Jスパ!トップメッセージ

2011年2月21日(月)

今週いよいよ第15回フェスティバル・デ・ヘレスが開幕します。メイン会場はヘレス・デ・ラ・フロンテーラ市の中心にあるビジャマルタ劇場。キャパ1266人の大劇場です。期間は2月25日から3月12日まで。初日の25日(金)は地元ヘレスのアントニオ・エル・ピパ舞踊団がオープニングを飾り、26日(土)はラ・ファルーカが出演。そして27日(日)は小島章司フラメンコ舞踊団が登場します。小島さんはこれまでスペイン各地で踊りを披露してきましたが、舞踊団としてのスペイン公演は意外にも今回が初めて。演目は2009年秋に東京のル テアトル銀座で初演した『ラ・セレスティーナ』。スペイン古典文学の傑作です。実はわたくしもスタッフの末席に名を連ねているのですが、種々の事情でヘレスに行けず! 悔し涙を流しております。

2011年2月22日(火)

『ラ・セレスティーナ』は1499年に出版された戯曲風の小説です。どんなストーリーなのでしょう。実は2009年11月にこのトップページでご紹介したのですが、覚えておられる方は……いませんよね。よく〈スペイン版ロミオとジュリエット〉と称されます。シェイクスピアは16世紀後半の人なので、『ラ・セレスティーナ』のほうが半世紀以上前です。もともとのタイトルは『カリストとメリベーアの悲喜劇』。カリストがロミオ、メリベーアがジュリエットだと思って下さい。貴族の御曹司カリストが令嬢メリベーアに一目惚れ。告白したもののすげなくフラれます。何とか娘の心を我が物にしたい、でもどうすればいいのかわからない……。すると召使いが耳打ちします。「セレスティーナに頼めば万事うまくいきますよ」。セレスティーナは売春宿の女将で、魔術を用いて人心を操る老婆。魔術は効果覿面で、メリベーアはカリストと結ばれます。これで終わればめでたし、めでたしですが、そうは問屋が卸さない。続きはあした。

2011年2月23日(水)

老婆セレスティーナの魔術は効果覿面、カリストとメリベーアはめでたく恋の虜になります。セレスティーナはカリストから報酬を受け取ります。その分け前にあずかろうとするのが例の召使い――。ストーリーの出だしをかいつまんで紹介しましたが、ご覧の通り、登場人物はみんな欲に目がくらんだ者ばかり。カリストはメリベーアの心と体を求め、セレスティーナは報酬を求め、召使いは分け前を求める。さらに売春宿の女たちの情欲もからむ。みんな自分だけは人より多くの利益をせしめようと目論みます。当然利害は衝突します。最初は喜劇的要素たっぷりで始まったストーリーが、ここから一転して悲劇の坂を転げ落ちてゆきます。分け前のあてが外れた召使いは怒り狂ってセレスティーナを暗殺。女将を慕っていた売春宿の女たちは報復を決意、召使いを司直に渡して斬首させます。続きはあした。

2011年2月24日(木)

セレスティーナが殺され、召使いも殺され、残るは幸せに満ちたカリストとメリベーア。しかし売春宿の女たちが黙ってはいません。「そもそも事の発端はあの二人のせいだ」。女たちは殺し屋を雇い、カリストの命を奪いに行かせます。メリベーア邸の庭で逢瀬を楽しんでいたカリストが怪しい物音を聞きつけ、通りの様子を見に梯子を降りようとした途端、足を踏み外して転落、打ち所が悪くそのまま息絶えます。恋人の死を目の当たりにしたメリベーアは悲嘆のあまり塔から身を投げて後を追う――。『ラ・セレスティーナ』が古典文学の傑作である理由は、人物描写がものすごくリアルだからです。まるで映画のカメラが人物たちのあいだに入って真横から至近距離で撮影するかのようなリアリティーがあり、人物の息づかいさえ感じられるほど。

2011年2月25日(金)

『ラ・セレスティーナ』のあらすじをごくかいつまんで紹介してきましたが、原作を読んでみたい方には日本語の翻訳があります。国書刊行会の『ラ・セレスティーナ』。ただし、すごく分厚いです。箱入りです。全21場。長いです。あくまでも〈戯曲風の小説〉なので、上演を前提として書かれたわけではありません。分厚い本を読むのは面倒、手っ取り早く楽しみたい、そんな方には映画があります。日本版DVDのタイトルは『情熱の処女(おとめ)~スペインの宝石~』。主人公メリベーアを演じるのはペネロペ・クルス。カリスト役はフアン・ディエゴ・ボット。セレスティーナ役はテレレ・パベス。売春婦のひとりがマリベル・ベルドゥ。メリベーアの父親役はリュイス・オマール。アルモドバルの映画『抱擁のかけら』で盲目のシナリオライターを演じたあの俳優です。

2011年2月26日(土)

さて、いよいよ明日午後9時、ヘレスのビジャマルタ劇場で小島章司フラメンコ舞踊団公演『ラ・セレスティーナ』が開演します。出演者は種々の事情により2009年秋の初演時から少々変更。初演でメリベーアを演じたタマラ・ロペスは折悪しく足に怪我を負い、代わりにハビエル・ラトーレの愛弟子エスメラルダ・マンサーナス・サンチェスが出演します。殺し屋に扮した長身のフランシスコ・モルガードものっぴきならない事情でウゴ・ロペスが代演。歌手もペドロ・オブレゴンの代わりにヘスス・メンデス、カリダー・ベガの代わりにモニカ・ナバーロが務めます。その他のキャストはカリスト役のクリスティアン・ロサーノを始め初演時と同じ顔ぶれ。老婆セレスティーナを演じるのはもちろん小島章司さん。今年72歳。メイクを施した小島さんはどこから見てもまさに老婆です。