 意味が分からないボケはやめてくれ!
- B:
- それにしても、世間の人は、クリスマスの意味を知っているんでしょうかね。
- A:
- クリスマスの意味?
- B:
- クリスマスって、なんの日だか知ってる?
- A:
- イエス・キリストが生まれた日じゃないの?
- B:
- そうだけど、12月25日にイエスが生まれたという証拠はどこにある?
- A:
- 証拠? そう言われると自信がなくなっちゃうな。
- B:
- 聖書のどこを読んでもイエスが12月25日に生まれたなんて書いていませんよ。
- A:
- じゃあ一体どういうことなの?
- B:
- クリスマスの時期って、一年でどんな時期?
- A:
- どんな時期って言われても…。寒いよね、冬だから。
- B:
- なにか大切なイベントがありませんか?
- A:
- クリスマス以外に?
- B:
- そうです。
- A:
- え~と、同じ時期ということでいえば、冬至がありますね。
- B:
- ♪ピー!♪。
- A:
- それどういう意味だよ? 正解?、それとも不正解?
- B:
- おまえにしちゃ勘が鋭いじゃねーか。
- A:
- ひとこと多いよ!
- B:
- クリスマスはもともと冬至のお祭りです。
- A:
- そうなの?
- B:
- そうです。キリスト教が到来する前、地中海沿岸では、冬至の日に乱痴気騒ぎで祝いました。
- A:
- なんで祝うの?
- B:
- バカだなあおまえは。まるで鳥並の脳味噌だな。
- A:
- ぼくたちは鳥だよ!
- B:
- 冬至はどんな日?
- A:
- え~と、太陽が出ている時間が一年で一番短い日だろ?
- B:
- そう。それを別の言い方でいうと?
- A:
- 別の言い方? …太陽が出ている時間が一年で一番短いんだから…ってことは…太陽が一番低い位置にある日、かな?
- B:
- おまえにしちゃでき過ぎだな。
- A:
- だからひとこと多いって言ってるだろ!
- B:
- 冬至の日は太陽が一番低い。ということは、その日以降、太陽はどんどん高くなります。
- A:
- たしかにそういう理屈になりますね。
- B:
- ということは、暗い冬が終わり、春が刻一刻と近づいてくる季節、ということです。
- A:
- なるほど。
- B:
- それを祝って地中海沿岸の人は派手にお祭りをやりました。そこにキリスト教が到来して、冬の盛大なお祭りと、イエスの誕生の物語をドッキングさせて、クリスマスが生まれたのです。
- A:
- へぇ~、知らなかったなあ。
- B:
- たかが鳥だと思って見くびってもらっちゃ困るぜ。アホウ鳥とはわけが違うんだ!
- A:
- いちいち啖呵切らなくてもいいよ!
- B:
- ♪ピー!!♪。
- A:
- 凄んでるつもりかも知れないけど、ただのさえずりにしか聞こえないよ!
- B:
- 七面鳥でなくてよかったよな。
- A:
- たしかにね。
- B:
- クリスマス・イブといえば山下達郎の「クリスマス・イブ」が定番になりましたね。
- A:
- あの曲は1983年の曲ですから、もう17年も昔の曲ですね。
- B:
- でも、サウンドはちっとも古くないですね。
- A:
- そこが名曲たる所以ですね。今年はJR東海が八年ぶりにCMで取り上げましたね。
- B:
- でも山下達郎と竹内まりや夫妻はクリスマスには必ず七面鳥を焼くんです。
- A:
- 竹内まりやはアメリカに留学していたから、アメリカの習慣に従っているんでしょうね。
- B:
- ぼくたち鳥にとってはいい迷惑。
- A:
- でもセキセイインコは食べないよ。
- B:
- 食べたら承知しませんよ。
- A:
- どうするんだよ?
- B:
- ガツンと言ってやりますよ。
- A:
- なんて?
- B:
- ♪ピー!♪。
- A:
- そればっかじゃねーか! いい加減にしろ。