TVコント大全

1998(平成10)年

笑う犬の生活
フジテレビ

10月14日~?。水曜午後11時~11時20分。プロデューサーは吉田正樹。出演はウッチャンナンチャン(内村光良・南原清隆)、ネプチューン(名倉潤・原田泰造・堀内健)、中島知子、遠山景織子。

吉田正樹は全盛期の「オレたちひょうきん族」でADを担当した人。その後、「笑っていいとも」を経て、「夢で逢えたら」でディレクターになります。1988年に始まった「夢で逢えたら」は、〈お笑い第三世代〉と呼ばれたウッチャンナンチャンとダウンタウンが共演。アドリブに次ぐアドリブで笑いをとっていた「オレたちひょうきん族」とは異なり、〈都会的でシュールな笑い〉が特徴でした。

「笑う犬の生活」(副題「YARANEVA!!」)の最初の番組タイトル案はなんとも安易な「JAPAN大爆笑」。内村光良は「それだけはやめてくれと猛反発。そこで新たに出された案が「笑う犬の生活」でした。これはチャップリンの『犬の生活』(1918年)を踏まえています。コントが敬遠されている状況で、予算が余りないスタッフを取り巻く環境が、失業中の男と野良犬が主人公という映画の侘しい世界に酷似していたという意味も込められています。副題の「YARANEVA!!」は、番組収録中の不慮の事故で死者が出て打ち切りとなってしまった「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!!」からきており、内村は南原清隆の断りを得て敢えてこの副題にこだわったと言います。

数々のコントを生みましたが、まず「小須田部長」に触れましょう。

内村光良扮する小須田部長は、なぜか世界各地の辺境に左遷されます。赴任地を知らせに来るのは会社の後輩の原田泰造。「小須田部長」シリーズ第一部の左遷先は、順に、東京→利尻島→ベネズエラ→北大西洋の海底→キラウェア火山の火口→砂漠→南極→ニューヨーク・サウスブロンクス→エベレスト頂上→ナイアガラの滝。なぜこんなハメになったのか。その秘密はココをクリック!

内村光良と原田泰造のホモの純愛を描いたシリアス路線のコント「てるとたいぞう」も長期シリーズです。ナレーションは来宮良子。いい味出してます。

三部作で、第一部は、刑事てる(内村)が後輩のたいぞう(原田)と、暴力団山根組の張り込みをしています。てるは、気配りがいいたいぞうを好もしく思います。「こんな気配りがいい女と結婚したいなあ」と漏らす、てる。そして二回目から、てるはホモになります。たいぞうに体を触られるたびに興奮し、たいぞうが口をつけた缶コーヒーの残りをがぶ飲み。張り込みの途中で、てるはたまらず、たいぞうに愛を告白。にっこり微笑んでその愛を受け取るたいぞう。そこに応援部隊が到着。たいぞうが迎えに出ようとした途端、敵の銃弾に斃れ殉職。

第二部。てるは殉職したたいぞうの墓参り。そこに現れたのが、たいぞうと瓜二つの弟たいしろう(原田)。彼もまた刑事で、てるの部下になります。たいしろうは腹黒い男で、山根組の捜査情報を組に売り、数千万円を着服します。そんなたいしろうの怪しい魅力に次第に惚れていくてる。ところがたいしろうは署内の千夏(遠山)という女と関係を持っていたのでした。三角関係。ビルの屋上で、三角関係を知った千夏は嫉妬のあまり自殺しようと自分の頭にピストルを向ける。が、銃砲はたいしろうの腹に…。またしても愛する男を失うてるだった…。

第三部。一年半後。舞台は秋田県能代市。てるはオカマバー「スナックじゅんちゃん」の潤子ママ(名倉)と愛を育んでいる。そのバーに、てるを探してふらりと訪れる客たいのしん(原田)。たいぞう・たいしろう兄弟の叔父。大原田物産経営者。たいのしんはてるに「子供になってくれませんか」と持ちかける。じゅんこを捨てて、たいのしんの胸に抱かれる、てる。ママは荷物をまとめる。潤子ママと結婚するのが夢だった常連客のナミコ(遠山)は涙に暮れる。そこに戻ってきた、てる。「本当に愛しているのなら、形で示して」と、畳に横たわる潤子ママ。でもてるはどうしても抱けない。そこに現れるたいのしん。潤子ママはたいのしんを包丁で刺す。てると潤子ママは、男鹿漁業組合の寄り合い所に一緒に逃げる。二人は全国指名手配中。二人の左手の薬指にはイカで作った指輪。とそこへ、壁を破って乱入してくる、死んだはずのたいのしん。実は生きていたのでした。てるを奪い合うママとたいのしん。ママがたいのしんを刺し殺そうとしたところを、てるはたいのしんに抱きついて阻止。ひとり電車に乗る、てる。出発する列車めがけて見送るに走る潤子ママ。オカマ殺しに執念を燃やすたいのしん。完。

このコントにはこんな設定がありました。物語が始まる10年前。てるはCDショップの店員。高校生(原田)が一枚のCDを万引き。てるは取り押さえ、CDを見ると、それは小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」。改めて高校生を見つめる、てる。この高校生が後のたいぞうなのです。その直後に、オカマの高校生が来店。てるを見初めて「同じ匂いがする」と呟きます。これが後の潤子ママ。

ふるさと・皆様劇場~土曜特集
NHK

放送開始日不明~現在。月一回土曜午後7時30分~8時45分。出演は梅沢富美男、前川清、梅沢劇団、その他ゲストの歌手(たいていは女性演歌歌手)。

「のど自慢」のように、全国津々浦々の町や村で公開収録されるドタバタ喜劇。設定は時代劇で、梅沢と前川が、いかにもアホっぽいメイクと衣装で登場。梅沢は得意の女形のほかに男性も演じることがあります。前川清とのコンビはなかなかのもので、客席はいつも爆笑の渦。

志村ヒロミのナンデモ笑学校
テレビ東京

10月~99年3月。金曜午後7時~8時。

志村が二年半ぶりにゴールデンタイムに登場。作り物のコントをブラウン管に復活させると鳴り物入りではじまりましたが、大したことにはなるまいという予感がありました。

99年1月に見ましたが、まったく見るに耐えないものでした。設定はバーのカウンター。手前に藤森夕子(元C.C.ガールズ)と優香、向こうにサラリーマン姿のダチョウ倶楽部の肥後と上島。肥後が「あちらのお嬢さんに」と志村けんのバーテンに頼んで藤森に酒を奢り、ホテルのスイートで飲み直そうとキーをつらつかせ、藤森もあっさりついてゆく。「うまいことやりやがったなあ」と上島がそっくり真似して優香を誘おうとするも、どう誘っても「いらない」「バッカじゃないの」「このデブ」の一点張り。バーテンは両者の求めに応じて、盥やイット缶をぶつけ、コップの水をかけ、パイをぶつけたりとエスカレートし、最後は上島が水をかぶるというもの。バーテンにかける声がデカいから、二人がこそこそしている理由がまるで分からないのです。ヒロミが出ている場面を以前ちらっと見たこともあったが(学校コント)、けんもヒロミも素の顔でニヤニヤ笑うばかりで、まるでしまりがありません。これはだめだろうと思っていたら、案の定、半年で打ち切りになりました。