抑鬱亭日乘

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2003年8月31日(日)

校正

薄く晴れてまた曇る。公園散策例の如し。コゲラの二羽枝に戲るを見る。午前同窓會々報の稾を脱す。K社隨想集初稾を郵送し來れり。NHK-FM日曜喫茶室を聴くに、山田邦子は學生の頃よりCFの眞似抔同級生に披露し居たりしが、NHK第一放送「晝のプレゼント」に出演せし折民放のコマーシヤルは御法度と言含められ、已むを得ずバスガイドやヱレベーターガールの形態摸寫をなし、意想外にも之が一世を風靡したる由なり。災い轉じて福となすとはこのことなり。三時眠氣を催し横臥、其の儘昏々と眠る。

2003年8月30日(土)

文章不異於平常説話

天氣牢晴。朝の中風ありて凉しかりしが午に至りてむし暑し。森林公園をあゆむ。おはやうと挨拶する者土曜に多し。終日讀書。敬宇文集巻十四、与友人論文書に日く、文章不異於平常説話、平常説話雖其極不用意者、皆莫不有自然関鍵、自然照応、自然首尾、自然起伏、自然開闔、自然擒縦、具於其中焉、若無此、則不成説話、井不成文章矣、故文之於法猶影之随形、響之応聲、宣可得而離乎、また日く文章之高下視人品之高下、また日く文章之盛衰亦関係干國家治乱之故、云ゝ、余嘗て卒業論文の指導をせし時言はむと欲して言ふこと能ざりしもの、今偶然之を先哲の文集に就いて見ることを得たれば喜びのあまりこゝに抄録するなり。日の暮るゝ頃蟋蟀の鳴くを聞く。

2003年8月29日(金)

睡眠力

レモンの囀りに睡より寤むれば午前五時なり。残暑熾なれど秋風涼爽なり。森林公園逍遥。蟲聲あり。落葉日毎増す。午前讀書。爆笑問題『昭和は遠くなりにけり』は「昭和恐慌の卷」を以て圧卷となしぬ。太田の見る處たまたま餘と相同じきを知り心中喜びに堪えざるものあり。午下實家に徃く。R2D2昨日は名古屋市科學館に遊びたりし由なり。車にて藤が丘驛に送りて家にかへる。モンテーニユを讀むほどに日影いつか傾き、おちこちにつくつく法師の啼く聲聞え、風聲頻に秋を報ず。

2003年8月28日(木)

昏々

風露の冷なること深秋の如し。森林公園漫歩例の如し。午前讀書。正午食事して後蒲團に寝そべりてうつら/\とするに程なく華胥に遊ぶ。終日褥中に在り昏々として睡る。

2003年8月27日(水)

R2D2

朝の中曇りて風涼し、森林公園につくつく法師の聲雨の如く秋の到來を告ぐ。赤蜻蛉見ゆ。ロス・アンデスより鶴首して待望みし返書あり。午前讀書。午下一睡の後實家に徃く。千葉のS子R2D2を伴ひ既に來りて在り。R2はハワイにて梅干漬物を懷かしみたりし由、僅九歳にして中年男の如き口吻なり。晩食の後早々に歸宅す。今夕七時火星六萬年ぶりの大接近なれど空雲に覆はれて拜めず。

2003年8月26日(火)

雷聲殷々

雨にはならむと氣遣はれしが車にて公園に向ふに空遽に曇り驟雨窗を撲つ。踵を返して歸宅す。讀書の中半日を消す。薄暮雨の晴間を窺ひクリニツクに赴くに、ふたゝび驟雨來りて瀧の如し。サングリーンフアーマシー今月より店名をアイランド藥局と改めたり。藥劑師池田氏に經緯を問ふに、四月に計營者の變りたりし故なりといふ。晩間雷聲轟然、半時間あまりにして漸く鎮まる。昨晩中國學科N氏より電話あり、熊本赴任前の再會を約す。

2003年8月25日(月)

精神的鎖國

残暑熾。昨日深更NHKにて「メリル・ストリープ自らを語る」「グヰネス・パルトロウ自らを語る」を看る。午前森林公園漫歩。毎朝矢田川の中洲に白鷺一羽見ゆ。同じ鷺なるべし。空くもりたれば市營屋外プールには納涼の人少し。今夏プールに客多かりきは先週末のみなり。歸途長久手温泉ござらつせに浴し揉み治療をなす。午後讀書日の傾くを知らず。暮食に湯葉と柚子大根を食す。新聞紙聯連日北朝鮮の萬景峯號入港騷動を報道す。將來はを記者は將來的にはと記したり。記事の文拙劣讀むに堪えず。何を苦しんで斯くの如き言葉を用るにや。豫之を好まず、故に新聞紙を購讀せざるなり、唯折々已むことを得ず網上版を一瞥することあるのみ。三大日刊紙の網上版いづれも社會面を最上位にし、以下スポーツ經濟政治の順にて國際記事は最下位なり。精神的鎖國の証といふべし。

2003年8月24日(日)

日曜娯樂版

殘暑熾なり。終日讀書。「日曜喫茶室」を聞くに、永六輔のラヂオ第一聲は日曜娯樂版にて丹下キヨ子に代はりて發せしキャーの叫びなるを知る。三木鶏郎の偉大なるは高校生の六輔に冗談工房社長を任ぜしことにあり。此工房は野坂昭如の資金使込みによりて倒産し、爾來野坂の著作にて永を天才と讚へるは往時の罪滅ぼしなる由なり。中學時代に永の投稿せし自衞隊コント、唯一言「いないいないばあ」なり。現今の自稱笑藝人に斯くの如きユーモアを解する者ありや。晡下實家に夕餉をなす。獻立は天麩羅なり。父上酷暑に心地爽ならず。初更歸宅。昨日夢路いとし入院す。行秋や雨とはならぬ薄ぐもり、風は吹かねど散るや木の葉の散る中にさまよふ蝶の影一ツ、今見し夢の名殘かと、肱つく机つく/\と、戀しきはかへらぬむかしぞや、寂しきは宵闇の窗に聞いて驚く花火の音、今日も暮れけり。變る姿の人の身に、過行く月日かはりなきこそつれなけれ。

2003年8月23日(土)

つくつく法師

晴れて炎熱忍難し。處暑。早朝森林公園逍遥。おはやうございますと挨拶さる人多し。いつの頃より枯れたるにや落葉尠からず、秋色日ごと濃し。つくつく法師の鳴くこと頻なり。大道平池にシラサギの小魚を捕へるを見る。歸途車内のラヂオにてNHK-FM「「ヰークエンドサンシヤイン」を聴く。ファドの新人歌手マリーザの「エスペランサ」佳なり。終日筆硯に親しむ。エル・パイス紙にてダリの描きしデイズニ短篇映畫『運命』の一部を勸賞す。田中宇のニユース解説を讀むに、イラク駐留米軍水と食糧支給の不足に苦しみ居たりて、電子郵件にて家族に菓子を送られたしと求む者多き由なり。天罰といふべし。此日野茂十五勝。久米宏の「ニユースステーシヨン」降板の報に接す。燈刻横臥しレモンと戲る。

2003年8月22日(金)

Kill Bill Gates

黎明は風ありて凉しかりしが、午に至り炎熱堪ふべからず。此日一天拭ふが如く日光清澄なり。攝氏三十五度は超えたるべし。森林公園漫歩例の如し。札の辻川に蛙泳ぎ水黽夥く、雀の三羽水浴びするを見る。すでに渡りしゆゑにや、今週に入りて燕見かけず。電腦病毒の猖獗を極めたれば實家に赴き筆記本電腦の操作系統を更新、作業の中に半日を消す。今秋『キル・ビル』の公開さるゝといふ報に接しかば、タランテイーノには『キル・ビル・ゲイツ』と改題されたし。父上に飯塚訪問の意思ありやなしやを問ふに、二つ返事で快諾さる。夕餉に秋刀魚の鹽燒を食し、燈刻歸宅。夕日斜に照り渡りたり。

2003年8月21日(木)

Koji さん、ろるさんを描く

晴れたる空には雲多く浮びて折々曇る。秋暑益甚しけれど風ありて稍忍やすし。午前森林公園を逍遥、家にかへるに留守番電話あり、用談は非常識の極みにて豫に對し事前に一言の挨拶もなさゞる故、豫大に憤れり。午下Koji さんろるさんと藤が丘驛に會し、「雅ピロ」にてタンシチユーセツトの昼餐をなす。畫伯の拜顏の榮に浴すは今日が始めてなり。ろるさんと再會せしは三年ぶりならんや。凾館のフラメンコスタジオ計營者にして舞踊指導者の貫祿全身に漲り居たり。食後喫茶店可人に憩ふ。Koji さん自家用車より水彩畫材を持來り、店内にてろるさんの肖像画二枚描かる。スケツチブツクに鉛筆を走らせること纔五分ほどにて忽ろるさんの胸像浮び上り、水彩繪の具をさら/\と重ねて乾かせば直に隂翳に富む肖像画は生れたり。ろるさん喜色滿面に浮べり。畫伯の饒舌なること筆捌きに劣らざるは餘が意外なる驚きなり。笑語二時間半、Koji さん車にて歸り去り、YAMATO JAPAN に河岸を變へ小一時間雜談す。晡時歸宅。漸く藁を脱しぬ。是日攝氏三十四度の暑なりと。ウエザーテツクに見ゆ。

2003年8月20日(水)

西麻布

曇りて蒸暑し。八時五十七分の新幹線ひかり號にて東上、小島章司氏に招がれ西麻布のビストロに會食す。秋の定期公演につきて相談せらる。談論三時間に及ぶ。徳島に在りし頃の幼年期の思ひ出を縷々語らるを聞くははじめてのことなり。二月に病を患ひしかど元氣依然として溌剌たるは大に慶賀すべし。獻立はガスパチョ、鱸のグリエ、仔羊の背肉ロースト、ケーキ三種、咖啡なり。外苑西通にて別れ、広尾驛より地下鐵にて有樂町に出で、三時五十七分の新幹線のぞみ號にて名古屋にかへる。車中漱石の諸作を再讀す。

2003年8月19日(火)

淺草キツド

薄晴。殘暑。早朝森林公園逍遥例の如し。終日執筆添削餘事なし。TBS「荒川強啓デイ・キヤツチ」ゲスト解説に淺草キツド登場す。水道橋博士の話に昨日自民黨總裁選をめぐりて亀井靜香と對談せりといふ。亀井の無邪氣に小泉の敗北を豫言するを聞くに、水道橋博士間髪を入れず、小泉が解散總選擧に訴へ小澤菅兩氏が小泉を迎へ入れるやもせず、然らばいかゞせむやと問ふに、亀井之に應じて小澤は敗軍の將に興味覺えざるべしと荅ふるのみなりと。自社公聯立に亀井の深く關りたる過去を思へば亀井の荅辯は苦し紛れなりと水道橋博士語れり。此對談は來月九日TBS「名門!アサ秘ジャーナル」にて放送さるゝ由なり。番組の趣旨は政黨出自を問はず政治家凡てをヨイショし、調子に乘せ失言を誘ふことにあり、果して平沼某は物眞似を披露するほどなりといふ。世はまさに嗤ふほかなし。

2003年8月18日(月)

無爲徒食

時々雨。午前晴れ間を幸に森林公園をあゆむ。毎朝見かける顏尠からずあり、松葉杖の女性の夫に支へられて歩くをみるは日課の如し。昼餉の後机に凭りて茟秉るも感興來らず、濫讀すれば直に日は晡となれり。Oさんより來書あり、病状惡化の一途をたどるといふさまなり。保檢手續不本意ながら來月初旬の退院決りたる由なり。晡下W氏より電話かゝりて款語一時間に及ぶ。小島章司氏より電話あり。

2003年8月17日(日)

戰友

終日雨なり。アンドレウの書に接す。先週月曜バルセローナに歸參し水曜父君永眠せりといふ。父君臨終の牀に在りてアンドレウを抱擁せしとぞ。Andreu より午下稲澤に戰友を訪ふ。再會は二年ぶりなり。款語忽暮刻とはなれり。近鄰の燒肉屋にて晩餐をなす。初更歸宅。

2003年8月16日(土)

積雨

雲氣鬱勃、午後雨。天候猶全く恢復せざるが如し。神宮花火大會中止さる。午前森林公園逍遥。午後衛星第一にてマリナーズ戰を看る。イチロー滿壘本壘打を放てり。晡時實家に徃き夕餉をなす。獻立は帆立の貝燒き、ゴーヤチヤンプルー、茄子といんげん豆の味噌汁なり。長久手夏祭の打上花火の響を聞く。初更細雨の中歸宅。肌身ひや/\して氣味惡しきほどなり。

2003年8月15日(金)

停電

昨日より今日にかけて雨歇みてはまた降る。添削の後理髮舗に徃き散髮し、ござらつせに立寄り露天風呂に浴す。盆休みゆゑ來客輻輳せり。新聞紙に紐育大停電の報を讀む。寫眞をみるに、ブルツクリン橋、マンハツタンより徒歩にて家路につく人に埋れぬ。地下鐵、信号機、空港、昇降機抔凡て機能不全に陥りたる由なり。暗闇に浮ぶ摩天楼をみるは一興なり。

2003年8月14日(木)

冷夏

朝より雨ふりゐたりしが正午頃より弥甚く、夕刻に至り矢田川激流をなす。午前飜譯添削例の如し。飯塚W氏電話にて近況を報告さる。雌の子犬を飼ひ桃と命名したると。熟睡すること能はざる日のつゞきたれば先週一年ぶりに主治醫に診察を請ひたる由なり。睡眠藥を飮めば纔に眠るを得たるといふ。午下買物をせむとて表に出でるに風冷なり。斯も寒き盆は近年記憶になし。長袖にカーデイガンを羽織る女多し。先月の電氣代例年の半分にも滿たざり。舊稾整理の傍久しく見ざりし書物何といふことなく讀みあさるほどに夕餉の頃とはなるなり。豫は毎日この時刻に至り、獨り茫然として薄暮の空打ながめ、近鄰の家より夕餉の物煮る臭の漂ひ來り、窗外に燈影のちらほら輝き出るを見る時、何とも知らず獨無限の詩味をおぼえて止まざるなり。鈴本演藝塲四月十八日昼の喬太郎「夜の慣用句」、権太楼「ジャンバラヤ」、同日夜の圓菊「小言幸兵衛」を聽く。風雨歇まず。

2003年8月13日(水)

冷藏庫

風ありて暑氣稍忍やすし。微熱失せ氣分昨日に比してわろからず。今朝は晴れたれど風邪の氣味に托して公園には徃かず。午前冷藏庫屆く。三三五リットルなり。飜譯一枚。さらに筆を秉らむとせしが得ず。午後何事をもせずDVDにてヒツチコツクやアレンなど看る。晩成書房より雜誌屆く。

2003年8月12日(火)

微熱

惡夢に熟睡すること能はず。七時過ぎ驟雨沛然たり。午前家電量販店Gにて冷蔵庫を購ふ。飜譯脱藁。添削。風邪痊えず。微熱あり。被を擁して伏す。

2003年8月11日(月)

風邪

例の如く森林公園をあゆみて家にかへる。藁を草さんと机に凭りしが、倦怠甚く風邪の氣味も痊えざれば終日藥を服して伏す。

2003年8月10日(日)

花火

雲次第に動きて午に近き頃空隈なく晴れわたりぬ。蒸暑くて汗居ながらにして湧くが如し。早朝森林公園逍遥例の如し。疲勞痊えず書に對すれば直に眠を催す。燈刻父上母上を誘ひて雅ピロに晩餐をなす。獻立は蟹クリームコロツケとタンシチューなり。食後可人に立寄り咖啡を喫す。夜凉秋の近きを知らしむほどなり。初更歸宅。折しも矢田川の花火大會の最中にて玄關より之を眺む。近鄰見物客大に輻輳し國道澁滯す。今回が最後ゆゑなるべし。十三夜月よし。

2003年8月9日(土)

華胥

朝來暴風雨、午前尤甚し。母上より電話あり、父上東京より歸參せし由なり。筆秉らむと欲するも困憊しく能はず、風邪の氣味あれば藥を服して伏す。忽華胥に遊ぶ。レモンの囀りに眠より覺むれば既に初更なり。新國立劇塲より資料屆く。風絶え晩涼秋の如し。宵月皎々たり。

2003年8月8日(金)

臨終と復活

立秋。午前十時頃より東南の風次第に吹きつのり、正午の頃風勢甚く、時々ふる雨車軸の如し。朝の中實家の筆記本電腦を携へ專門店Cを訪ふに、操作系統(OS)全壞せりと診斷さる。臨終といふべし。實家にもどり、リカバリーCDにて視窗Meを再安装し、視窗XPに昇級すれば忽一時間は経ちぬ。各種軟件再安装の中半日を消す。豫は目下電腦業界の状況に鑑みるに、利用者の輕々しく微軟(マイクロソフト)操作系統を購入することの無益なるを知れり。操作系統はいはゞ空氣なり。視窗XPは当初堅牢なるを訴へて華々しく登場せしが、その安全性脆弱なること甚し。錯誤(バグ)の發見さるゝたび微軟の利用者に更新を命ずるを見るにつけても、更に社の傲岸不遜に驚かざるを得ず。晡下歸宅。藁を草さんと机に凭るも感興來らず。風愈烈し。

2003年8月7日(木)

故障

炎暑燬くが如し。蝉頻に啼く。昨夜十時半玄關の扉を開けるに蝉時雨やまざりき。去月日照時間殆なかりしゆゑなるべし。森林公園をあゆむ。毎朝逢ふ老夫婦あり。家電量販店に立寄り扇風機を購ふ。千七百圓なり。連載の藁五六枚かき得たり。晡下一睡ののち實家に夕餉をなす。昨日より ThinkPad の視窗XPに註冊(ログイン)すること能はず、幾度試みても logonwin.exe に錯誤あり云々と表示さる。明朝修理に出すことにし、抑鬱亭より持參せし同型の ThinkPad を讓る。初更家にかへる。東京滯在中の日乘を書かんと欲すれど困憊して能はず。

2003年8月6日(水)

34度

炎蒸甚し。早朝森林公園を歩む。小一時間逍遥すれば忽全身汗みどろになりぬ。四十雀の番眼前を飛交ふこと數次なり。九時半歸宅。アンドレウ、ファラより來書あり、昨夜は歌舞伎見物、今日は鎌倉旅行なりとぞ。窗外のアパートに百舌數多飛來れり。午下ござらつせに浴し揉み治療をなす。薄暮實家に徃き夕餉をなす。窗外コムクドリの大羣黒雲の如し。父上同窓會に參加すべく早朝東上せられし由なり。獻立は鰹丼と破竹の煮物なり。今夏始めてアイスクリームと西瓜を食す。西瓜は新潟戸野目より贈られし八色西瓜なり。瑞々しく美味なり。いつの頃より工事を起したるにや、南新町交叉點の雀莊跡形もなく更地と化しぬ。九夜月佳し。

2003年8月5日(火)

歸宅

雲氣鬱勃、風絶えて溽暑甚し。十時ホテルを出で要町にS氏を訪ふ。途次乘降場にて夫人に遭遇す。正午アマテラスにて昼餉に仏蘭西料理を食す。二時新幹線にて東京を發し四時名古屋着、地下鐵にて藤が丘に着くに大雨なり。父君母君レモンを伴ひ車にて抑鬱亭に送らる。遠雷殷々驟雨沛然たり。雨の中クリニツクに徃き診察を請ふ。七時歸宅。

2003年8月4日(月)

トゥルケーナ

溽暑甚し、昧爽に起き出で電子郵件を讀む、八時喫茶店にて朝餉をなす、ファラ眼下に隈あり、睡ること能はざりし由なり、十時梅が丘BOX着、アンドレウ照明音響のきつかけを燐光群の技師に傳へしが、演出と出演を兼るがゆゑに其の孤軍奮闘ぶり涙ぐまし、午下一同客席の雛壇に坐して海鮮丼を食す、二時本稽古開始、半ばを過ぎし頃ファラ卒爾に涙を催し舞臺奧に退きて蹲りぬ、傍に驅寄り具合を問ふに、どうしたのか自分でもわかりませんと嗚咽の中に荅へたり、聯日の仕事早朝より深更に及び、アンドレウの父君が容態急變の報に接したれば輾転反側の中に朝を迎へ、舞臺甚く狭ければ思ふがまゝに踊ること能はず、遂に集中力途切たると見ゆ、忽鋭氣を取戻し稽古を續けたるさまをみるに涙滾滾と湧出でゝ盡ざり、稽古畢るにはや開場時刻なり、四時開演五時終演、人形の表情いはくいひ難し、ファラの机に乘りて開脚せし股間をゴシツク教會に見立たるは秀拔なり、二十分休憩の後講演會を催す、フラメンコ史、仮面と存在の辨證法、ブレヒトとコメデイア・デラルテの関係抔質疑應答活撥、忽七時を過ぐ、一服の遑もなく立食形式の懇親會となりぬ、聴衆十名ほど車座になりて歓晤時の移るを忘る、十時散會、後片付をなし地上に出づれば十一時なり、アンドレウフアラ阿部西村の四氏と驛前廣場に憩ふ、小田急線内に阿部西村兩氏に別れ三更ホテルにかへる、フアラの部屋に夕餉をなす、〔十月十七日記す〕

2003年8月3日(日)

ワークシヨツプ終了

薄く曇りて溽暑甚し、アンドレウ顔色憔悴して別人の如し、急遽火曜に歸國せんと欲するなり、驛前の喫茶店に朝食をなす、十時梅が丘BOXに徃く、燐光群劇團員に舞臺裝置の配置を示し、商店街のそば處松屋に昼餉をなす、阿部氏仕事のため遅れて來る、アンドレウ父君の事をかたり出して涙を流し絶句せり、一同涙下りて去るに忍びず、劇塲に戻り仕込をなす、三時なり、新宿にフアラ阿部兩氏と別れ、アンドレウと高嶋屋鄰の HIS に徃き火曜のバルセローナ徃格安航空劵のあるやなしやを問ふに、急な話とて運賃二十萬圓なりといふ、餘りに高額なるゆゑ買はず、地下鐵にてホテルにかへり小憩、自働車を倩ひて兩國シアターχに徃く、ワークシヨツプ二日目なり、三十餘名の初心者がソレア・ポル・ブレリアの羣舞を踊るに至れり、壓卷は老婆なり、自由闊達フアラをしてヒターナといはしむるほどなり、九時終了するも質疑應答時の過るを忘れ、十時隣接のカプリチヨーザに參加者と打上げの晩餐をなす、十一時散會、ホテルにかへりフアラの部屋に夕餉をなす、アンドレウの憔悴見るに忍ばざれば勵まさんと欲すれど言葉浮ばず、ただ、君が國を離れこゝに居るには理由がある、父君を救へないのは殘念だがこの二日間君は三十人もの人を救つたのだと述べ肩を抱くのみ、アンドレウ涙を催しありがとうと荅ふ、