ラ・フーラ・ダルス・バウス La Fura del Baus
「期待しないでクリックしたので、失望しませんでした」
「いい心がけだ」
「もう原稿の催促はしませんから安心してください」
「そうか」
「はい」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「では西へ行け」
「え?」
「西だ」
「どこです」
「西を知らないのか」
「大阪とかですか」
「西だよ」
「九州?」
「大阪は大阪、九州は九州じゃないか」
「あ、外国ですか。中国とか」
「中国は中国。そうじゃなくて、西へ行けというのだ、わからないかなあ」
「わかりません」
「今年でいくつになる」
「歳をたずねるなんて失礼ですよ」
「今まで、西へ行ったことはあるか」
「ありますよ。長崎のハウステンボス」
「目的地はどうでもいいのだ。ただ西へ行く。それだけだ」
「ばかみたい」
「ただ西へ行くということを、したことがないんだな」
「ありませんよ、ばかばかしい」
「だから人間としての幅がないのだ」
「じゃあ西へ行けば人間の幅がひろがるんですね」
「ああそうだ」
「どのくらいひろがるんですか」
「それがわからないから行って確かめてほしいんじゃないか」