ミラノの歌劇場スカラ座を拠点に活動した舞台美術家のエツィオ・フリジェリオさんが昨日亡くなりました。享年九十一。記事では触れられておりませんが、1990年に東京の銀座セゾン劇場でヌリア・エスペル演出によるロルカの『ベルナルダ・アルバの家』の舞台美術を手がけました。わたくしは通訳として制作のお手伝いをしました。ステージに敷きつめる石畳の造形の見本を探しに二人で都内の寺をめぐり、上野の寛永寺でイメージにぴったりの石畳を見つけたときのフリジェリオさんの瞳の輝きが忘れられません。また、一日だけ仕事がお休みになった日に京都を案内し、知恩院で魂の安らぐひとときを過ごしたことも忘れがたい思い出です。フリジェリオさんはその後も1992年にヌリア・エスペル演出によるフランシスコ・オルス作、拙訳による『エリザベス』(銀座セゾン劇場)の美術を担当し、1995年に再演されました。これら三つの作品の衣装デザインはすべて奥様のフランカ・スカルツィアピーノさんでした。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。